一般社団法人 地域創造

令和3年度「公共ホール現代ダンス活性化事業」事例紹介

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1:市民と創造するダンス公演『舞踏 豊橋妖怪百物語』(2021年11月21日)©萩原ヤスオ
2:『舞踏 豊橋妖怪百物語』クリエーションの様子
3:高校生と一緒に創るダンス公演『Taiwanwan』クリエーションの様子
4:ニヴァンテ『クリスとスマス』(2021年12月19日)

 地域創造では、コンテンポラリーダンスを通した創造性豊かな地域づくりを目指し、アーティストとコーディネーターを派遣する「公共ホール現代ダンス活性化事業(通称:ダン活)」を実施しています。2017年度にはプログラムを大幅リニューアルし、A・B・Cの3つのプログラムを、地域のニーズに合わせた順番で段階的・継続的に実施できる3カ年事業になりました。
 今年度は、登録アーティスト7組が全国14地域で事業を展開しています。リニューアルから5年目となり、Bプログラムでは地元の民話を題材としたダンスを市民と共に創作するなど、画期的な成果も生まれています。今号では、3年目を終えた穂の国とよはし芸術劇場PLAT(愛知県豊橋市)と白河文化交流館コミネス(福島県白河市)、2年目の野々市市情報交流館カメリア(石川県野々市市)の取り組みを紹介します。

地域の民話を題材にした舞踏に挑戦(穂の国とよはし芸術劇場PLAT)

 豊橋駅と直結した穂の国とよはし芸術劇場PLATは、東三河地域における芸術文化の創造・発信・交流拠点として活発な自主事業を展開し、高校生や市民が集う参加型事業にも力を入れています。ダン活では1年目の2017年度に鈴木ユキオさん(Cプログラム)、2年目に大駱駝艦の舞踏手である田村一行さん(Aプログラム)を招き、最終年度の総仕上げとしてBプログラムで田村さんと共に市民参加による舞踏に挑戦しました。
 作品のテーマは「妖怪」。田村さんがダン活で初めて豊橋市を訪れた時のリサーチ中に偶然見つけた書籍『豊橋妖怪百物語』から着想したものです。クリエーションの前に行う現地下見では、民話にまつわる名所を巡って本の著者である内浦有美さんからお話を伺う「豊橋妖怪ツアー」を実施し、イメージを膨らませました。
 7月と11月の2回、合計9日間にわたって行われたクリエーションには、「舞踏に挑戦してみたい」「妖怪に興味がある」など、さまざまな応募動機をもつ20歳代から60歳代の男女12人が参加。本番当日は、出演者自ら練り白粉で顔や手足を白く化粧して妖怪に変身。内浦さんの朗読と、琵琶奏者による生演奏も加わり、満席の会場は妖怪の世界へと誘われました。
 田村さんは、「豊橋は、日常生活と異世界を結ぶ入り口がゴロゴロしている面白い街。原作となる書籍があったこと、その著者と出会えたことが作品にも大きく影響した。舞踏は、身体の見えない部分(どんな思いがそこにあるのか)が身体の動きをつくる。踊りのイメージを言葉で共有しあうことによって、出演者それぞれにとって、自分らしく密度のある踊りに繋がれば」と振り返っていました。
 また、担当の大橋玲さんは、「白塗りした参加者とチラシ用の写真を撮影したり、オンライン稽古を企画したり、工夫・挑戦することができた。参加者やお客さんの反応も演劇とは異なる部分が多く、新しい発見もあった。今後も、市民参加型のダンスを継続していきたい」と確かな手応えを感じているようでした。

高校生と育むコミュニケーションのダンス(白河文化交流館コミネス)

 白河文化交流館コミネスでもダン活3年目の総仕上げとしてBプログラムに取り組みました。担当の中沢千早さんは、「昨年度、Cプログラムで上演した康本雅子さんのレパートリー作品は、コロナ禍ということもあり集客に苦戦したが、康本さんのダンスを若い世代にもっと届けたい」との思いから、引き続き康本さんを招聘し、「対話」をテーマにした市民参加作品を創作しました。
 コミネスでは参加対象者を中高生に絞り、出演者だけでなく公演スタッフも公募しました。担当の佐々木郁哉さんは、「開館5周年を迎え、ホールを訪れる市民が固定化してきた感覚があった。新しい市民と出会いたくて対象を絞ったが、広く公募したときには出会えなかった高校生が参加してくれた。さまざまな立場で公演をつくることを楽しんでもらい、今後も自主的に創作する意識が芽生えたら」と話します。
 また、地域の高校生の活動を支援する「コミュニティ・カフェ EMANON」と連携し、中高生に向けた情報発信に取り組みました。カフェの運営を担う(一社)未来の準備室の青砥和希さんは「市内に大学がなく、高校生は地域で何かに挑戦するイメージをもちにくい。参加を迷う高校生には話を聞き後押しをした」と振り返りました。

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高校生と一緒に創るダンス公演『Taiwanwan』クリエーションの様子

舞台上に客席を設置し、迫力あるダンス公演を実現(野々市市情報交流館カメリア)

 野々市市情報交流館カメリアでは、1年目の2019年度は長井江里奈さん(Aプログラム)、2年目となった今年度はCプログラムで藤田善宏さんを招きました。担当の松田尚子さんは、「コンテンポラリーダンスに馴染みのない地域だったので、市民参加作品を上演するBプログラムを最終目標として、市民の間でダンスの機運が高まるようプログラムを組み立てた」と話します。
 金沢市に隣接するベッドタウンの野々市市は、大学もあることから市民の平均年齢が41.5歳(2020年)と若い世代が多く暮らしているのが特徴です。公演日が12月中旬であったことから、藤田さんは自らのパフォーマンスユニット「ニヴァンテ」のレパートリーの中からクリスマスをテーマに親子で楽しめる『クリスとスマス』を上演作品として提案。また、会場がカメリア姉妹館の文化会館フォルテ大ホール(定員832名)になったことから、観客に間近でダンスを体感してもらうため、舞台上に客席を設置。公演後のアンケートでは「演者の息遣いや額の汗まで見ることができ、迫力いっぱいのステージだった」「言葉が少なくても表情や手などで気持ちが伝わってきて素敵でした」といった感想が寄せられました。
 また、松田さんは、「今回の公演を通して、普段あまり交流のないカメリアスタッフと大ホールの管理を委託しているテクニカルスタッフが一緒に客席や演出について考える機会になった」と話し、市民とホールだけでなく、ホール内の距離感も近づいたダンス公演となりました。


 

 身体表現であるコンテンポラリーダンスは言葉にすることが難しく、市民に事業内容をどう届けるかが課題になることもありますが、各地で工夫を凝らした企画が実施されています。これまでの事例を掲載した事業報告書をホームページで公開していますので、ご参照の上、ぜひダン活をご活用ください。

 

 

●公共ホール現代ダンス活性化事業(通称:ダン活)
地域創造がコンテンポラリーダンスの登録アーティストと専門家のコーディネーターを地域に派遣。コーディネーターのサポートのもと、公共ホールとアーティストが共同で企画した地域交流プログラムや公演を実施する事業。A、B、Cの3つのプログラムを継続して実施することが可能。
•Aプログラム(地域交流プログラム)
4日間で学校や福祉施設等でのアウトリーチ、公募ワークショップを4~6回実施するプログラム。
•Bプログラム(市民参加作品創作プログラム)
全9日間の日程を3日間+6日間など2回に分け、市民参加作品を創作し有料公演を実施するプログラム。また、併せて公募ワークショップを1回実施。
•Cプログラム(公演プログラム)
4日間で登録アーティストのレパートリー作品の有料公演を実施するプログラム。また、併せて公募ワークショップを1回実施。

 

●2021・2022年度登録アーティスト
北尾亘、田村一行、中村蓉、長井江里奈、藤田善宏、マニシア、康本雅子


●公共ホール現代ダンス活性化事業報告書
https://www.jafra.or.jp/about/report/6812.html

公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)に関する問い合わせ

芸術環境部 児島・畑・長瀬
Tel. 03-5573-4077
dankatsu@jafra.or.jp

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