一般社団法人 地域創造

横浜市 横浜みなとみらいホール こどもフェスタ 「みなとみらい 遊音地」

 8月6日から9日まで、横浜みなとみらいホール全館で「こどもフェスタ みなとみらい遊音地」が開催された。この催しは2011年、同ホールとクラシック音楽の普及に取り組むNPO法人ハマのJACK(以下、JACK)がタッグを組む形でスタートしたものだ。6日に行われた演奏会「こども・くらしっく」(同ホール企画)と9日に行われたJACKによるプログラムを取材した。

 

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こども・くらしっく ©藤本史昭

 

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ハマのJACKのおんがくファミリーランド どうぶつ絵本コンサート(『おおきなかぶ』ロシアの昔話 A・トルストイ 再話 内田莉莎子 訳 佐藤忠良 画 福音館書店 刊) ©藤本史昭

 

 今回初めて取り組んだという「こども・くらしっく」は大ホールが会場となり、1717年製のストラディバリウスを持参したヴァイオリニストの松田理奈とピアニストの實川風が登場。二人が曲の形式やエピソード、演奏技法などの紹介を交えながら丁寧に進行したほか、楽器やホールの響きを身近に体感できるように来場者全員を3グループに分けて舞台上に招くなど、子どもたちへの思いが溢れた演奏会になっていた。

 一方、NHK交響楽団ヴァイオリニストの三又治彦が代表を務めるJACKの企画には、同メンバーでもある現役のN響奏者などが全面協力。「金の卵プロジェクト」(オーディションで10歳以下、14歳以下、18歳以下の金の卵を発掘し、応援するホールとJACKの主要事業)の受賞者をお披露目する演奏会、0歳・1歳・2歳とクラスを分けて親子で気軽に音楽を体験する「おんがくベビーランド」、絵本を題材にした映像・朗読付きの「おんがくファミリーランド『どうぶつ絵本コンサート』」と、全力投球のプログラムが並んでいた。

 このうち「ファミリーランド」では、楽器紹介も行う弦楽五重奏(+打楽器)に続き、同ホールとJACKが2014年に作曲家の木村裕に委嘱した絵本朗読音楽劇『おおきなかぶ』が上演された。
巨大なカブを抜くべく集まる仲間を楽器に見立て、最後のネズミ役で1/8サイズのヴァイオリンを持った7歳の奏者が登場したときには会場中が笑顔に。2012年の『スーホの白い馬』を皮切りに、『にじいろのさかな』『100万回生きたねこ』『野毛山動物園の謝肉祭』『きつねのおきゃくさま』と計10作品がJACKらにより委嘱されており、遊音地の大きな成果となっている。

 同ホールの菊地健一チーフ・プロデューサーは、「遊音地はホールの次世代育成事業に位置づけられています。JACKの取り組みを知り、ホールとしても応援したいと考えたことから、以前から実施していた夏休みのパイプオルガン体験などの子ども向け事業と合体させて遊音地を発足しました。『オルガン&ホール探検!』などどなたでも楽しめる企画と、歌に興味があ
るならオペラ、ジャズが好きならジャズなどと選んで楽しむ“百貨店”的なプログラムがあり、試行錯誤しながら発展してきました」と話す。

 JACKが設立されたのは2008年。三又が出演していた横浜市開港記念会館の演奏会シリーズの主催者が企画を継続できなくなったことから、活動を引き継ぐべく、同館時計塔の愛称「ジャック」を冠して団体を立ち上げた。当初は本格的な演奏会に子どもを無料招待していたが、次第に活動の幅を広げ、ノウハウを蓄積していった。

 三又は、「『ベビーランド』に来た親子にも、全員にホールでの演奏を体験してもらうようにしています。飽きさせないよう、曲は5分以内、できれば3分以内がベスト。親にとっても新鮮な音楽体験となる選曲を心がけています。JACKは演奏家の団体であり、例えば指揮者なしで協奏曲を演奏する『金の卵』のための勉強などは、奏者にとっても糧となります」と話す。JACKの活動は、ホールや自治体との事業、年会費、助成金などを資金として活用しながら継続しているそうだ。

 横浜みなとみらいホールとJACKに共通するのは、子どもたちに響きのいいホールで良い音楽を生で味わってほしいというシンプルな願いだ。「イヤホンやヘッドホンで音を聴くことが多い今だからこそ、どこからも音に包まれるような経験を、子どもの頃にどんどんしてほしいと思っています」(菊地)

 「子ども時代に生演奏を聴いた経験が、40歳、50歳になった時の“何か”に繋がれば。音楽に興味がない子も含め、色々な子どもたちに足を運んでもらえるようにしたいですね」(三又)

 音楽との出会いを届けるため、両者の試行錯誤は続く。

(舞台芸術ライター・高橋彩子)

 

横浜みなとみらいホール こどもフェスタ「みなとみらい遊音地」

[会期]2026年8月6日~9日
[会場]横浜みなとみらいホール
[主催]横浜みなとみらいホール、NPO法人ハマのJACK(8日、9日)
[共催]ボッシュ ホール(都筑区民文化センター)(8日)
[協力]NPO法人横浜シティオペラ(8日)

横浜みなとみらいホール

1998年開館のクラシック音楽専用ホール。大ホール(2,020席)には、4,632本のパイプをもつ大型パイプオルガン「ルーシー」を備えるほか、室内楽に適した440席の小ホール、リハーサル室、音楽練習室などを完備。

ハマのJACK

若手演奏家の育成と地域に根差したクラシック音楽の普及を目指すNPO法人(2008年発足、11年NPO法人化)。代表の三又治彦(N響ヴァイオリニスト)をはじめ、メンバーはすべて演奏家。「遊音地」のほか、各種訪問演奏会、未来の演奏家を応援する金の卵プロジェクト(コンチェルト・ソリストオーディション、受賞者演奏会など)を展開。金の卵プロジェクトは、JACKの演奏家団体としての特徴が表れており、指揮者を置かず、演奏家同士が呼吸を合わせて若いソリストと共演することで、子どもたちに将来の糧となる舞台経験を提供している。21年度横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞。

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