
この事業では、美術館のマネジメントに関する研修会を、地域創造と申請館の共催で2年間にわたって実施しています。研修テーマを申請館が希望する内容に沿って組み立てる「オーダーメイド型」であることが特徴です。また、県域や地域の美術館等とともに研修を受けることで相互交流の場とすることを目指しています。今年度は、千葉県立美術館、田川市美術館、鹿児島市立美術館で、それぞれ2回のゼミを開催しました。
千葉県立美術館での1回目の研修は、「デジタル時代の美術館」をテーマに、社会のデジタル化により美術館が置かれている状況も刻々と変化している現状を鑑み、これからの美術館に関わる職員が把握しておくべき美術著作権の知識およびデジタル技術を活用した広報について学ぶことを目的に、大阪工業大学専門職大学院知的財産研究科教授の甲野正道氏と(株)テレビ朝日技術局コーポレートデザインセンター新領域・先端デザイン担当部長の横井勝氏にご講義いただきました。2回目の研修は、これからの美術館に求められている役割を考える機会の一つとして、「ミュージアムとアクセシビリティ」をテーマに、『ミュージアムのケースから知る!学ぶ!合理的配慮のハンドブック』筆者である、国立アートリサーチセンター客員研究員の伊東俊祐氏と、同センター研究員の鈴木智香子氏を迎え、具体的な事例を踏まえたケーススタディを行いました。
田川市美術館では1回目の研修として、「地方公立美術館の未来と可能性:限られたリソースを生かす発想と戦略」をテーマに開催。静岡県立美術館館長の木下直之氏に文化資源学の視座から地方の公立美術館の可能性についてお話いただいた後、姫路市立美術館学芸課長の鬼本佳代子氏に、主に異種館連携の教育普及事業を中心に実例を交えてご講義いただき、公立美術館が限られた人員と予算で、新しい視点や発想を得るための機会としました。2回目の研修では、アクセスの不便さや集客の難しさなど、公立美術館がさまざまな課題に直面していることを踏まえ、地域住民との連携を深めて美術の可能性を広げる取り組みについて学ぶため、「過疎地域におけるアートを通じた街づくりの継続性を考える」をテーマに開催しました。津奈木町立つなぎ美術館の学芸員である楠本智郎氏とNPO法人黄金町エリアマネジメントセンター事務局長の山野慎吾氏を講師に迎え、それぞれの地域での具体例を知る機会となりました。
鹿児島市立美術館での1回目の研修は、「対話型鑑賞の基本」をテーマに、アート・コミュニケーション研究センター所長/京都芸術大学アートプロデュース学科准教授・学科長である伊達隆洋氏を講師に招き、来館者に多様な鑑賞体験の機会を提供することを目指し、対話型鑑賞の基本を講義とワークショップで学びました。2回目の研修は、「広報活動におけるSNSの活用とミュージアムグッズ」をテーマに、森美術館のSNS運用を担当している洞田貫晋一朗氏から、SNSの基本的事項から地方館にも真似できる運用術を学ぶ研修を開催。その後、ミュージアムグッズ愛好家である大澤夏美氏を講師に、館の運営におけるミュージアムグッズの位置づけや役割、その開発の仕方などについて、講義とワークショップを交えた研修を行いました。
このように美術館出前(オーダーメイド)型ゼミでは、地域の特色や現在抱えている課題に沿って研修事業を行っています。毎年、10月末頃に募集をしていますので、ご興味のある館はぜひご検討ください。
●令和6年度「美術館出前(オーダーメイド)型ゼミ」
◎千葉県立美術館
•第1回(2024年6月27日)
「デジタル時代の美術館」
講師:甲野正道(大阪工業大学専門職大学院 知的財産研究科 教授)、横井勝((株)テレビ朝日 技術局コーポレートデザインセンター 新領域・先端デザイン担当部長)
•第2回(2024年12月26日)
「ミュージアムとアクセシビリティ」
講師:伊東俊祐(國學院大學博物館学研究室 国立アートリサーチセンター)、鈴木智香子(国立アートリサーチセンター研究員)
◎田川市美術館
•第1回(2024年7月29日)
「地方公立美術館の未来と可能性:限られたリソースを生かす発想と戦略」
講師:木下直之(静岡県立美術館館長)、鬼本佳代子(姫路市立美術館学芸課長)
•第2回(2025年1月24日)
「過疎地域におけるアートを通じた街づくりの継続性を考える」
講師:山野慎吾(NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター事務局長)、楠本智郎(津奈木町立つなぎ美術館学芸員)
◎鹿児島市立美術館
•第1回(2024年11月19日)
「対話型鑑賞の基本」
講師:伊達隆洋(アート・コミュニケーション研究センター所長/京都芸術大学アートプロデュース学科准教授・学科長)
•第2回(2025年2月5日)
「広報活動におけるSNSの活用とミュージアムグッズ」
講師:洞田貫晋一朗(洞田貫プランニングス(株)代表取締役)、大澤夏美(ミュージアムグッズ愛好家)
問い合わせ
総務部 高野
Tel. 03-5573-4056