第45号 美術館リニューアル/パブリック・プログラムを考える(2019年度12月発行)
国内掲載記事概要一覧 (本誌 P.88「資料編」) (PDF 195KB)
特集1 美術館リニューアル
1980年代に開館した多くの公立美術館が老朽化による改修時期を迎えている。この間の社会環境の変化を踏まえ、現在・未来に求められる役割を再考し、リニューアルと向き合った美術館の最前線を紹介する。
特集2 パブリック・プログラムを考える
地域の公立文化施設では、芸術文化の専門施設としての取り組みだけでなく、これまで文化施設に興味を持たなかった幅広い層にアプローチし、広く社会や地域とどう向き合うかが問われている。地域の施
空間のエスプリ
体験レッスン
イラストSCOPE
座談会
海外STUDY
特集1 美術館リニューアル
1 岐阜県岐阜市 岐阜県美術館
「ナンヤローネ(なんだろう?)」と問いかけ“イメージする力”と“好奇心”を引き出す
文:山下里加
1982年に開館し、1年間の休館を経て2019年11月3日にリニューアルオープン。今回の改修では建物の構造は大きく変えていないが、コンシェルジュコーナーやカフェコーナーの設置など、美術館がより身近に感じられる工夫が施されている。美術館をとりまく社会情勢も美術への関心や期待が開館当時から大きく変わった今、どのような姿に生まれ変わったのか探った。
2 東京都江東区 東京都現代美術館
日本を代表する現代美術館に地域施設としての心地よさをプラス
文:桜井裕子
1995年の開館以来、初の大規模改修のため3年にわたって休館していた東京都現代美術館が2019年3月29日にリニューアルオープン。美術館が立地する清澄白河エリアの環境変化に対応し、子ども連れにも配慮したユーザーフレンドリーな設備と運営、居心地のいい空間づくりやサイン計画、建物を活かす回遊性など「開かれた美術館」を目指した見直しが行われた。
3 福岡県福岡市 福岡市美術館
前川國男建築をPFIで改修 つなぐ、ひろがる、開かれた美術館へ
文:及位友美
1979年に開館した福岡市美術館は、2年間の休館を経て、2019年3月にリニューアルオープン。「つなぐ、ひろがる美術館」をコンセプトに、立地する大濠公園をジョギングしている市民からもアプローチしやすい環境整備が行われたことに加え、全国で初めて改修工事にPFI方式を採用し、改修費用を抑え、運営面の挑戦をした美術館となり、全国的に注目を集めている。
4 京都府京都市 京都市京セラ美術館(京都市美術館)
官民協働の“京都モデル”がまちの活力を生み出す
文:山下里加
1933年に開館し、現存する美術館建築としては最も古い京都市美術館が、京セラ株式会社などの支援を受け、2020年3月21日にリニューアルオープンを予定。85年以上の歴史をもつ建築物や近代以降の京都画壇の系譜をたどるコレクションを現代とどのようにつなげるのか。そして美術館としての役割、機能をどのように維持・強化し、未来に手渡していくのかを紹介する。
特集2 パブリック・プログラムを考える
1 愛知県幸田町 ハッピネス・ヒル・幸田(幸田町民会館)
町民の幅広いニーズを受け止め 幸せ願う多彩なパブリック・プログラム
文:田中健夫
うたごえ喫茶、低料金コンサート、少年少女合唱団の練習、オリジナルのミュージカル、ご当地ヒーローなど、地域のニーズをくみ取りながら事業を実施することから、老若男女問わず多くの町民が利用する幸田町民会館について、運営者である任意団体の幸田町文化振興協会に取材し、事業の考え方や活動の内容の詳細について話を伺った。
2 三重県津市 三重県文化会館
介護を楽しむ、明るく老いる 超高齢化社会を生き抜くための“プレーパーク”
文:大堀久美子
2019年10月に開館25周年を迎えた三重県文化会館が、介護福祉士兼俳優として活動する「老いと演劇OiBokkeShi」を主宰する菅原直樹と共に2017年から始動させた「介護を楽しむ」「明るく老いる」プロジェクトを中心に取材。今後の超高齢化社会の到来に備え、三重県文化会館が演劇を用いて高齢者と介護問題とどう向き合って来たかを紹介する。
3 京都府京都市 東山青少年活動センター
青少年の文化発信拠点 成長を見守るユースワーカーとは?
文:神山典士
京都市が、青少年の居場所となり、彼らの自主的な活動支援や悩み事相談などの窓口となることを目的に設置した7か所の青少年活動センターのうち、創造表現活動を支援し、若者の文化発信拠点として知られている東山青少年活動センターの活動を取り上げる。ユースワーカーと若手アーティストが連携し、関西のアートシーンを支える存在にまでなっている、その活動について紹介する。
4 宮城県塩竈市 塩竈市杉村惇美術館
地域の記憶と思いを繋ぐ 暮らしの中の美術館
文:山下里加
塩竈ゆかりの洋画家・杉村惇の作品を常設展示する杉村惇美術館は、1950年に建設された公民館を改修して誕生した美術館である。公民館として地域住民に利用されていた経緯もあり、この美術館では、美術作品の展示以外の様々な取り組みも行われている。今回は、「チルドレンズ・アート・ミュージアムしおがま」を中心に、その取り組みを紹介する。
空間のエスプリ
台湾のクリエイティブ産業の新拠点
伊東豊雄設計の台中国家歌劇院
文:田中伸子
台湾第二の都市である台中に2016年に開場した「台中国家歌劇院」(設計:伊藤豊雄)は、大中小の屋内劇場、屋外劇場、ギャラリー、レストランなどが併設された総合文化施設で、市民の憩いの場や人気観光スポットとなっている。
本稿では、台中国家歌劇院のこれまでの取り組みについての紹介と、今後の運営方針についての考えを芸術監督の邱瑗氏に取材した内容を報告する。
体験レッスン
写真による町のブランディング“東川スタイル”を学ぶ
進行:坪池栄子 文:田中健夫 受講生:田中裕貴
北海道のほぼ中央に位置する東川町は1985年の「写真の町宣言」を契機に、写真文化を核にしたまちづくり、人づくり、暮らしづくりを行い、様々な行政施策に反映させ、交流人口や定住人口も大きく増加した。このような「写真の町」や東川スタイルの取り組みについて東川町写真の町課課長矢ノ目俊之氏に教えていただいた。
イラストSCOPE
由緒ある破風のもとで育つ「豆役者」たち まるおか子供歌舞伎
文:奈良部和美 イラスト:田渕周平
福井県の旧丸岡町(現坂井市)では、松竹株式会社から道頓堀中座の「破風」を譲り受けたことをきっかけに、2001年より子供歌舞伎の公演を行ってきた。
片岡仁左衛門など上方芸能の多くの名優たちを見守ってきた破風の下で育ち、プロと市民に支えられる「豆役者」たちの活躍について、イラストを交えて報告する。
座談会
地域づくりとしての教育~平田オリザ×大南信也
進行:山下里加、坪池栄子 文:川添史子
兵庫県の「国際観光芸術専門職大学(仮称)」設立に携わる劇作家・演出家の平田オリザ氏と徳島県神山町の次世代型の私立高等専門学校「神山まるごと高専」設立プロジェクトに携わる認定NPO法人グリーンバレー理事の大南信也氏をゲストに迎え、長年、地域づくり・人づくりに携わってきた経験や、お二人が考える未来の教育のあり方について語り合った。
海外STUDY
21世紀の新しいビジョンを示すリニューアルMoMA(ニューヨーク近代美術館)
文:山﨑梨真
世界屈指の近代美術を専門とした美術館であり2019年10月21日にリニューアルオープンしたMoMA(ニューヨーク近代美術館)がリニューアルを機にどのように新しいスペースを活かし、どのような新しいビジョンを提示しようとしているか報告する。
第45号 美術館リニューアル/パブリック・プログラムを考える(2019年度12月発行)
出版物・報告書