地域創造では、今年度より「障がい者関連事業」をスタートしました。この事業は、これまでにおんかつ、ダン活、邦楽事業を実施してきた団体が、蓄積したノウハウを活かし、特別支援学校や障害者施設等を対象にアウトリーチを実施するものです。事業開始にあたり、事業実施団体担当者、アーティスト、コーディネーターが集まり、5月8日、9日の2日間にわたって全体研修会を開催しました。
初日は、「多様な参画の実現に向けて~障がい者とアートをつなぐ~」をテーマに、講師の吉野さつきさん(愛知大学文学部メディア芸術専攻教授)と南部充央さん((一社)日本障害者舞台芸術協働機構 代表理事)によるレクチャーがあり、事業を進める上で大切にしたい視点や具体的な事例が紹介され、現場との丁寧な対話の重要性が語られました。
続いて、コーディネーターやアーティストそれぞれの活動の事例が紹介され、音楽やダンス、演劇、美術など多様な分野における取り組みが共有されました。当事者との向き合い方や創意工夫のプロセスについてなど、参加者にとって深い学びの時間となりました。セレノグラフィカの隅地茉歩さんと阿比留修一さんからは、知的障がいと情緒障がいのある子どもたちとの創作活動で、特性の異なる子どもたちに向き合う難しさや喜び、学校との連携をどのように築いたかなど、現場でのリアルな経験が紹介されました。
南部さんは「前例に学ぶことが、かえって固定概念を生む場合がある」と、固定概念が参加の障壁となる危険性を指摘。文化芸術には、こうしたバリアを超え、新たな価値を創出する力があることが示唆され、多様な参画を実現する文化芸術の可能性を再認識する貴重な機会となりました。
初日の後半からは、地域ごとのグループに分かれ、各地域の状況や課題を基に意見交換するなど事業の実施に向けたディスカッションが展開され、2日目の最後にそれぞれ経過を発表しました。参加者間での情報共有と相互理解が深まり、今後の事業に向けた方向性の確認と土台づくりが進められました。
今後、各地域でどのような取り組みが行われ、担当者がどのようにその舵取りをしていくのか、新たな事業の展開にぜひご注目ください。
全体研修会の様子
令和7年度「公共ホール音楽活性化事業(障がい者関連プログラム)」実施団体/アーティスト
- 三重県伊賀市/石上真由子(ヴァイオリン)
- 岡山県倉敷市/野尻小矢佳(パーカッション)
令和7年度「公共ホール現代ダンス活性化障がい者関連事業」実施団体/アーティスト
- 山形県鶴岡市/セレノグラフィカ(隅地茉歩+阿比留修一)
- 愛知県豊橋市/田畑真希
問い合わせ
芸術環境部 垂水・波多野
Tel.03-5573-4076