一般社団法人 地域創造

地域創造フェスティバル2023報告

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写真左上:シンポジウム「アウトリーチの今と これから~地域文化施設におけるアウトリー チ・ワークショップの成果や効果~」 右上:おんかつ支援プレゼンテーション 神谷未穂さん(ヴァイオリン) 左下:おんかつ支援プレゼンテーション 岩崎洵奈さん(ピアノ) 右下:ダン活プレゼンテーション 井田亜彩実さん

総勢58組のアーティストがプレゼンテーションを披露 

 多くのアーティストと公共ホール職員の交流の場となっている地域創造フェスティバル。昨 年度はアクリル板越しの演奏や距離をとった情報交換会など不自由さを残していましたが、今回は通常の交流が復活し、7月24日から26日まで東京芸術劇場を会場に開催されました。おんかつ支援登録アーティスト52組によるプレゼンテーションに加え、シンポジウム、ダン活プレゼンテーション、都道府県・政令指定都市文化行政担当課長会議、おんかつ・邦楽セミナーを開催。活気に溢れたフェスティバルとなりました。

シンポジウム「アウトリーチの今とこれから」

 地域創造では、1998年から「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」に取り組み、演奏家が学校などに出向くアウトリーチ事業を推進してきました。それから25年、今では全国の公共ホールで事業が実施されるようになっています。それを踏まえ、昨年度から2カ年計画でその成果や効果を検証する調査研究をスタートし、第1弾として「地域文化施設におけるアウトリーチ・ワークショップの成果や効果に関する調査研究」報告書(詳細は今号のP10・11参照)を取りまとめました。

 この調査では継続的にアウトリーチ等に取 り組む6館にご協力いただき、受け入れ先の教員、参加した児童へのアンケートやインタビューを実施しました。シンポジウムでは、報告書の主な内容をご紹介するとともに、調査協力館の北上市文化交流センターさくらホール(千葉真弓さん)、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館(坂内佳子さん)、北九州芸術劇場(吉松寛子さん)および演出家・俳優の有門正太郎さんによるパネルディスカッションが行われました。

 2006年度のおんかつに参加したことを契機にアウトリーチを始めたという千葉さんは、「当初はホールのお客さんとして戻って来てもらう創客が目的だったが、今ではアウトリーチが社会包摂を実現する手段になっている。北上市では2022年に文化芸術推進基本計画を策定し、その重点項目のひとつにアウトリーチを位置付けた。14年には地元の演奏家を育成し、 アウトリーチを行う『いわての演奏家とつくる音楽会』を奥州市前沢ふれあいセンターと連携してスタート。また、釜石市民ホールと大船渡市民文化会館を加えた4館で、おんかつ支援アーティストに地元の演奏家も加えたコンサートやアウトリーチを行う『Music Program IWATE』 プロジェクトを立ち上げた」と言い、地元の演奏家の参加や近隣ホールとの連携の可能性について紹介していました。

 このほか、りゅーとぴあが2019年から行っている劇場専属舞踊団Noism Company Niigataによる視覚障害者向けワークショップ、北九州芸術劇場が有門さんらアーティストを派遣して北九州市子ども・若者応援センター「YELL」(15歳から30歳の若者を対象にした復学・就労支援等)で行っているワークショップなど、刺激的な事例紹介が続きました。

おんかつ支援とダン活のアーティスト計58組が実演

 52組が出演したおんかつ支援では、客席に近づいた演奏やホール職員が参加するアクティビティなど、プレゼンテーションでの距離感の近い自由な交流が復活し、ふれあいを満喫していました。今回から邦楽活性化事業出身の支援アーティスト3名(川田健太さん、藤重奈那子さん、棚原健太さん)も参加し、ベテランの片岡リサさん、Dual KOTO×KOTOと共に邦楽器の魅力を伝えていました。

 久しぶりにプレゼンテーションに参加した神谷美穂さん(ヴァイオリン)は、定番の楽器紹介から楽曲演奏まで見事な流れで紹介。最後はヴァイオリンの多彩な音色の魅力が詰まった『死の舞踏』の圧倒的な演奏で締めくくり、3 つのオーケストラのコンマスを務める実力で魅了していました。また、おんかつでの出会いがきっかけとなり、音のボリュームが全く異なるクラシック・ギターとトロンボーンでコンサートを行っているという松尾俊介さんと加藤直明さん、テューバの音の振動をアルミ皿に載せ たたくさんの小豆がジャンプする様子で可視化して伝えた喜名雅さん、『ピーターと狼』の登場人物を絵で紹介しながら演奏した佐々木京子さん(ピアニスト)、マリンバは新しい楽器なので現代音楽と親和性があるという宮本妥子さんは中川賢一さん(ピアニスト)と共に1966年生まれの作曲家ジョン・ササスの『マトルズ・ダ ンス』で鬼気迫る演奏を披露するなど、自由に演奏できる喜びを身体いっぱいに表現したパフォーマンスが続きました。

 ダン活プレゼンテーションでは、令和6年度ダン活実施団体の研修を兼ねて、登録アー ティストによるダンスワークショップのデモンス トレーションとパフォーマンスが行われました。 藤田善宏さん、長与江里奈さん、中村蓉さんは、これまでのダン活経験も踏まえてそれぞれの強みを心得たトーク&プレゼンテーションでコンテンポラリーダンスの幅広い可能性を伝 えていました。また、来年度登録2年目となる井田亜彩実さん、大島匡史朗さん、浅井信好さんもそれぞれの創作ルーツを生かしたプレゼンテーションで作品の世界観や現在の興味関心などをアピール。アーティストごとに異なる、 ワークショップや市民との作品創作で大切にしていることやそれぞれの身体表現の魅力が伝わる充実したプレゼンテーションとなりました。

 

 

●地域創造フェスティバル

公共ホールや自治体が事業を企画・実施する上で参考になる情報を提供することを目的に、年1回地域創造の事業を紹介するフェスティバル。公共ホール音楽活性化支援事業の登録アーティスト、公共ホール現代ダンス活性化事業の登録アーティストによる多彩な実演(プレゼンテーション)、シンポジウム、セミナーなどを実施するとともに、財団事業の 説明会を開催。アーティストや全国のホール関係者、専門家が一堂に集い、交流する貴重なプラットフォームとなっている。会期中に都道府県・政令指定都市文化行政担当課長会議を同時開催。

 

地域創造フェスティバル2023 プログラム

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