市町村立美術館活性化事業(以下、市美活)の巡回展「福岡アジア美術館蔵『うるおうアジア ─近代アジアの芸術、その多様性─』」が、はつかいち美術ギャラリー、四日市市文化会館、上田市立美術館、小金井市立はけの森美術館にて開催されました。
所蔵作品の貸し出しや巡回展のアドバイザーとしてご協力をいただいた福岡アジア美術館は、アジアの23の国と地域の作品を網羅するユニークな所蔵作品を持つ美術館です。本展では、世界でも類を見ない同コレクションの中から、中国やインドなど15の国と地域の近代作品を中心にご紹介しました。また、本展の見どころは、絵画や彫刻といったいわゆる美術作品とともに、日常に密接した商業ポスターや輸出用絵画などの作品群、さらにはアートとしても注目されているバングラデシュのリキシャなど、ジャンルを横断しながら作品を展示した点です。開催館の学芸員の方々が約2年にわたって準備を進め、アジアにおける芸術のあり方、多様性や共通性について新たな眼差しが向けられるきっかけになることを期待 し、このような巡回展開催に至りました。
各開催館では、展覧会のほかにワークショップ等の地域交流プログラムも実施しましたので、一部をご紹介します。
今回はアジアというテーマから、美術分野に限らず、音楽や食、歴史などさまざまな角度からのプログラムが実施されました。はつかいち美術ギャラリーでは、はつかいち市民図書館にご協力をいただき、展示室内で作品に囲まれながら昔話を聞く「夕暮れギャラリートーク&アジアの昔話の語り」を開催しました 。展示室だけでなくホールも併設する四日市市文化会館で実施したのは、その特性を活かして三重県出身で楽器史家・ピアノ調律師の木村チェンバ郎さんによる、音楽コレクションを使った楽しいセミナーです。版画を中心とした収蔵作品をもつ上田市立美術館では、本展出品作品の中国やインドの手刷りのポスターをイメージして、多色刷りの版画を制作する講座を実施。小金井市立はけの森美術館では近隣にある亜細亜大学による多文化工作ワークショップで、切り絵体験やミニリキシャをつくりました。ほか にも各館で多彩なプログラムを複数実施し、作品の鑑賞をより深める機会となりました。
市美活は2カ年をかけて準備から開催までを行う事業で、地域創造の提示した企画案について、貸出協力館アドバイザーの助言のもとに開催各館の学芸員が、学芸会議で議論を重ねながら具体化していきます。広報や、図録の作成等、展覧会実施に係る業務についても、開催館同士で分担しながら進めていくことで、他館と連携しノウハウを共有することができ、単館ではなかなか取り組みづらいことにもチャレンジしやすい環境となっています。巡回展に参加したことのない学芸員のスキルアップとして活用いただける事業です。令和7・8年度市美活の参加館募集は、6月頃を予定していますので、ぜひご検討ください。