一般社団法人 地域創造

令和4年度「市町村立美術館活性化事業」スタート

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左:安曇野市豊科近代美術館でのワークショップ「空き箱でカメラオブスキュラ」の様子
右:直方谷尾美術館での展示の様子

「土門拳─肉眼を超えたレンズ─」展を開催

 「市町村立美術館活性化事業(市美活)」の22回目となる巡回展「土門拳記念館コレクション展『土門拳─肉眼を超えたレンズ─』」が、長野県の安曇野市豊科近代美術館を皮切りに5月29日より開幕し、7月17日より福岡県の直方市美術館(直方谷尾美術館)で開催いたしました。この展覧会では、山形県酒田市の土門拳記念館から所蔵作品をお借りし、激動の昭和を独特のカメラアイで切り取り、日本の写真界に大きな足跡を残した写真家・土門拳の代表作を紹介しています。直方谷尾美術館での展示の後は、9月10日より島根県の安来市加納美術館、10月29日より愛媛県の八幡浜市美術館へと巡回します。
 今回のニュースでは、巡回展の開幕に合わせて、市美活のスキームについてご紹介します。

実行委員会形式で巡回展を準備

 市美活は、企画・制作能力の向上、連携の促進、所蔵作品の利活用等を図るため、中核的な美術館からコレクションを借用し、市町村立の美術館が共同で開催する巡回展と、展示内容に合わせたギャラリートークやワークショップ等「地域交流プログラム」を実施するものです。
 巡回展の企画のテーマは、地域創造の美術事業における諮問機関である「公立美術館活性化事業企画検討委員会」(公立美術館館長や学芸員、専門家から構成)と相談し、決定した企画を提示して参加館を募集しています(下図参照)。今回は土門拳記念館から貸出協力を受けることに決定し、それぞれの地域や顕彰作家などが土門拳にゆかりのある4館が参加しました。
 集まった4館は、共同巡回展実行委員会を設立し、コレクションの貸出協力館である土門拳記念館の学芸担当理事、学芸員のお二人に助言をいただきながら、令和3年度から学芸会議を重ね開催に向けて準備をしてきました。

 

●市町村立美術館活性化事業(市美活)スキーム

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小規模美術館の活動の可能性を広げる市美活

 市町村立美術館には、学芸員数、予算面の制約や、収蔵品も幅広く集められていないという課題があり、市美活はこうした課題に向き合うものでもあります。
 令和3・4年度市美活の参加館である直方谷尾美術館の学芸員・市川靖子さんは、「当館としても巡回展自体が初めての試みでしたが、輸送費等の問題で単館ではできない規模の企画となり、貴重な経験になりました。市美活では、準備段階の調査旅費や会議出張旅費も助成対象経費となるので、土門拳記念館へ事前に出張して作品の調査ができたことも、展示プランの構想に役立ちました」と話しています。直方谷尾美術館では、土門拳が福岡県で取材をした『筑豊の子どもたち』シリーズの作品を他館よりも多く展示しました。来館者の中には、被写体となった子どもを知っている方や撮影場所に実際に住んでいた方も見受けられ、懐かしそうに作品を鑑賞する姿もありました。
 市川さんは「展覧会の半券提示で商店街の商品が割引になるなど、地域との協力を促すことができました。また、市役所の協力で駅前に展覧会の横断幕を貼ることができ、効果的な宣伝ができたため、普段の展示よりも来館者が多く、反響も大きいと感じています。展覧会の規模が大きく、県外からも多くの人が視察に来ることで、市役所内部の美術館の現状への認識が高まるといった効果もあると思います。
 展覧会を機に照明器具の不足や設備面の不安など、展示と作品保護に必要な条件が整っていないことを知ってもらえたらいいと考えています」と将来への期待も話していました。

各地の学芸員が協働することで生まれる企画

 市美活に参加することで、人材育成や各地の美術館とのネットワークをつくることもできます。展覧会の準備作業であるカタログの制作や広報、作品の輸送など業務は各館で分担するので、これまで経験のない業務にチャレンジしたり、各館のノウハウを学ぶこともでき、スキルアップの機会になります。展覧会の企画についても、募集する際にテーマや貸出協力館は決まっていますが、企画の詳細を詰めていく際には参加各館で意見を出し合いながら具現化していきます。

 「市美活は初めてだったので事務的にわからないこともありましたが、実行委員会の事務局館である八幡浜市美術館の学芸員がサポートをしてくれて助かりました。普段は福岡県内の美術館としか交流がありませんでしたが、市美活を通じて他県の学芸員と知り合えて、共同で企画を行ったのはとても良い経験になりました」と、市川さんは参加館同士の交流についても話していました。

 開催館の近くへお越しの際は、ぜひ「土門拳展」をご覧ください。
 また、令和5・6年度市町村立美術館活性化事業「熊本県立美術館所蔵 浜田知明展(仮称)」の参加館を現在募集しています(11月30日締切)。熊本県立美術館は、開館当初から郷土を代表する芸術家のひとりとして浜田知明を位置づけ作品を収集してきたため、浜田知明の銅版画と彫刻に関してはほぼすべてを網羅しています。加えて、若き日に制作したデッサンや油彩画も所蔵しているため、熊本県立美術館のコレクションでその画業と生涯をたどることが可能です。ご興味のある館のご参加をお待ちしています。

 

 

●令和3・4年度市町村立美術館活性化事業 第22回共同巡回展「土門拳記念館コレクション展 土門拳─肉眼を超えたレンズ─」
•安曇野市豊科近代美術館(長野県安曇野市) 5月29日~7月10日
•直方市美術館(福岡県直方市)7月17日~ 9月4日
•安来市加納美術館(島根県安来市)9月10日~10月24日
•八幡浜市美術館(愛媛県八幡浜市)10月29日~12月11日
[アドバイザー]
藤森武(土門拳記念館学芸担当理事)
[開催協力館担当学芸員]
田中耕太郎(土門拳記念館学芸員)

 

●令和5・6年度市町村立美術館活性化事業の募集については実施要綱をご確認ください。当財団ホームページからダウンロードできます。
https://www.jafra.or.jp/project/visual-art/01.html

市町村立美術館活性化事業に関する問い合わせ

総務部 高野
Tel. 03-5573-4184

 

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