一般社団法人 地域創造

第32号 ホール事業20年の展望(2012年度10月発行)

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特集 ホール事業20年の展望

1990年代から公共ホールの新しいウェーブが始まった。
それまで貸館中心だった運営から脱皮し、自主事業に力を入れ、地域づくりの拠点となる活気ある運営を目指した公共ホールが次々と各地に誕生したのだ。
こうしたホールが継続的に事業を行うことで地域はどう変わるのか?指定管理者制度、市町村合併、財政悪化など、この間の環境変化を乗り越えながら蓄積をつくってきた現場を訪ね、ホール事業20年の可能性を探った。

空間のエスプリ

体験レッスン

座談会

イラストSCOPE

SCOPE

海外STUDY

特 集 ホール事業20年の展望

1 富山県南砺市│福野文化創造センター「ヘリオス」
22回を数えるワールドミュージック・フェスティバル
異文化交流の新たな祭りを創造するスキヤキイズム

文:田中健夫

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© 大河内 禎

「いかに移民を排除せずに、共生していくのか。それは明日の東京、明後日の富山、明々後日の福野に突き付けられる課題です。
在住外国人が増える日本においても、多文化を理解する人の育成が重要になると強く思いました。」(抜粋)

2 北海道札幌市│札幌芸術の森
北の大地の森が育む芸術文化の日常化
四半世紀の継続が実を結ぶ

文: 田中健夫

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© 大河内 禎

「音楽や舞台芸術だって市民に身近なものにしなくちゃいけないのに、添え物でいいのか、と。とはいえ、僕にはその知識・経験がなかった。ただ幸いだったのは、イベンターや舞台系、音楽系の人たちがいち早く芸術の森の可能性を見出していたこと。」(抜粋)

3 大阪府能勢町│淨るりシアター
地域の財産である浄瑠璃を柱に一座も結成
町ぐるみで育て上げた創造の場

文:奈良部和美

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© 大河内 禎

「『能勢から浄瑠璃をなくしたら何も残らない。ぜひ残せ、頼んまっせ』と言われたのが心に残っていました。かつては大阪の最果てのように言われていた能勢で浄瑠璃は誇りだったのです。」(抜粋)

4 徳島県北島町│北島町立図書館・創世ホール
小さな町だからこそできることがある
マニアックな企画で唯一無二の個性を確立

文:土屋典子

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© 大河内 禎

「隣町に住むある高齢の方から、正統と異端の両方あって文化は成立する。だからずっと周辺文化にこだわり続けなさいという言葉をいただいたとき、これでいいのだと背中を押された気がしました。」(抜粋)

空間のエスプリ

ベルリンのコンテンポラリーダンスの新たな拠点
歴史的建造物を活かした「ウーファースタジオ」

文: 山下秋子

「既存施設を活用し、従来の大学教育からは距離を置き、ダンス界の将来を担う才能を育成するための実験的かつ実践的な教育ができ、タンツラウムベルリン・ネットワークが求めていたダンスの制作・情報交流もできる施設を整備することが検討された」(抜粋)

体験レッスン

世田谷美術館にボランティアと共につくる美術館像を学ぶ

構成:山下里加

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© 雨田芳明

1986年に開館して以来、良質の美術作品を紹介するだけでなく、市民に「美術とは何か?」を考える機会を提供し、ボランティアからの意見を取り入れながら活動を進化させてきました。アートプロジェクト全盛の時代に美術館は地域でどのような存在になり得るのか、世田谷美術館に学びます。

座談会

公立ホールのあるべき運営とは?

司会・構成:坪池栄子

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© 雨田芳明

指定管理者制度が導入されてから6年。民間のノウハウの活用によるサービス向上など一定の効果が上がっている一方、地域住民との関係や育成事業、継続的な事業展開など抱えている課題も多い。今回は"公立ホールのあるべき運営"を模索している最前線の担当者にお集まりいただき、語り合っていただきました。

イラストSCOPE

“農民の心”を今に受け継ぐ北上市の鬼剣舞

文:奈良部和美/イラスト:田渕周平

「農民が受け継いできた力強さが必要なのが鬼剣舞。ただ形を受け継ぐだけでなく、この踊りに込めた農民の心も受け継がないと見る人の感動は呼べない」(抜粋)

SCOPE

埼玉県入間市 文化創造アトリエ「アミーゴ」
市民の市民による市民のための文化活動施設

文:神山典士

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© 杉全 泰

「この施設にやって来ると、誰もが「ほっとするね」と口にする。1世紀になろうとする歴史とこの建物を生んだ先達の息吹が、ここで活動する市民一人一人を見守っているからだ」(抜粋)

宮城県石巻市 一般社団法人ISHINOMAKI 2.0
震災後に始まった若者たちによる
クリエイティブなまちづくり

文:神山典士

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© 大河内 禎

「あの時考えていたのは、震災前の状況に戻すのは復興じゃないということでした。行政から聞こえてきたのは新しい堤防や道づくりのことばかりだったけど、インフラより前にこのまちの主人公は人間だろうと思った。こんな多彩な才能が集まったんだから、まちをつくり変えるチャンスだと思ったんです」(抜粋)

海外STUDY

市民と共に都市と文化を創造するソウル文化財団

文:木村典子

「財団には多くの運営施設がありますが、これは住人たちのコミュニティ形成にも生かせます。これを利用して、心と体のヒーリングになるような事業を研究・開発していきたいと思いますが、このような取り組みは現代社会で文化芸術に求められる機能のひとつではないでしょうか。人と社会に寄り添う財団でありたいですね」(抜粋)

第32号 ホール事業20年の展望(2012年度10月発行)