地域創造では、これまで公立文化施設の活性化を支援する事業を積極的に提案してきました。その第1弾として1998(平成10)年度に立ち上がったのが、オーディションで選考されたクラシック音楽の若手演奏家を市町村に派遣し、地域の公立ホールと共同でコンサートとアウトリーチを企画・実施する公共ホール音楽活性化事業(通称:おんかつ)です。
以来、ジャンルを広げ、それぞれの課題に応じた特徴ある事業を企画し、要望を踏まえながらリニューアルしてきました。今号では、財団設立30周年の締めくくりとして、アーティストを地域に派遣して実施しているクラシック音楽、邦楽、現代ダンス、演劇の今年度の事業の模様をご紹介します。
公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)

今年度は5組の演奏家が10地域で事業を実施しました(左欄参照)。その中の1カ所、人口約2万1千人の福島県西郷(にしごう)村ではピアニストの今田篤さんが事業を実施しました(11月28日~30日)。
特にホールコンサートは、本格的なクラシックコンサートを行った経験がないなかでの挑戦でしたが、4月に行われたプレゼンテーションで今田さんの演奏に感銘を受けた担当者が「村民に今田さんの演奏を届けたい」という情熱あふれる広報活動を展開し、前売券は完売。当日は平土間の会場中央に設置したピアノを観客が囲み、圧巻の演奏を堪能しました。
●令和6年度公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)実施団体/派遣アーティスト
・福島県西郷村(今田篤)
・長野県飯山市(Modétro Saxophone Ensemble)
・静岡県袋井市(カメハ)
・滋賀県長浜市(Modétro Saxophone Ensemble)
・兵庫県福崎町(西村悟)
・島根県安来市(Modétro Saxophone Ensemble)
・徳島県勝浦町(西村悟)
・高知県香南市(閑喜弦介)
・熊本県荒尾市(Modétro Saxophone Ensemble)
・熊本県宇土市(閑喜弦介)
問い合わせ
芸術環境部 おんかつ担当
Tel.03-5573-4076
onkatsu@jafra.or.jp
公共ホール邦楽活性化事業

今年度は3組の演奏家が6地域で事業を実施しました。その中の1カ所が竹弓の生産で有名な南九州の拠点都市・都城市です(3月7日~9日)。同市を訪れたのは、地域創造の登録演奏家である大萩康喜さん(尺八)、折本慶太さん(尺八)、大萩絵理さん(箏・十七絃・三味線)の3名です。
障害者支援施設へのアウトリーチは、鹿の鳴き声を2本の尺八で表現する「鹿の遠音」からスタート。どこからともなく聞こえてくる尺八の掛け合いにみんな興味津々。都城市の民謡「安久節」では、三味線も加わって一層にぎやかな演奏になりました。アンコールの『川の流れのように』では一緒に歌う場面もあり、楽しいひと時を過ごしました。
ホールプログラムでは親子を対象としたファミリーコンサートを実施しました。普段から尺八を自ら製作している大萩さんは、開演前に尺八製作のミニワークショップを実施し、コンサートで一緒に演奏。また、尺八独奏では、大萩さんがとても大切にしている「鶴の巣籠」を披露。親子の鶴が鳴き交わす様子やいつか訪れる別れの時を尺八のあたたかな音色で切々と表現しました。
●令和6年度公共ホール邦楽活性化事業実施団体/演奏家
・福島県白河市(森梓紗)
・兵庫県養父市(安嶋三保子)
・福岡県中間市(森梓紗)
・熊本県益城町(安嶋三保子)
・宮崎県都城市(大萩康喜)
・沖縄県名護市(森梓紗)
問い合わせ
芸術環境部 邦楽担当
Tel. 03-5573-4069
hougaku@jafra.or.jp
公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)

撮影:笠門麗
ダン活は2017(平成29)年度に事業を大幅にリニューアル。アウトリーチ等の地域交流プログラムを実施するA、市民参加作品を創作・上演するB、アーティストのレパートリー作品を上演するCの3プログラムを1年1プログラムずつ地域のニーズに応じた順番で3カ年実施できるようになりました。今年度は、A3地域、B5地域、C3地域の計11地域が事業を実施しました。
Cプログラムを実施した熊本県天草市では、ダン活登録アーティストの康本雅子さんが自らの子育ての体験を題材にしたレパートリー作品を上演。子どもから大人まで多世代の観客が集まり、自身の子育てや子どもだった頃の経験と重ね合わせながら鑑賞していました。
Bプログラムを実施した鹿児島県与論町では、ダン活登録アーティストの長与江里奈さんが約30名の島民と共にダンス作品を創作・上演。参加可能な練習日数によって3つのグループに分け、少しだけダンスにふれてみたい人から本格的に関わりたい人までが、共に取り組むプロジェクトとして企画しました。体育館に特設会場を設え、窓の外に見える木々をライトアップするなど、与論島の自然を取り入れて演出。アンコールでは有志の観客を巻き込み踊り、大いに盛り上がりました。
●令和6年度公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)実施団体/アーティスト
◎Aプログラム
・三重県津市(長与江里奈)
・京都府(中村蓉)
・高知県四万十市(藤田善宏)
◎Bプログラム
・茨城県日立市(大島匡史朗)
・長野県喬木村(康本雅子)
・静岡県菊川市(井田亜彩実)
・鹿児島県与論町(長与江里奈)
・沖縄県浦添市(マニシア)
◎Cプログラム
・山形県大石田町(浅井信好)
・千葉県市川市(浅井信好)
・熊本県天草市(康本雅子)
問い合わせ
芸術環境部 ダン活担当
Tel. 03-5573-4067・4077
dankatsu@jafra.or.jp
リージョナルシアター事業

写真提供:(公財)鳥取県文化振興財団
リージョナルシアター事業は、2013(平成25)年度に大幅なリニューアルを実施。演劇のアーティストを地域に派遣し、公立ホールと共にワークショップを企画・実施する事業になりました。今年度は8名のアーティストが8地域で事業を実施しました。
三重県四日市市は、ホールを指定管理する四日市市文化まちづくり財団の若手職員の育成を目標のひとつに掲げて、志賀亮史さん(演出家、百景社代表)と共に取り組みました。1回目派遣で職員向けインリーチを受けた若手職員たちがワークショップを企画。2回目派遣で実際に「よっかいち空想まちあるき」と題したワークショップを実施しました。参加者たちは四日市市文化会館から茶室「泗翠庵」までの約1キロを散策しながら、道中で見つけた不思議なモノを写真撮影。泗翠庵に到着後、お抹茶をいただきながら、撮影した写真から広げた空想を発表し合いました。参加者からは「何気なく通っていた道を面白く歩くことができた」との声が挙がっていました。
鳥取県では、エースパック未来中心(鳥取県立倉吉未来中心)が地域に向けて行う取り組みとして、福田修志さん(劇作家、演出家、F’s Company代表)が琴浦町立船上小学校の4・5年生を対象にアウトリーチを実施しました。コミュニケーションゲームを終えた後、3グループに分かれて3枚の写真から「何かを探しに行くお話」をつくるワークに取り組みました。また、地域における人材を育成するため、地元の演劇関係者にも呼びかけ、実際にワークショップを企画・実施するプログラムにも取り組んだほか、未就学児から親子まで参加できる公募ワークショップも行いました。
●令和6年度リージョナルシアター事業参加団体/派遣アーティスト
・愛知県知多市(樋口ミユ)
・三重県四日市市(志賀亮史)
・大阪府豊中市(有門正太郎)
・兵庫県西宮市(ごまのはえ)
・鳥取県(福田修志)
・島根県安来市(越智良江)
・香川県丸亀市(多田淳之介)
・熊本県宇土市(田上豊)
問い合わせ
芸術環境部 演劇担当
Tel. 03-5573-4124
regional@jafra.or.jp
各事業の模様は財団YouTubeでも公開していますので、今後の事業の参考にしていただけますと幸いです。 |
【おんかつ】
3月末頃公開予定
【邦楽】
【ダン活】
【リージョナル】