一般社団法人 地域創造

「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」新規登録アーティスト集合研修 2023・24年度登録アーティストの初研修を開催

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左:岩崎正裕さんによる演劇ワークショップ
右:おんかつOGの新居由佳梨さん、塚越慎子さんを交えてディスカッション
 

 

 地域創造では1998(平成10)年度からオーディションで選考した登録アーティスト(2カ年)をコーディネーターと共に地域に派遣する「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」を実施しています。事業の流れは右頁図のとおりですが、決定したばかりの2023・24(令和5・6)年度登録アーティスト7組11名とコーディネーターが初めて顔合わせする集合研修が10月6日、7日に行われました。
 集合研修の目的は、おんかつについての認識を共有することと、アウトリーチのプログラムをグループディスカッションで考えることです。今回のレターでは、登録アーティストたちが事業実施前にどのような準備を行っているのかがわかる研修の模様をご紹介します。

演劇のコミュニケーションゲームにも挑戦

 まず行われたのが、地域創造のリージョナルシアター事業のアドバイザーでもある演出家の岩崎正裕さんによるワークショップです。参加者が輪になって手拍子を順番に回すといった緊張を解かすためのコミュニケーションゲームに始まり、ペアになって相手を紹介する他己紹介を漫才風に披露したり、「白」「黄」といった色を表す静止画を自分たちの体で表現するなど、これまでクラシックの演奏家が体験したことのないワークの連続でした。
 「最初は演技をさせられるのかと思って構えていたが、自然に楽しめた」「どういう意図があるのかを説明してもらいながらだったので、ワークのつくり方が学べた」「自己紹介も兼ねたワークでは演劇というフィクションを使うので嫌なところを気にせずに自己開示できた」「一緒にワークすることで言葉にしなくてもお互いの性格などがわかってきた」など、人を交流させる演劇ワークショップの魅力を堪能していました。

 

先輩の実体験から学ぶ

 ワークの後、おんかつの事業説明、児玉真・地域創造プロデューサーによるアウトリーチの考え方についての講義が行われました。それを踏まえ、新居由佳梨さん(2012・13(平成24・25)年度登録アーティスト/ピアノ)、塚越慎子さん(2016・17(平成28・29)年度登録アーティスト/マリンバ)を招き、先輩の実体験から学ぶゼミが行われました。
 新居さん:「ホールによってリクエストがあるところ、アーティストに任される部分が多いところなどさまざま。この事業ではアーティストは“お客様”ではないので、担当者の意図を汲み取って、みんなでひとつのものをつくることを心がけている」「学校の先生は子どもたちに“教える”が、演奏家は気持ちなどを音楽にのせて“伝える”ものだと思っている」「今、この音楽を通して何を伝えたいか?ということを具体化できるほど強いと思う」等
 塚越さん:「楽器の演奏は歌と違って歌詞(言葉)がないので、その分、MCが大事。声の高さ、話すスピード、間、言葉の選び方など、勉強をたくさんした。アクティビティは少人数対象なので、会場に入って最初の5分ぐらいで一人ひとりの特徴をとらえ、どの子にどういうタイミングで目線を合わせるかなども考えている」「人間同士が関わることなので、自分を嫌いになられたらどんな音楽も受け入れてもらえない」等
 アーティストとしての揺るぎない軸をもちながら真摯に子どもたちや地域の方々に向き合ってきた先輩たちの一言一言に、おんかつの精神が溢れていました。

 

アウトリーチのプログラムづくり

 今回の集合研修の最後に行われたのが、小学校高学年(4〜6年生)を対象にした45分間のアウトリーチのプログラムを考えるグループ・ディスカッションです。デュオ、カルテットのメンバーもひとりの演奏家として参加し、11名が5つのグループに分かれ、各グループの担当になったコーディネーターと意見交換しながらそれぞれに企画づくりを行いました。初めに、導入として自分のプログラムのメインに据えたい曲を子どもたちに伝えるアプローチを考えるディスカッション、その後、アウトリーチのプログラムを企画するディスカッションが行われました。
 最後に全員が企画を発表し、それぞれの企画についてコーディネーターがコメント。「趣向を凝らして組み立ててあるが、こうしたらこうなるだろうという想定が多い。実際はどうなるかわからない」「要素が多く、少しレクチャー型になっている。もう少し子どもたちが自由に動けるといい」「最後の曲はアーティストとしての演奏にもっとフォーカスしてもいい」「聴く人に何を伝えたいのかをもう少し深掘りして、どういう思いを残したいのかをわかりやすく伝えることが大切」「自分のプログラムを客観視することも必要」などなど、プログラムをよりよくするファシリテートが行われていました。
 公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム事業で小学校でのアウトリーチ経験のあるModétro Saxophone Ensemble(サクソフォン四重奏)の歌頭諒さんは、「グループでアウトリーチを考えるものだと思っていたが、分かれて企画してみてメンバー個人個人の考えていることがよくわかった。“カルテットは家族”と言うが、家族のことを考えずにのびのびと企画できて楽しかったし、話し合わなくてもある程度考えが共有できていることがわかったのは収穫だった」と振り返っていました。
 今後、担当コーディネーターとの打ち合わせを経て、愛知県幸田町、福島県いわき市、茨城県つくば市の協力により実際の小学校でアウトリーチを行う実地研修が予定されています。来年4月の全体研修会では登録アーティストによる公開でのプレゼンテーションも行われますので、ぜひご参加ください。

●2023(令和5)年度おんかつ(導入プログラム)事業スケジュール

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●2023・2024年度「公共ホール音楽活性化事業(導入プログラム)」登録アーティスト

•閑喜弦介(ギター)
•今田篤(ピアノ)
•水谷桃子(ピアノ)
•上田純子(ソプラノ)
•西村悟(テノール)
•カメハ(パーカッションアンサンブル)
•Modétro Saxophone Ensemble(サクソフォン四重奏)

 

●公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ

芸術環境部 永田
Tel. 03-5573-4064
onkatsu[at]jafra.or.jp

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