一般社団法人 地域創造

ステージラボ川崎セッション報告

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左上:自主事業コース「アウトリーチをつくるにあたっての基礎知識を得る」

右上:自主事業コース「マルシェ弦楽四重奏団とアウトリーチをつくる」

左下:ホール入門コース「ダンスワークショップ体験」

右下:共通プログラム「みんなのオルガン『ミューザ川崎シンフォニーホールのパイプオルガン見本市』」

 今年度2度目となるステージラボが「音楽のまち・かわさき」の拠点であるミューザ川崎シンフォニーホール(以下、ミューザ)で開催されました。開講されたのは、「異ジャンルのコラボレーション」をテーマにしたホール入門コースと、「演奏家と一緒にアウトリーチを企画・試演する」をテーマにした自主事業コースです。また、ミューザのシンボルであるパイプオルガンを2時間にわたって堪能する共通プログラムも行われました。

中川賢一のアウトリーチから学ぶ


 今回、両コースで組まれていたのが、ピアニストの中川賢一さんが小学生向けに実施しているアウトリーチを体験するゼミです。内容は、《展覧会の絵》「プロムナード」の演奏に始まり、調律師のご協力のもと、調律師の仕事の説明とともに行われたグランドピアノの解体ショー、実際の楽器を触り、アクション模型を使いながらの楽器説明、楽曲解説付きの演奏、そして最後が中川さん渾身の『キエフの大門』という大人も魅了する決定版。演奏家と楽器と音楽のパッションに触れる45分間を終え、活発な質疑が行われました。

 自主事業コースの受講生から「どうして演奏からスタートするのか」と問われた中川さんは、「先入観なく、クラシック音楽を素で捉えて欲しいから。ピアノ演奏というのはパーソナルなもので、個人的な考えや哲学を伝えているが、音楽には非常に多様性があるから聴いている人がどうと思わなくても伝わるものがあると思う」と回答。その他にも、「アウトリーチによってクラシックを楽しむ人を増やしたいと思っているだけではない。音楽をツールにして大人の生き方を見せている。ピアノは人間の知恵がたくさん詰まった知的な工芸品であり、調律師という職業の人が必要なこともわかってほしい。音楽は感情的な部分を鼓舞する要素があるのですごく怖い。だからこそこう聴きなさいと強制したくはないと考えている」と、アウトリーチの基本的な考え方を伝えていました。

 

異ジャンルのコラボレーションの可能性を探る〜ホール入門コース


 入門コースのコーディネーターは地域創造のリージョナルシアター事業のアドバイザーを務める岩崎正裕さん(劇作家・演出家、劇団太陽族代表)です。受講生は、初日の岩崎さんによる演劇の手法を用いたワークショップを皮切りに、中川さんのアウトリーチ、セレノグラフィカ(隅地茉歩、阿比留修一)のダンスワークショップと、演劇、音楽、ダンスという異ジャンルのワークを体験しました。
初めてダンス・ワークショップを体験した受講生は、「(やったことを)否定されなかったし、小さな動きから大きな動きに移っていったのでやりやすかった」「踊れる人、踊れない人のハードルを感じなかった」「内側で感じていたものを表現する楽しさがあった」「考える時間があまりなくてすぐ動きましょうというのがやりやすかった」と振り返り。隅地さんは、「誰でもフラットに取り組める、競争することがない場にしたい。ダンスは目的ではなく結果的になるもの。無理にどうこうしようとは思っていなくて、Too Muchにならないようにしている」など、的確な言葉で説明していました。
また、ゼミ「音楽+ダンス+演劇~コラボの可能性」では、企画づくりにおいて発想がどのように展開していくのかを知るため、この異ジャンルの3 人で《展覧会の絵》の企画を公開で考えるブレーンストーミングも行われました。《展覧会の絵》には失われた10枚目の絵があった、《展覧会の絵》は高齢者のラブソングだった、ハルトマンとムソルグスキーの対話劇にできるのではないか等、その発想に触れるだけでワクワクする時間となりました。

アウトリーチを企画・試演〜自主事業コー

 

 自主事業コースのコーディネーターを務めたのは、2001年の開館当初から第一生命ホールを運営してきた認定NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク(以下、トリトンアーツ)の田中玲子さん(エグゼクティブ・プロデューサー)と三浦美弥子さん(ディレクター)です。コミュニティ活動に力を入れ、中央区・江東区豊洲地区の幼稚園・保育園・小学4年生などを対象に年40回程度のアウトリーチを実施してきました。
今回はトリトンアーツが実施しているアウトリーチ・セミナー(*)の修了生が結成したマルシェ弦楽四重奏団(内1名客演)が全面協力。受講生は4チームに分かれ、演奏家がひとりずつ加わり、30分のアウトリーチ・プログラムを企画。企画立案からランスルー、試演まで2日間、計12時間でこなすという強行軍でした。受講生たちは事前課題として渡された曲目リスト全14曲とマルシェのアウトリーチのレポートなどを予習し、ワークに臨みました。
 デイサービスの利用者とその家族を想定し、家族の中でコミュニケーションが生まれることを目指したチームは、誰もが歌えるように歌詞を張り出し、耳馴染みのある『荒城の月』や『ソーラン節』を中心にプログラム。また、小学校4年生を想定し、弦楽四重奏について知ってもらうことを目指したチームは、楽器や4つの楽器が重なって音楽をつくるプロセスを丁寧に説明。試演後には忌憚のない意見交換も行われました。ランスルーを含め4時間にわたって演奏し続けていただいたマルシェのみなさんには心からお礼申し上げます。

 

*アウトリーチセミナー
オーディションで選ばれた3名の若手弦楽器奏者が講師の松原勝也さん(ヴァイオリン)と共に弦楽四重奏を組み、プログラムを企画。実際に小学校や幼稚園でのアウトリーチを行い、子どもと音楽の出会いの場を考える実践型セミナー。

 

ステージラボ川崎セッション プログラム表

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●コースコーディネーター
◎ホール入門コース
岩崎正裕(劇作家・演出家、劇団太陽族代表)
◎自主事業コース
田中玲子(認定NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク エグゼクティブ・プロデューサー/理事)
三浦美弥子(認定NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク ディレクター)

ステージラボに関する問い合わせ

芸術環境部 研修担当
Tel. 03-5573-4183

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