一般社団法人 地域創造

令和5年度「リージョナルシアター事業」スタート

 演出家等を公共ホール等に派遣し、ホール職員等と共にアウトリーチやワークショップを企画・実施するリージョナルシアター事業。この事業では、演劇の幅広い可能性について、ホール職員等の理解を深め、演劇の手法を用いて地域活性化の試みを後押しすることを目的としています。今年度は5団体が参加し、まちの規模もミッションもさまざまな中で、担当者が派遣アーティストと対話を重ねながら企画した事業が、順次スタートしました。

 茨城県茨城町では、さまざまなイベント・式典や市民活動の場として利用されてきた町立中央公民館大ホールが、約50年の役目を終え今年度解体され、新たな文化的施設が建設されることに伴い、思いを馳せながら大ホール内と周辺で、まち歩きワークショップを行いました。小学1年生から70歳代まで幅広い世代の参加者が3グループに分かれ、気になった場所や気に入った場所の写真を撮り、印刷した写真にそれぞれが思い思いに文字やイラストを描き加えていきました。壁に塗られたペンキから人が描かれたり、消火設備からお弁当が出来たりと、いつもとは違う視点やものの見方で面白い発見をして参加者の方々の想像力や表現力が発揮された作品が出来上がりました。参加者からは解体される大ホールに対し、発表会や町民祭でお世話になり「今までありがとう」と思い出の場所として振り返るとともに、新たな文化的施設への期待が膨らむ声が挙がるなど、ホールのこれからに繋がる内容となりました。

 京都市(ロームシアター京都)では、これまであまりアプローチできていなかった、高齢者を対象としたワークショップを実施しました。地域の高齢者の交流の場や就労活動の場をつくるNPO法人ともつくのアウトリーチでは、アットホームな空間を活かし、緩やかな雰囲気でワークショップが始まりました。「京都でおすすめの癒される場所」を寸劇で再現するワークでは、名所から穴場までさまざまなスポットが提案され、参加者自身の思い出を基にしたストーリーが演じられました。最後はそれぞれの20代の頃のお話しを伺い、当時の自分に一言メッセージを書いて発表していただくワークで締めくくりました。NPO法人ともつくの担当者からは「参加者のこれまで知らなかった一面を見ることができた。最後のメッセージの場面では胸が熱くなった」とお話しをいただきました。

 ホールの担当者からは「アーティストの多田さんやアシスタントの方々が、参加者の雰囲気や人柄を見て臨機応変に対応してくれていたのが良かった。このような外に出向いていく事業を今後も続けていきたい」といった声が上がり、今後ホールが独自で事業を継続していくための新たな繋がりも出来ました。

 青森県八戸市(八戸市南郷文化ホール)では、市内や隣市の高校生を対象に交流を目指して演劇体験ワークショップを実施しました。舞台、客席、ロビーを使い3チームに分かれ、アーティストが準備したテキストを基に演出を考え、発表を行いました。初めのうちは他校の生徒に戸惑いを見せる参加者でしたが、次第に緊張がほぐれ交流を深める場面もありつつ、アーティストから「想像すること、表現すること、共有すること」の難しさなどの説明を受け、チームが一丸となって作品制作に取り組んでいました。

 発表では、音響や照明のほか、各チームそれぞれの会場の特色を活かした演出を行い、同じテキストでも演出によって見え方が変わってくることを知り、いつもとは違う新たな視野での作品づくりが行われました。

 その他の地域でも、ホールの活用や商店街と連携した取り組みなどが実施されますので、興味のある方はぜひご視察ください。

 

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茨城県茨城町で実施した「まち歩きワークショップ」の様子
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ともつくカフェ(京都市)で実施したワークショップの様子
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八戸市南郷文化ホール(青森県八戸市)で実施した「演劇体験ワークショップ」の様子

 

●令和5年度リージョナルシアター事業(参加団体/派遣アーティスト)

•青森県八戸市(八戸市・(株)アート&コミュニティ/ごまのはえ)

•茨城県日立市((公財)日立市民科学文化財団/福田修志)

•茨城県茨城町(茨城町/有門正太郎)

•東京都狛江市(狛江市/田上豊)

•京都府京都市((公財)京都市音楽芸術文化振興財団/多田淳之介)

◎アドバイザー

•内藤裕敬(劇作家・演出家、南河内万歳一座座長)

•岩崎正裕(劇作家・演出家、劇団太陽族代表)

◎派遣アーティスト情報

https://www.jafra.or.jp/system/artists/index?genre=301®isted_year=2019

問い合わせ

芸術環境部 栗林・石本

Tel. 03-5573-4124

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