一般社団法人 地域創造

2024年度 「地域の公立文化施設実態調査」② 専用ホール

専用ホールのアウトリーチ実施率・実施回数がやや減少

今回は、舞台芸術を主目的としている「専用ホール」の主な結果を紹介する。調査の対象となった1,535施設(地方公共団体からの回答により把握した施設)のうち、施設から有効回答があったのは1,523施設である。

回答施設の概況

設置主体別にみると、都道府県97施設(6.4 %)、政令市143施設(9.4%)、市区町村1,283施設(84.2%)である。また、管理運営形態別で は、指定管理が987施設(64.8%)、直営が529施設(34.7%)、大規模修繕などでの閉館中が7施設(0.5%)となっている。2019年度調査と比較すると、指定管理が62.6%から64.8%へと増加し、その分直営が減っている[表1]

 

表1 設置主体別、管理運営形態別/施設内容内訳(%)

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施設の運営状況(スタッフ数・専門職員の有無・収入)

 2024年9月時点でのスタッフの平均合計人数は11.0人で、内訳は、事業系スタッフ3.6人、施設管理系スタッフ3.6人、舞台技術系スタッフ3.3人、総務系スタッフ2.6人となっている。設置主体別では、施設規模の大きい都道府県(22.4人)、政令市(17.9人)が多く、市区町村(9.4人)との差が顕著である[表2]。常勤の館長がいる比率は85.3%と高いが、芸術監督のいる比率は3.4%、専門のプロデューサーがいる比率は5.3%と低い。ただし、都道府県の施設では芸術監督13.4%、プロデューサー18.6%と顕著に高くなっている[表3]。

 

表2 スタッフ数の平均(設置主体別)

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表3 芸術文化領域の専門職員(設置主体別) ※複数回答

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 2023年度決算金額による施設収入金額は、直営施設で平均52,173千円、指定管理施設で平均200,011千円だった[表4]。2019年度調査(2018年度決算)と比較すると、直営施設で45,089千円から15.7%の増加、指定管理施設で176,073千円から13.6%の増加だった。ただし、支出をみると、直営施設では事業費が平均9,147千円から8,162千円へと減少している一方、運営管理費が39,555千円から45,580千円へと大幅に増加しており、収入の増加が事業の活性化に直結しない状況となっている。一方指定管理施設では、事業費が前回の66,391千円から74,816千円へと上昇している。

 

表4 2023年度決算金額
●直営

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*「施設使用料・入場料収入等」は、これらを一般財源とせず、特定財源で施設運営費に充当している場合に記入

 

●指定管理

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*1 指定管理料以外に設置者からの事業補助金がある場合に記入。指定管理者である文化財団本部に対する事業補助金で当該ホールの事業を実施する場合を含む。
*2 設置者から事業の委託を受け、その費用を指定管理料とは別に事業受託費として受け取っている場合に記入。
*3 上記以外の費目で、指定管理料とは別に設置者から受け取っている収入がある場合に記入。
*4 複合施設で他の施設からの収入が充当されている金額を含む。
*5 利用料金制を取っている場合に記入。

自主事業の実施

 専用ホール施設において2023年度に自主事業を実施した割合は、直営施設で71.5%(設置団体以外の団体への委託事業を含む)、指定管理施設で91.6%(設置団体からの受託事業を含む)となっている。年間の平均実施件数は18.2件、分布では1~5件実施している施設の割合が29.7%と最も多い。ただし、設置団体による違いが大きく、都道府県では年間21件以上実施している比率が48.3%、政令市では36.0%と最も多くなっている[図1]。

 

図1 自主事業数の分布(%)(設置主体別)

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 実施している事業のジャンルとしては、自主事業・設置団体からの受託事業ともに、「クラシック音楽・オペラ」の実施比率が最も高い。また、より詳細なジャンルでみると、「落語」が40.6%でトップとなっている。市民参加型の事業や普及事業としては「ホール内で実施する体験型事業(ワークショップ等)」35.0%、「市民文化祭、芸術祭」34.7%、「文化芸術関連の講座、講演会」27.0%、「地元アーティストの育成・支援を目的とした事業」25.6%、「無料のロビーコンサート」19.7%、「0歳コンサート」19.3%、「バックステージツアー」18.0%、「市民オペラ、市民ミュージカル、市民劇等の市民参加型の創造事業」17.2%が回答の上位となった。一方、オリジナルの舞台芸術の創造を行う「地域向けにホールが企画したプロデュース公演」は10.9%にとどまる[図2]。

 

図2 鑑賞系自主事業・受託事業の詳細ジャンル、個別企画内容(%) ※複数回答

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 アウトリーチ事業の2023年度の実施率は、 全体で42.3%(都道府県68.5%、政令市59.9%、 市区町村37.8%)となっている。年間の平均実施回数は、全体で11.8回(都道府県20.8回、政令市8.9回、市区町村11.1回)である。アウトリーチの対象は小学校(65.3%)が中心で、次いで中学校(34.7%)となる。2018年度実績と比較すると、全体の実施率で43.8%からやや減少、回数も13.3回から11.8回へと減少している[表5]

 

表5 アウトリーチの実施状況(設置主体別)

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*2024年度「地域の公立文化施設実態調査」報告書は、地域創造ホームページにも掲載しています。

2024年度「地域の公立文化施設実態調査」調査概要

◎調査対象
公立文化施設のうち、「専用ホール」、「その他ホール」、「美術館」、「練習場・創作工房(アーティスト・イン・レジデンス施設を含む)」およびそれらを含む「複合施設」と、施設の設置主体にあたる地方公共団体。

 

◎調査時期
2024年9月~11月

 

◎調査方法
全国の地方公共団体の文化行政担当者に、当該団体が設置主体となっている調査対象施設を記入する「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」、「施設調査票」を配布。当該団体において「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」の記入および「施設調査票」の各施設への配布と取りまとめをしていただいた。

 

◎調査回収数
•地方公共団体票の有効回収数1,756(都道府県47(100%)、政令市20(100%)、市区町村1,687(98.0%)、一部事務組合2)
•地方公共団体からの回答3,500館 延べ3,692施設(「専用ホール」1,535、「その他ホール」1,340、「美術館」651、「練習場・創作工房」166)
•地方公共団体から回答があった3,500館のうち、施設からの施設調査票の有効回収数3,478館 延べ3,670施設(「専用ホール」1,523、「その他ホール」1,333、「美術館」648、「練習場・創作工房」166)

調査研究に関する問い合わせ

芸術環境部 中嶋・児島
Tel. 03-5573-4066