一般社団法人 地域創造

第44号 つながりをデザインする~新・公民連携(2018年度12月発行)

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国内掲載記事概要一覧 (本誌 P.80「資料編」) (PDF 167KB)

特集 つながりをデザインする~新・公民連携

生き生きと暮らせるまち、新たな発見のあるまち。
そんな地域を目指し、文化を起爆剤に人や場所を結びつけていくさまざまな試みが各地で続けられている。 官公、市民、関連団体など、従来の枠組みを超える有機的な連携の在りようをレポートする。

空間のエスプリ

体験レッスン

座談会

SCOPE

海外STUDY

イラストSCOPE

資料編

特別付録

特 集 つながりをデザインする~新・公民連携

1 秋田県由利本荘市│鳥海山 木のおもちゃ美術館
歴史ある木造校舎を起点にした“おもちゃ”による連携

文:神山典士

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© 雨田芳明

主体となったのは林業の振興と廃校利用、地域活性化を考えた由利本荘市。パートナー(監修者)となったのは東京で年間約14万人の親子を迎え、今や全国で木育事業を展開する「東京おもちゃ美術館」。完成後の運営には地元の人々が主体となって2017年7月に設立されたNPO法人「由利本荘木育推進協会」があたり、現場では地元民が参加するおもちゃ学芸員が活躍する。公共と民間、幼児から高齢者まで。多くのプレイヤーが繋がることとなったこの美術館は、いかにして誕生したのか?

2 神奈川県大和市│大和市文化創造拠点シリウス
図書館を中心とした複合施設で市民の居場所づくり、開館2年で613万人が利用

文:田中健夫

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© 雨田芳明

開館2周年を迎えた大和市の文化創造拠点「シリウス」。開館から135日目で累計来館者数は100万人を超え、2018年7月7日には500万人を突破した。特例市である大和市の人口は現在約23万5千人であり、毎月、市の人口以上の市民がこの場所を訪れている計算になる。近年、こうした図書館を中核に据えた複合施設が増えているが、シリウスはなぜこうも短期間で市民生活に馴染むことができたのだろうか。“融合”を掲げる運営のあり方と背景にある市の政策を探った。

3 青森県八戸市│八戸市まちづくり文化推進室ほか
点から面へ──人々が出会い、つくる喜びを分かち合う場を広げていく

文:山下里加

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© 雨田芳明

まちは明らかに変化していた。「八戸ポータルミュージアム『はっち』」の周辺だけでなく、まち全体に人々が行き交っているのだ。空きビルが新店舗になり、はっちの向かいに今年7月にオープンした「八戸まちなか広場『マチニワ』」には親子連れや年配の人たちが憩い、その奥の新しいビルには公設書店「八戸ブックセンター」がオープンし若者たちが出入りしていた。そこには、文化を起爆剤に人と場所がゆるやかに繋がり、中心市街地をたまり場にする流れが出来つつあった。

4 長野県松本市│信毎メディアガーデン
地方紙の雄が市民とタッグを組んでまちなか活性化を仕掛ける

文:神山典士

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© 雨田芳明

「地域社会と幅広く、より深く結びつくことで社の経営基盤強化に繋げたい。地方紙が生き延びる道は他にないと思う」。信濃毎日新聞にとっても、“市民とまちとの繋がり”は未来を懸けたチャレンジだったのだ。その繋がりをどうつくるか?市民の声をどう吸い上げて建物に反映するか?信毎は松本本社社員やまちづくりに関心のある市内の建築家、商店主、学生ら13人をコアメンバーにした「信毎まちなかプロジェクト」をスタートさせた。

空間のエスプリ

新たな文化ネットワークづくりを進める
パリの大文化公園「ラ・ヴィレット」

文:岡見さえ

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写真提供:ラ・ヴィレット公園・旧大市場公施設法人

パリの北、メトロのパンタン駅から地上に出ると、目の前にラ・ヴィレット公園の入り口が広がる。広大な敷地で舞台芸術や展覧会、ワークショップなど多彩な文化活動を提供するラ・ヴィレット公園。ラ・ヴィレット公園とこの巨大な文化公園から生まれた2つの“小さな”プロジェクト、子どもと家族向けの施設「リトル・ヴィレット」と、ラ・ヴィレットの外で展開する文化施設「ミクロ・フォリー」に注目する。

体験レッスン

地域とのつながりを育むレジデント・
アーティスト事業をサントミューゼに学ぶ

進行:坪池栄子

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© 雨田芳明

ホールと美術館の複合施設であるサントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)がオープンしたのが4年前の2014年。開館当初から取り組んできたのがレジデント・アーティストによる「芸術家ふれあい事業」である。音楽、ダンス・演劇のアーティストと信頼関係を築き、継続的に地域とのつながりを醸成してきたこの取り組みについて学んだ。

座談会

地域アーツカウンシル

司会:坪池栄子

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© 脇屋伸光(STUDIO SCENE)

英国が発祥とされるアーツカウンシル(芸術評議会)は、「芸術文化に対する助成を基軸に、政府・行政組織と一定の距離を保ちながら、文化政策の執行を担う専門機関」のこと。日本においてもこうした機関の必要性が議論されるようになり、地方自治体等が設置する例も出てきた。名称も、組織体制も異なる3つの地域アーツカウンシルの方々に、各地の現状を語り合ってもらった。

SCOPE

奈良県奈良市 なら国際映画祭
“映画の力”を信じ、つくり手を育て、地域を元気にする

文:山下里加

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© 雨田芳明

隔年で開催している「なら国際映画祭」は、民間主導の映画祭である。この映画祭の最大の特徴は、現地に滞在しての映画制作などを通じて“奈良”という地域に密着し、“映画”をツールとして地域と人に働きかける地域性を掲げていること。2009年のプレイベントから10年、5回目を迎えたなら国際映画祭を取材した。

愛知県豊田市 とよた市民アートプロジェクト「ハイブリッドブンカサイ」
“やりたいこと”を持ち寄り市民が表現の主体となる場

文:及位友美

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© 雨田芳明

旧豊田東高等学校の跡地で開かれた「ハイブリッドブンカサイ」。年齢層もジャンルもさまざまな人たちがゆるやかに集ったこのイベントは、豊田市が主催する事業「とよた市民アートプロジェクト」の一環として開催されたもの。高校生、ご当地アイドル、アーティスト、市民グループ─。“異種混交”の人たちが同じ舞台に立ち、プロもアマも分け隔てなく表現を謳歌する風景。そこはまさに“ハイブリッド”な空間だった。

東京都墨田区 すみだトリフォニーホール×新日本フィルハーモニー交響楽団
フランチャイズ契約30年墨田区と新日本フィルハーモニー交響楽団の試み

文:山名尚志

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写真提供:墨田区文化振興財団

「芸術表現を地域にとって連続的なものとするために、新設予定の錦糸町文化会館へ著名なオーケストラを招聘する」。墨田区の音楽都市構想を受けて、「墨田区民とともに歩むオーケストラ」として、日本で初めてとなる自治体とオーケストラとのフランチャイズ契約から30年。今、オーケストラのあるまちはどのような変貌を遂げているのだろうか。

長崎県佐世保市 アルカス SASEBO「アルカス九十九島音楽祭」
市民参加音楽祭からレジデント楽団までアルカスSASEBOの音楽事業展開

文:田中健夫

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© 雨田芳明

長崎県北部の文化芸術拠点として2001年に長崎県が佐世保市に開設した「アルカスSASEBO」。開館以来、クラシック音楽を核に事業を展開し、市民参加型音楽祭、ジュニアオーケストラ、レジデント楽団など、ラインナップを充実させてきた。施設を無料開放し、市民約千人が参加する夏の一大イベント「アルカス九十九島音楽祭」を訪ねると、そこにはアルカスの長年の活動が蓄積されていた。

海外STUDY

舞台芸術のための公的助成制度の新しい潮流

文:藤井慎太郎

舞台芸術の実践とそれを取り巻く環境が大きく変化しつつある現在、それに対応するように助成制度も変容しつつある。公的助成制度において近年見られるようになった新しい傾向、その特徴と課題について海外での助成実態を基に考える。

イラストSCOPE

現代に生きる芸能「エイサー」

文:島袋幸司/イラスト:田渕周平

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お盆の時期に祖先の霊を送迎するために青年会の若者が行う盆行事・芸能だった「エイサー」。沖縄戦以前のエイサーは、素朴ながら若者の活気に満ちたものだったという。戦後のエイサーは、民俗的な本質を保持しながら多様な発展的様相を示し、世界的な広がりをみせている。すべては若者が築き上げてきたものだ。若者の力が地域を活性化し、その結果、さまざまなエイサーが継承されていく─未来に繋がる沖縄の姿がそこにはある。

特別付録

訪日観光客対応ハンドブック

文:山名尚志

観光施策においてだけではなく、国の文化政策自体も、文化芸術の「社会的・経済的価値」を重視する方向に大きく舵を切っており、文化施設の観光拠点化も目玉施策のひとつに挙げられている。公立文化施設、特に美術館・博物館は、訪日観光客誘致の最前線で期待される存在になっているのだ。これを好機と捉え、それぞれの公立文化施設は、何を検討し、どう対応していけばいいのか─訪日観光客をめぐる政策動向とアプローチの仕方を整理する。

特別付録・訪日観光客対応ハンドブック[PDF版 0.7M]

第44号 つながりをデザインする~新・公民連携(2018年度12月発行)