第3号 文化ボランティアを考える(1997年度10月発行)
特集 文化ボランティアを考える
ボランティアの現場から
- サイトウ・キネン・フェスティバル松本(長野県松本市)
- 能登演劇堂(石川県中島町)
- たんば田園交響ホール(兵庫県篠山市)
- ボランティア活動を駆使しての“町燃やし”
ボランティア入門
空間のエスプリ
出前レッスン
座談会
SCOPE
- 新潟県小木町 アース・セレブレーション 鼓童と小木町が培った10年
- 福岡県北九州市 現代美術センター・CCA北九州
- 長野県東部町 第4回アジアマイムフェスティバルINとうぶまち
- 北海道夕張市 ゆうばりシネマ・ワークショップ サマーキャンプ ‘97
- アメリカ民営オペラの底力
- 宮崎県高千穂町「神話の里フェスティバル」
資料編
Q&A
特 集
長野県松本市
サイトウ・キネン・フェスティバル松本(SKF)
北アルプスを見上げる街・松本の秋は、下界の残暑と入れ替わりに足早に山頂からやってくる。8月30日土曜日。すでに上空にはトンボが遊び、美ヶ原山頂にかかる雲は薄く広くなり始めている。
毎年この季節、松本はクラシック音楽の聖地となる。世界のマエストロ・小澤征爾を筆頭に、世界中から超一流の演奏家たちが集まるサイトウ・キネン・フェスティバル。6回目となった今年、常連の演奏家たちは「ただいま」と言いながら松本に集まってきた。
石川県中島町
能登演劇堂
同じ頃。地引き網漁が解禁となり、秋の海の幸が街角に並び始めた北陸・金沢では、芸術祭石川公演オープニング・セレモニーの前夜祭が行われていた。ゲストとして挨拶に立ったのは、俳優の仲代達矢だった。居並ぶ県知事をはじめとする自治体の幹部たちを前に、仲代はこう語った。
「私たち無名塾のロングラン公演も、1カ月後に開幕となりました。私は能登演劇堂のある中島町でいい芝居をつくることで石川県に貢献したい。知事のお力添えもあり、チケットは販売目標の2万枚にあと一歩です。現在1万8千枚となりました。あと2千枚を目指して、頑張っていきたいと思います」
兵庫県篠山町
たんば田園交響ホール
芸術の秋のまん中で、もう1つ町民が燃えている町がある。兵庫県多紀郡篠山町。のどかな田園風景が広がるこの地には、すでに10年前の88年に白壁に黒い瓦がのった蔵づくりスタイルの「たんば田園交響ホール」が生まれている。残響1.8から2秒、楓製のスタンウェイのピアノが設置され、ピアニスト中村紘子にも絶賛されたホールだ。
ボランティア整理学
3人の専門家の方に、文化ボランティアにアプローチ するためのポイントを整理していただきました。
吉本光宏 (ニッセイ基礎研究所主任研究員、米国・コロムビア大学留学中)
石川幹夫 (黒部市国際文化センター事務局長補佐)
津村卓 (財団法人地域創造チーフディレクター)
空間のエスプリ
セント・アイヴスの新たな光
~アートを軸にした町おこし~
セント・アイヴス・テート美術館
弧を描いた入江一面に広がる真っ白な砂浜。澄んだ海。時々刻々とドラマチックに変化していく太陽と雲。海面に反射する日の光──。
英国の西南、コーンワル県にあるセント・アイヴスは、19世紀の昔から、ターナーやウイスラーが美しい自然環境に芸術的刺激を求めて訪れた町だ。今世紀に入ってからは、バーナード・リーチ、ベン・ニコルソンやナウム・ガボなど抽象前衛芸術家たちが移り住み、芸術家村として知られるようになった。
かつてはすず鉱山と漁業で栄えたこの地だが、産業が衰退するにつれ、落ち込みの一途をたどる。しかし4年前、町の再生を図るため、ロンドンのテート美術館の別館が建設され、観光名所の役割を担うようになってから、年間約20万人の入場者で町に活気が蘇り始めた。観光シーズンが延び就業も安定した。
出前レッスン
クラシックにおける
「聴衆育成プログラム」企画の立て方
―“仲道郁代音楽学校'97”に学ぶ―
「何となく退屈」「難しい」といったイメージからか、公演数は多いのに、観客数は頭打ちのクラシック・コンサート。ホール担当者にとっても、「聴衆の開拓」は悩みの種なのではないでしょうか。
今回の「出前レッスン」は、演劇を使って新たなプログラムづくりに取り組む「仲道郁代の音楽学校」の盛岡公演を訪ね、クラシックにおける「聴衆育成プログラム」企画について考えてみました。
座談会
若手ホール担当者座談会
21世紀夢企画
2001年1月1日、あなたはどこで誰と何をしていますか?
「21世紀を迎えるための夢イベントを考えてください。予算は500万円です」。財団法人地域創造の津村卓ディレクターの呼びかけに、若手ホール職員4名が企画書を携えてやって来た。企画書を通して、彼らの素顔や暮らしぶりが見える、楽しい座談会となった。
SCOPE
新潟県小木町 地球の祝祭「アース・セレブレーション」
見渡す限り青く広がる海に囲まれた緑の島、佐渡。ここは古くは中世に順徳上皇や世阿弥が流された孤島として歴史に名を留める。能や人形浄瑠璃など京の都や江戸から伝来したさまざまな芸能がそこに集積し、この地に根を下ろした。
福岡県北九州市 現代美術センター・CCA北九州
今年5月、北九州市八幡地区に、日本で初めての現代美術専門の公的な学習・研究機関、現代美術センター・CCA(Center for Contemporary Art)北九州が開設された。
長野県東部町 第4回アジアマイムフェスティバルINとうぶまち
小雨が、歌舞伎舞台を静かに濡らしていた。
1997年9月6日、長野県小県郡東部町にある西宮歌舞伎舞台では、「第4回アジアマイムフェスティバルINとうぶまち」の最後を飾るメインプログラムが始まろうとしていた。
北海道夕張市 ゆうばりシネマ・ワークショップ サマーキャンプ'97
北海道夕張市で、毎年2月に「ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭」が開催されていることは、すでに広く知られているが、去る8月22日から25日までの4日間、「ゆうばりシネマ・ワークショップ サマーキャンプ'97」が開かれた。
アメリカ民営オペラの底力
1960年代後半に始まったアメリカにおける芸術の拡大傾向は、90年代後半に向かい、過当な競争と、連邦政府の援助の減額、芸術家の養成が追いつかないことなどから横ばい傾向に転じたが、そうした中でオペラだけは成長を続けている。
宮崎県高千穂町「神話の里フェスティバル」
9月4日午後4時50分、宮崎県・高千穂の武道館で田端義夫がアンコール曲『ふるさとの四季をうたう』を歌っていた。センターマイクで1人熱唱する彼の頭上に、はらはらと紙吹雪が舞う。その一片、一片は、3日がかりで、このコンサートのスタッフが会場で刻んだものだ。
第3号 文化ボランティアを考える(1997年度10月発行)
出版物・報告書