第4号 練習場を考える(1997年度3月発行)
特集 練習場を考える
夢の練習場めぐり
取材を終えて~夢を見る人、見守る人
空間のエスプリ
座談会
出前レッスン
SCOPE
- 東京都文京区 「新世界」に挑んだ文化交流事業
- 島根県浜田市 「ミュージアム・スクール」でアートに出会い、アートを体験
- 大阪府 「みんなの町の文化会館」が力を合わせて「船出」
- 奈良県橿原市 公募型プロポーザル方式を採用した、歴史的地区・今井町の公共施設計画
- 北海道帯広市 400人の夢が築き上げた大舞台
- インタビュー&レポート 東京都三鷹市 「茂木大輔のオーケストラ人間的楽器学」
- 躍進する韓国コンテンポラリーダンス~現状と教育システム
資料編
- 金沢市民芸術村/新潟市音楽文化会館/パピオ・ビールーム/アクテノン
Q&A/Voice
特 集
石川県金沢市
金沢市民芸術村
1月24日土曜日、金沢市民芸術村、深夜0時。細かな綿のような雪が降っている。この日の昼間だけで街を白一色に染め抜いた雪が、深夜になっても降り続いている。
ところが。早仕舞いした街の中に、オレンジの灯かりを煌煌と照らしている建物がある。犀川の淵に立つレンガ造りの4棟のピット(工房)。ここだけは、別世界の趣だ。
新潟市
新潟市音楽文化会館
1983年(昭和58年)春。新設なった上越新幹線新潟駅のホームに、大きな荷物と黒い楽器ケースを持ったひとりの若者が降り立った。大宮からわずか2時間半。その前年に面接のために訪ねた時はまだ在来線しかなく、上野から4時間以上かかったことを考えると、今更ながら新幹線の登場は驚きだった。けれども未知の街での生活に、一抹の不安
福岡市
パピオ・ビールーム(福岡市音楽・演劇練習場)
「こんばんは。今日は珍しくギターがフルメンバーで揃いましたね」 稽古が始まってしばらくしてから練習室に入ってきたメンバーに、指揮台から指揮者が声をかけた。その物言いに、張り詰めていた室内の空気が一瞬和らぐ。だが次の瞬間、再び指揮者が指揮棒を構えると、半円形に座った演奏家の背筋がピンと伸びた。 「じゃ、次は『劇的』をやってみましょう。ファースト頑張って。イチ、ニ、サン」
名古屋市
アクテノン(名古屋市演劇練習館)
「ほとんど本番と同じサイズの練習場で、声や音、時間を気にせずに稽古できるのが嬉しい限りです」(演劇襲団海賊船II)、「常時ものを預けておけるスペース(物置、ロッカーなど)があるととても助かるのですが、いかがでしょう」(劇団・夏蝶)「私たちみたい学生劇団には、低料金というのがすごく助かっています。」(FOOL)「駐車場が少し使いやすく、部屋の予定が取りやすいとありがたいです」(クセックACT96)「警備員さんの”がんばってください”という声にはほんとうに励まされます」(双身機関)
練習場整理学
新潟市音楽文化会館の寺田さんをゲストに迎え、練習場の理想像について議論していただきました。
寺田尚弘 (新潟市音楽文化会館)
草加叔也 (劇場コンサルタント)
津村卓 (財団法人地域創造チーフディレクター)
空間のエスプリ
チャイナタウンに根をおろすビデオ・カルチャーのメッカ ニューヨーク
ダウンタウン・コミュニティ・テレビジョン・センター(DCTV)
喧噪のチャイナタウン。魚や野菜がずらりと軒下に並ぶ混沌とした商店街を抜けると、今度は灰色のビルに漢字だらけの看板が並ぶ中国系のオフィス街だ。 そこに突然、まるでタイムマシンの故障で出現したような中世ヨーロッパの邸宅風建築物が建っている-それが「ダウンタウン・コミュニティ・テレビジョン・センター(DCTV)の拠点。
ビデオ・ジャーナリズムにしろビデオ・アートにしろ、ビデオ制作なるものに多少なりとも興味のある人なら、ここの存在はまず知っていて当たり前とすらいわれる、ビデオ・カルチャーのメッカである。
座談会
広報誌の現在、そして未来。
~どんな役割を果たし、何を求められているのか。
広報誌といっても、その担当者によって正確も内容も様々だ。 個性あふれる4つの広報誌担当者が、その現状と将来を語り合った。
出前レッスン
仮設劇場を体験する
ある日突然姿を現し、公演やイベントが終われば消える仮設劇場。その魅力は、作家や演出家の表現の可能性を広げ、観る側には「何が起こるんだろう」という高揚感を与えてくれることです。
ホールの中のことだけに目が向きがちなホール職員にとって、仮設劇場での公演は、劇場とは何かをゼロから考えるいい機会になるのではないでしょうか。今回の出前レッスンでは、大阪で行われたテント公演に出掛け、ホール以外の空間の可能性について話し合いました。
公共圏世代の文化会館をめざして
~練習場を考える前提として
文化会館は、さまざまな歴史的経緯によって形づくられている。そのもとをたどると公会堂建築、そしてその前身の倶楽部建築に行き着く。日本銀行集会所(1880年)、鹿鳴館(1883年)などをはじめとして明治から大正にかけてつくられた倶楽部建築は、当初、西洋の先例を見習い、地域の名士たちが私的な活動を通して地域を考えるための仕組みとして資金を出し合い、建設された。
SCOPE
「新世界」に挑んだ文化交流事業
アジア文化会館多文化実験工房演劇ワークショップ
「レイラレ ワンマー サカリーラー タイガ レイゾウ パンヤウラ 友だちに なろーよー ダッケー ツォホェ ライジオ ベンユー・・・・・・・」 思い思いの楽器を手に、出演者全員がフィナーレの舞台に並ぶ。東京新世界楽団が琴、三線、パーカッション、電子ピアノなどでメロディーを奏で、「友だちになろうよ」を意味する七カ国語の歌詞がゆったり歌われる。
「ミュージアム・スクール」でアートに出会い、アートを体験
島根県浜田市 浜田市世界こども美術館
JR山陰線、浜田駅から車で約10分。駅前の商店街を抜け、ぐんぐん坂道を登って行くと、丘の上に白い船のような形の建物が見えてくる。眼下に広がるのは、早春の日本海。まるで、海に浮かぶ船のようなこの建物が、「浜田市世界こども美術館」だ。
「みんなの町の文化会館」が力を合わせて「船出」
大阪府 大阪府法人組織文化施設協議会 第1回共同事業
1997年12月12日、午前8時過ぎ。大阪・天保山埠頭に停泊する豪華客船おりえんとびいなす号(2万2,000トン)に、続々と乗客が集まって来る。午前10時と午後4時出航の2回にわたって行われるイベント「辻久子 音楽生活65周年記念クリスマスクルージングコンサート-ヴァイオリンは海風にのって-」が開催されたのである。
公募型プロポーザル方式を採用した、歴史的地区・今井町の公共施設計画
奈良県橿原市(仮称)住民活動センター
公共施設をつくる場合、住民、行政、専門家の協力が必要であり、その地域の特性を生かすことが求められる。構想・計画、設計・施工、運営・管理の各段階にその配慮が必要だ。その中にあって、最も専門家の役割の比率が高くなるのが、設計・施工の段階である。場合によっては住民との間に距離ができる可能性がある。その危険性を回避するためには住民の要望を取り入れ、地域の特性を生かすことのできる設計者を選ぶ、設計者選定の方法が重要になる。
400人の夢が築き上げた大舞台
北海道帯広市 「帯広市民オペラ」
2年半の準備を経て、全国でも珍しい市民主導の手づくりオペラ『カルメン』が、1997年11月22日と24日の両日、帯広市民文化ホールで上演された。北海道十勝地方から総勢400人の市民がボランティアで参加し、ビゼー作曲の名作を熱演。総経費4,400万円を要した舞台は、2日間で2,600人が入場し、その完成度の高さに称賛の声が相次いだ。さまざまな職業と世代の人々が心を一つに合わせ、オペラ上演に情熱を燃やした日々を紹介する。
大人のための鑑賞教室
「茂木大輔のオーケストラ人間的楽器学」
「茂木大輔」というオーボ工奏者をご存知だろうか。学生時代にプロのオケマンとなり、その後ドイツに暮らし、地元オーケストラに籍を置きながら多岐にわたって活動を続けてきた。現在は、NHK交響楽団の首席奏者を務めている。自他共に認める無類の好奇心人間である。
躍進する韓国コンテンポラリーダンス~現状と教育システム
近年、韓国コンテンポラリーダンスの台頭が目ざましい。世界的なダンサー・振付家の登竜門、フランスの「バニョレ国際舞踏振付コンクール」で、1996年度のグランプリを獲得したのは、韓国の無名のカンパニーだった。初エントリーが92年で、2年後には最終選考に残るなど、その水準の高さには欧米の批評家たちも一様に驚きを隠せなかった。
第4号 練習場を考える(1997年度3月発行)
出版物・報告書