地域創造では、これまで実施してきた「公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム事業」と「公共ホール演劇ネットワーク事業」での取り組みを踏まえ、より発展的で多様な企画づくりを行える「公共ホール創造ネットワーク事業」(2カ年事業)を新たに立ち上げ、令和4・5年度にモデル事業を実施します。
この事業は、都道府県等を中心に、県および市町村等の公共ホールが共同・連携して、クラシック音楽や現代ダンス、演劇など複数ジャンルのアーティストを市町村に派遣して地域交流プログラムを実施するとともに、新たな作品を制作して公演を実施するものです。
モデル事業は、神奈川県(神奈川芸術文化財団)を中心に実施し、今年度は地域交流プログラムとして、ダンサー・振付家の柿崎麻莉子さんをリーダーに、県内4市で小学4~6年生を対象としたアウトリーチを実施します(来年度に作品創作と公演を予定)。
アウトリーチプログラムづくり
神奈川芸術文化財団、参加4市、地域創造の担当者が月1回程度のペースで集まり、参加市のアウトリーチの実施状況や課題などの共有から始め、今回のアウトリーチの目的、対象者などを丁寧に検討していきました。
その後、コーディネーターの田村一行さんも加わってアーティストによるプログラムづくりを開始。9月に参加市の担当者、10月に小学生を対象にデモンストレーションを実施し、ブラッシュアップしていきました。また、アーティスト同士のオンラインミーティングを参加市に公開するなど、プログラムの制作過程に参加市が積極的に関われるような場をつくりました。
小学校でのアウトリーチ開始
アウトリーチは、12月から2月にかけて各市で4回ずつ実施。12月には相模原市、小田原市および厚木市で実施され、演劇的な要素として『人魚姫』と『美女と野獣』をモチーフに、ダンスを中心として音楽の要素も入ったプログラムに挑戦しました。
前半は、初めて人間の世界に来た人魚姫をイメージして、太陽の光、自分の手、音楽などさまざまものに「うっとり」するワークを実施。アーティストの言葉に耳を傾け、目だけでなく、耳や手の感触でも「うっとり」を感じ取ろうとする子どもたちの姿が印象的でした。後半は、紙に描いた自分がイメージする野獣を体で表現し、さらに野獣の状態で笑う、泣くなどの感情を表現するワークを行いました。
最後は、3グループに分かれ、一つのシーン(場面)をつくるクリエイションに挑戦。子どもたちから出るアイデアを大切にしながらアーティストがアドバイスをしてつくり上げました。完成した作品を発表することで、自分たちが表現したものが他の人には違うものに見えることを子どもたちも楽しんでいました。
参加した学校の先生たちからは、「自由な表現が得意ではないと思っていた子どもたちが積極的に参加し、クリエイションの場面でも意見を出していた」といった感想も聞かれました。
3月には関係者で今年度の振り返りを行い、今後の参加市の活動や団体間の連携強化などに生かしていきます。来年度はどのような作品が出来上がるか楽しみです。
●令和4・5年度「公共ホール創造ネットワークモデル事業」令和4年度実施体制
◎実施団体
神奈川県(公益財団法人神奈川芸術文化財団)
◎参加市
•相模原市(相模原市緑区役所)
•小田原市(FM小田原株式会社)
•茅ヶ崎市(公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団)
•厚木市(公益財団法人厚木市文化振興財団)
◎アーティスト
•リーダー
柿崎麻莉子(ダンサー・振付家)
•アシスタント
飯森沙百合(ダンサー・振付家)、モテギミユ(ダンサー・振付家)、富岡晃一郎(俳優)
◎監修
長塚圭史(KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)
◎コーディネーター
田村一行(大駱駝艦踏手・振付家)
公共ホール創造ネットワークモデル事業に関する問い合わせ
芸術環境部 栗林・前田
Tel. 03-5573-4055・4076