一般社団法人 地域創造

令和4年度「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」全体研修会報告

 

4mai.jpg

左上:森下真樹さんのワークショップ
右上:おんかつの事例紹介(令和元年度・氷見市)
左下:登録アーティストプレゼンテーション(梅津碧)
右下:登録アーティストプレゼンテーション(石上真由子)

 

 公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)では、実施館の担当者やコーディネーター、登録アーティストが一堂に会する全体研修会を実施しています。コロナ禍で2カ年にわたって通常開催が叶いませんでしたが、今年度は3年ぶりに4月18日〜20日まで対面での通常開催が実現しました。
 19日にトッパンホールで開催されたアーティストのプレゼンテーションは実施館以外の希望者にも公開され、久しぶりに静かな中にも熱気の伝わる研修会となりました。

研修ではワークショップも実施

 研修初日には地域創造会議室を会場にしたコミュニケーション・ワークショップも対面で行われました。今回講師となったのは、公共ホール現代ダンス活性化事業登録アーティストとしての経験をもつだけでなく、地域のホールでさまざまな取り組みを行っている森下真樹さんです。近年ではベートーヴェンの交響曲『運命』全楽章(楽章毎に別の振付家に振付を委嘱した自らのソロ)、『第九』を踊りにして注目されています。
 「2016年に市民が可児交響楽団と踊るという市民参加型事業の振付を行ったときに『運命』を使い、9歳から77歳までの市民が踊っているのを見て感動し、自分でも踊ってみたくなった」という森下さん。こうした経緯を研修参加者に説明するとともに、今回は『第九』を編集した曲を使ったワークショップを行い、簡単な動きから始めて、最後はそれぞれが考えた振りも交えてみんなで踊り切りました。
 令和元年度におんかつを実施した富山県氷見市の後藤和泉さんからの事例紹介では、おんかつ実施後の活動にも話を広げ、長期的な視点で事業の位置づけを考え、継続していくことの大切さを伝えました。OBアーティストからの事例紹介では、酒井有彩さん(ピアノ)、糸賀修平さん(テノール)から、「内容をアーティストにすべて任せるのではなく、まずはこの事業を通して誰に何を伝えたいかを教えてほしい。その地域ならではのプログラムをできるのがおんかつの醍醐味」と語られました。

コロナ禍により登録期間を延長

 2020-2021年度登録アーティストは事業の中止・延期などを踏まえ、登録期間を1年延長。今回初めて参加館の担当者の反応を目の当たりにしながらプレゼンテーションを行いました(昨年度はリモート、一昨年は中止)。思うような日常が送れず、夢を口にできない子どもたちに思いを馳せて、アーティストたちは異口同音に自分が演奏家を志した「夢」をキーワードにメッセージを発信していました。
 コロナ禍でオンラインの歌唱指導にも挑戦したというトップバッターの竹多倫子さん(ソプラノ)は、幼稚園の頃にたくさんの舞台をみたことが夢のきっかけとなったといい、人生の節目で出会った曲や勇気づけてくれた曲でプログラムを構成。
 小学生のときに地元のホールでブーニンの演奏と出会ったことが夢に繋がり、ピアノを弾くことに目覚め、猛練習をして演奏家になったという齊藤一也さん(ピアノ)は、リストの『ラ・カンパネッラ』『愛の夢』でその技量を存分に披露。「僕の体験をみんなに伝え、演奏者としてピアノを目覚めさせて、楽器の魅力をもっと伝えていきたい」と話していました。
 梅津碧さん(ソプラノ)は、リアルな観客を前にその力を存分に発揮し、ソプラノの中でも一番高い音を歌うコロラトゥーラの魅力を伝えていました。「大学生のときにオペラを観て頭蓋骨が震えるほどのショックを受け、それから声楽家を志した。どんなことがきっかけになるか、どこにチャンスがあるかわからない。いろんなことにアンテナを張って挑戦してほしいと」と言い、その気持ちに一番ぴったりだという中島みゆきの『糸』を熱唱しました。
 物語を話しながら演奏するミュージックシアターの活動もしている新野将之さん(打楽器)は、「打楽器の魅力、音を出すことの楽しさを共有したい」と言い、バケツにガムテープを貼っただけの身近な材料を使った大太鼓を演奏し、紙コップなどでつくった小鳥やカエルの鳴き声のする音具を観客に配って合奏。
 子どもの頃からヴァイオリンが好きで、医者になることを夢見て医学部に進んだという石上真由子さん(ヴァイオリン)は「夢はいくつもってもいいし、とりあえずやってできなかったらやめればいい」とエール。同じく医師の勉強をしていたクライスラーに親近感があるといい、『中国の太鼓』と『美しきロスマリン』の2曲を披露しました。
 今年度の事業は秋以降に実施の予定です。コロナの感染状況は予断を許しませんが、感染対策に配慮しながら開催をしていきたいと思っています。詳細は当財団ホームページやレターで発表しますので、ぜひ興味をもっていただければと思います。

令和4年度「公共ホール音楽活性化事業」全体研修会プログラム

p3-01.jpg

 

2020-2022年度公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト

  • 齊藤一也(ピアノ)
  • 石上真由子(ヴァイオリン)
  • 梅津碧(ソプラノ)
  • 竹多倫子(ソプラノ)
  • 新野将之(打楽器)
  • 高橋ドレミ&實川風ピアノデュオ(ピアノデュオ)※今年度は活動休止

令和4年度「公共ホール音楽活性化事業」参加団体一覧(全13団体)

  • 宮城県角田市
  • 福島県白河市
  • 茨城県牛久市
  • 千葉県木更津市
  • 千葉県成田市
  • 山梨県甲斐市
  • 三重県伊賀市
  • 京都府舞鶴市
  • 大阪府東大阪市
  • 広島県海田町
  • 香川県丸亀市
  • 長崎県佐世保市
  • 大分県宇佐市

公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ

芸術環境部 永田
Tel. 03-5573-4064

カテゴリー

ホーム出版物・調査報告等地域創造レター地域創造レターバックナンバー2022年度地域創造レター6月号-No.325令和4年度「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」全体研修会報告