一般社団法人 地域創造

2019年度「地域の公立文化施設実態調査」① 速報 全体概要

公立文化施設の指定管理期間は長期化の傾向

 地域創造では、公立文化施設の整備状況と管理運営の実態を把握するため、財団設立以来、ほぼ5年に一度の割合で、「地域の公立文化施設実態調査」を実施してきた(前回は平成26(2014 )年度)。調査対象は、設置主体である地方公共団体および「ホール施設(舞台芸術の公演等を主目的とする『専用ホール』と舞台芸術以外を主目的とする『その他ホール』の2 種に区分)」「美術館」「練習場・創作工房」である。今号から4回にわたり、昨年実施した最新調査から主な結果を紹介する。

 なお、前回調査とは回答数(回収率)が異なること、数値は速報値であることを予めお断りしておく。

公立文化施設数

 地方公共団体からの回答に基づく今回調査での公立文化施設の数は、全体で、3,442館となった。また、1つの館の中に、ホールと美術館など、複数の文化施設がある館があるため、延べ施設数では3,671施設となった。施設の種別ごとに見ていくと、専用ホールが1,483施設、その他ホールが1,363施設、美術館が648施設、練習場・創作工房が177施設となっている。また、文化施設が1つのみの単独館は3,229 館、複数の文化施設が集まっている複合館は213館である[表1]。

 2014年度調査と比較すると、館数では、3,588館から3,442館へと4.1%の減少となった。内訳を見ると、専用ホールでは1,490施設から1,483施設へと微減である一方、その他ホールは1,566施設から1,363施設へと減少幅が大きい。また美術館では、638施設から648施設へと逆に増加している一方、練習場・創作工房は233施設から177施設へと減少した。

 専用ホールの内訳を見ると、単独館としては1,264館から1,334館へと大きく増加する一方、その他ホールとの複合館は113館から67館へと減少している。練習場・創作工房についても単独館は88館から87館へと1館のみの減少であるのに対し、複合館は145館から90館へと減少した。

 このような結果となった背景として推測されるのは、その他ホールのうち、上演機能のある公民館などの減少である。文部科学省が3年ごとに実施している「社会教育調査」によれば、公民館数は1999年をピークに減少を始めており、その範囲は町村立から市立へと広がっている。こうした公民館の減少が、その他ホールおよびそれと複合化した練習場・創作工房の減少に繋がっている可能性が高い。一方、専用ホールや美術館の施設数の推移に見られるように、文化芸術を主目的とした施設については、今回調査に関して減少傾向は見られなかった。

管理運営形態

 各館の管理運営形態を見ると、指定管理が1,589館で全体の46.1%を占める(「公募」が27. 1 %、「非公募」が18. 5 %、「PFI 事業者が指定管理者」が0.5%)。直営は1,843館、53.5%である。2014年度調査では、指定管理が1,526館(全体の42.5%)、直営が2, 035館(56. 7%)となっており、指定管理館がこの5年で4.1%増える一方、直営は9.4%減少するという結果になった。

 設置主体との関係を見ると、公募・非公募を合わせて、都道府県施設で全体の73.7%、政令市施設では80.9%が指定管理となっているのに対し、市区町村では40.5%にとどまる。また、市区町村を人口別に見ると、人口が少ないほど指定管理が占める比率が下がっており、人口1万人未満では直営が86.2%とほとんどを占める[図1]。施設内容別では、指定管理の比率が最も高いのは専用ホールの62.5%で、次いで練習場・創作工房の57.7%が続く。一方、美術館(39.0%)、その他ホール(33.2%)は比較的低い。

指定管理者

 指定管理者の種別を見ると、全体で最も多いのは公益財団法人の38 .1%で、次いで株式会社、有限会社など(営利法人)21.3%、共同事業体(J V)などのコンソーシアム(14.3%)となっている[表2 ]。また指定管理期間は、3年未満(3. 9 %)、3 〜4 年未満(12. 1 %)、4 〜5年未満(9. 0 %)、5 〜6 年未満(68. 4 %)、6 年以上(6.6%)となっており、2014 年度調査に比して指定管理期間が長くなる傾向が見られる[図2 ]。

施設の開館年

 設置主体(地方公共団体)からの回答により、本調査で把握した全国の公立文化施設(本調査対象施設)は、前述のとおり3,442館であったが、そのうち対象施設から有効回答があったのは3,343館である。また延べ施設数については、設置主体からの回答数3,671施設に対し、施設からの有効回収数は3,568施設となっている。このうち、開館年について有効回答があった3,527施設を整理すると、1980 年から99年までの20 年間に開館した施設が2,099施設と多く、全体の59.5%を占める。特に、1990年から94年にかけての5年間に650施設と全体の18.4%が開館している。1970 年代までの開館数は566 施設(16. 0 %)、2000年以降の20年間は862施設(24.4%)にとどまる。

 また、施設ごとに見ると、練習場・創作工房の開館ピークが2000年代前半にあることを除き、すべて全体と同じ1990年代に開館のピークが来ている。

 
  • 表1 施設内容別 館数と構成比
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  • 図1 管理運営形態(設置主体別)
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  • 表2 指定管理者の種別
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    ↑クリックで拡大します。
  • 図2 指定管理期間
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※図1・2、表2 注:小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはならない。

 

2019年度「地域の公立文化施設実態調査」調査概要

  • 調査対象
    公立文化施設のうち、「専用ホール」、「その他ホール」、「美術館」、「練習場・創作工房(アーティスト・イン・レジデンス施設を含む)」およびそれらを含む「複合施設」と、施設の設置主体にあたる地方公共団体。
  • 調査時期
    2019年9月~11月
  • 調査方法
    全国の地方公共団体の文化振興ご担当者に、当該団体が設置主体となっている調査対象施設を記入する「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」、「施設調査票」を配布。当該団体において「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」の記入および「施設調査票」の各施設への配布と取りまとめをしていただいた。
  • 調査回収数
    •地方公共団体票の有効回収数
    1,645(都道府県47(100%)、政令市20(100%)、市区町村1,576(91.5%)、広域行政2)
    •地方公共団体からの回答
    3,442館 延べ3,671施設(「専用ホール」1,483、「その他ホール」1,363、「美術館」648、「練習場・創作工房」177)
    •地方公共団体から回答があった3,442館のうち、施設からの施設調査票の有効回収数
    3,343館 延べ3,568施設(「専用ホール」1,455、「その他ホール」1,310、「美術館」628、「練習場・創作工房」175)

 

*2019年度「地域の公立文化施設実態調査」報告書は、地域創造ホームページに掲載予定です(2020年5月頃)。

調査研究に関する問い合わせ

芸術環境部 青井
Tel. 03-5573-4077

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