アウトリーチ事業を行うホールが着実に増加
今回は「地域の公立文化施設実態調査」のうち、舞台芸術を主目的としている「専用ホール」の主な結果を紹介する。なお、今回調査の対象となった「専用ホール」1,483施設(地方公共団体からの回答により把握した施設)のうち、施設から有効回答があったのは1,455施設である。
回答施設の概況
設置主体別にみると、都道府県92施設(6.3 %)、政令市131施設(9.0%)、市区町村1,232施設(84.7%)である。また、管理運営形態別では、指定管理が911施設(62.6%)、直営施設が544施設(37.4%)となっている。2014年度調査と比較すると専用ホール施設数は1,452施設と横ばいで、指定管理施設が61.2%から62.6%へとやや増加している[表1]。
施設の運営状況(スタッフ数・専門職員の有無・収入)
2019年9月時点でのスタッフの平均合計人数は10.2人で、内訳は、事業系スタッフ3.5人、施設管理系スタッフ3.3人、舞台技術系スタッフ3.1人、総務系スタッフ2.6人となっている。設置主体別では、施設規模の大きい都道府県(21.0人)、政令市(16.3人)が多く、市区町村(8.8人)との差が顕著だった[表2]。
また、芸術文化領域の専門職員(芸術監督やプロデューサー等)の雇用状況をみると、「芸術監督」(3.3%)、「プロデューサー」(5.0%)、「それ以外」(6.5%)で、そのいずれかを雇用していると回答した施設の割合は12.8%である。設置主体別では、都道府県施設で雇用している割合が高い[表3]。
2018年度決算金額による施設収入金額は、直営施設で平均45,089千円、指定管理施設で平均176,073千円だった[表4]。2014年度調査(2013年度決算)と比較すると、直営施設で52,847千円から14.7%の減少、指定管理施設で177,180千円から0.6%の減少だった。指定管理施設で収入がほぼ横ばいなのに対し、直営施設での減少が目立つ結果となった。
自主事業の実施
専用ホール施設において2018年度に自主事業を実施していないと回答した施設は極めて少なく、直営施設では別団体への委託も含めて実施していないが27.0%、指定管理施設では設置主体からの受託、別団体への委託も含めて実施していないが8.2%にとどまった(詳細はホームページに掲載している報告書参照)。また、自主事業実施施設(設置主体が事業を実施している直営施設および指定管理者が事業を実施している指定管理施設計1,185施設)における事業実施本数の平均は18.1件である。設置主体別の分布で見ると、21件以上が都道府県(48.3%)、政令市(40.8%)で多い[図1]。
2019年度調査では、これまでの「クラシック音楽・オペラ」「ダンス・舞踊」といったジャンル別実施率に加え、鑑賞系事業の詳細ジャンルの実施率も調査した[図2]。全体では「落語」(38.3%)、「吹奏楽」(31.7%)、「ジャズ」(26.4%)、「ミュージカル」(25.7%)の実施割合が高い。また、近年増えている「映画、アニメ、ゲーム等の楽曲のオーケストラ演奏」は14.3%、東日本大震災以降に始まった「防災・避難訓練コンサート・文化イベント」は6.4%だった。
アウトリーチ事業については、2018年度の実施率は、全体で43.8%(都道府県74.7%、政令市61.2%、市区町村39.0%)となっている。年間の平均実施回数は、全体で13.3回(都道府県20.9回、政令市11.0回、市区町村12.4回)である。2013年度の結果と比較すると、全体の実施率で38.3%から43.8%へと大きく増加し、回数も12.6回から13.3回へと着実に増えている[表5]。
このほか、鑑賞系事業以外の普及系・創造系・育成系事業や、子ども・高齢者・障がい者などの特定対象者向け事業の実施率、他の公立文化施設・団体との連携実態なども調査しており、ぜひ当財団ホームページに掲載している報告書を参照していただきたい。
- 表1 設置主体別、管理運営形態別/施設内容内訳(%)
- 表2 スタッフ数の平均(設置主体別)
- 表3 芸術文化領域の専門職員(設置主体別) ※複数回答可
- 表4 2018年度決算金額
《直営》
*「施設使用料・入場料収入等」は、これらを一般歳入とせず、特定財源で施設運営費に充当している場合に記入。
《指定管理》
*1 指定管理料以外に設置者からの事業補助金がある場合に記入。指定管理者である文化財団本部に対する事業補助金で当該ホールの事業を実施する場合を含む。
*2 設置者から事業の委託を受け、その費用を指定管理料とは別に事業委託費として受け取っている場合記入。
*3 上記以外の費目で、指定管理料とは別に設置者から受け取っている収入がある場合記入。
*4 複合施設で他の施設からの収入が充当されている金額を含む。
*5 利用料金制を取っている場合記入。
- 図1 自主事業数の分布(%)(設置主体別)
- 図2 鑑賞系自主事業・受託事業の詳細ジャンル、個別企画内容(%)※複数回答可
- 表5 アウトリーチの実施状況(設置主体別)
2019年度「地域の公立文化施設実態調査」調査概要
- 調査対象
公立文化施設のうち、「専用ホール」、「その他ホール」、「美術館」、「練習場・創作工房(アーティスト・イン・レジデンス施設を含む)」およびそれらを含む「複合施設」と、施設の設置主体にあたる地方公共団体。 - 調査時期
2019年9月~11月 - 調査方法
全国の地方公共団体の文化振興ご担当者に、当該団体が設置主体となっている調査対象施設を記入する「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」、「施設調査票」を配布。当該団体において「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」の記入および「施設調査票」の各施設への配布と取りまとめをしていただいた。 - 調査回収数
•地方公共団体票の有効回収数
1,645(都道府県47(100%)、政令市20(100%)、市区町村1,576(91.6%)、一部事務組合2)
•地方公共団体からの回答
3,442館 延べ3,671施設
(「専用ホール」1,483、「その他ホール」1,363、「美術館」648、「練習場・創作工房」177)
•地方公共団体から回答があった3,442館のうち、施設からの施設調査票の有効回収数
3,343館 延べ3,568施設
(「専用ホール」1,455、「その他ホール」1,310、「美術館」628、「練習場・創作工房」175)
*2019年度「地域の公立文化施設実態調査」報告書は、地域創造ホームページに掲載しています。
➡2019年度「地域の公立文化施設実態調査」報告書
調査研究に関する問い合わせ
芸術環境部 児島
Tel. 03-5573-4183