一般社団法人 地域創造

大阪府茨木市 茨木市文化・子育て複合施設おにクル ベイビー&キッズシアターフェス

 昨年11月に誕生し、ゴールデンウィーク期間中に来場者数80万人を突破した茨木市文化・子育て複合施設「おにクル」。4月28日には全館を使った無料の「ベイビー&キッズシアターフェス」(主催:茨木市文化振興財団)も催され、ベビーカーを押した親子連れなどで賑わった。
 おにクルは、旧市民会館(2015年12月閉館)の建て替えにあたり、福祉文化会館(今年5月貸館業務終了)、中条図書館(昨年8月閉鎖)など分散していた文化や子育て支援などの機能を集約して新たに構想した集約型文化交流施設。芝生広場から大屋根広場、平土間の多目的ホールと一体化したエントランスに始まり、吹き抜けのエスカレーターで子育て施設や図書館、大ホール、市民活動センター、最上階のプラネタリウムまでが緩やかに繋がっている(伊東豊雄設計)。フェスに合わせて、話題のおにクルを取材した。


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上:おにクル外観/下:劇団CORPUS『ひつじ』


 エントランスなど交流スペースは飲食自由。フェスでは、カナダの劇団CORPUS(コーパス)が演者が羊になり切ってパフォーマンスする『ひつじ』を芝生広場で上演したのをはじめ、コミカルなパーカッションショーで沸かせたりずむらいすやパントマイムなど多彩な催しを実施。4月21日に開場したばかりの大ホールでは、舞台上に設置した特設舞台で綱渡りや空中エアリアルなどを見せるクロワッサンサーカスのショーが行われた。
 おにクルはどのようにして構想されたのだろうか? 茨木市は大阪市と京都市という大都市の中間に位置する人口28万人のベッドタウン。旧市民会館は、JR茨木駅と阪急茨木市駅の中間(それぞれ徒歩15分)、市役所や福祉文化会館、市民総合センター(クリエイトセンター)、グラウンドなどが集まる市中心部に位置していた。2016年に就任した福岡洋一市長は周辺整備も含めた市民会館跡地エリアの再整備に乗り出す。
 市民会館跡地活用推進課では、「市民との直接対話」を掲げる市長が車座で話し合う「市民会館100人会議」(*)を皮切りに、16年~ 23年に108回、延べ2,217人の市民と共に計5,500時間の対話とワークショップを重ねたという。
 市民の発表の場だった市民会館のホール機能を求める声はもちろん、子どもが遊べる施設、カフェなどを求める声が上がった。市民会館跡地を含む市中心部をパーク化し、市民が日常的に集える憩いの場にしたいというグランドデザインを描いていた市では、市民の声と政策課題を擦り合わせ、公共施設のマネージメント的視点を加えて「憩い・交流・にぎわい」の拠点としておにクルの構想をまとめていった。
 当時からプロジェクトに携わってきた向田明弘共創推進課課長は、「多様な機能を担う複数の運営主体が同居しているため、管理運営が課題だった。そこで、全体を総括する部署として市民会館跡地活用推進課を引き継ぐ形で市民文化部に共創推進課を新設した」と話し、各施設機能の責任者層が集まる会議を月2度、庁内の関係する課や文化振興財団関係者などをメンバーにした企画・連携、広報、サービスなど5つのユニットでの会議を月1〜2度開催しているという。また、「跡地活用を形にしていくなか、既存の市民活動団体以外の市民にも数多く参加してもらった。共創推進課は市民活動支援も所管しており、開館後も市民が主体となる活動を、何よりも基本に運営していきたい」と話す。
 一方、これまで市の文化振興を担い、旧市民会館も指定管理者として運営してきた文化振興財団の落合佳人事業統括は、「財団では自主事業として2019年からクリエイトセンターや市内各所で乳児、未就学児、児童向けの事業に積極的に取り組んできた。ベビー向けの事業はすぐに満員になる。今回のフェスではその蓄積を生かして企画をまとめた。おにクルではオープンしてから市民が次々と面白い企画を行っている。財団としてはそこに事業を集中するのではなく、アウトリーチ的な取り組みで市内全域に広げていくのが我々の役割だと考えている」と言う。
 策定されたばかりの茨木市文化振興ビジョン(第2期)でも共創がうたわれ、そのシンボル施設としておにクルが位置付けられているが、おにクルの実験がどのような効果を生み出すのか、今後を注視したい。 (田中健夫)

 

●茨木市文化・子育て複合施設おにクル
[所在地]〒567-0888 大阪府茨木市駅前3-9-45 https://www.onikuru.jp/
[開館]2023年11月26日(大ホールは24年4月21日開場)
[構造]地上7階鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造/延床面積19,715.22m2)
[主な施設]大ホール(1,201席)、多目的ホール(245席)、リハーサル室、多目的スタジオ、音響映像制作室、会議室・和室、図書館、こども支援センター、市民活動センター、市民交流スペース、プラネタリウム、屋内こども広場、えほんひろば・おはなしのいえ、コワーキングスペース、屋上広場ほか

(※施設愛称の「おにクル」は茨木市の鬼のキャラクター「いばらき童子」から公募で命名)

 

●ベイビー&キッズシアターフェス
[会期]2024年4月28日
[主催](公財)茨木市文化振興財団
[出演]クロワッサンサーカス、劇団CORPUS、シルヴプレ、りずむらいす、おんぷらんど、HOOPER MAEP
※各30分、会場を変えて2回公演。クロワッサンサーカス(40分)のみ要予約。

 
*「各年代×10人」などの無作為抽出と、旧市民会館の利用団体などの関係者、計100人の市民を10グループに分け、市長が直接対話し、思いを聞いた。

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