一般社団法人 地域創造

地域創造フェスティバル2021報告

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写真左上:おんかつ支援プレゼンテーション(松本蘭さん)
右上:おんかつセミナー(オンライン)
左下:地域創造事業 ワークショップ体験&レクチャー(吉澤延隆さん&川村葵山さん)

右下:地域創造事業 ワークショップ体験&レクチャー(有門正太郎さん)

感染症対策を行い、2年ぶりに開催

 多くのアーティストと公立ホールの交流の場となっている地域創造フェスティバル。昨年度は新型コロナウイルス感染症により中止を余儀なくされましたが、今年度は感染症対策を行い、規模を縮小して、5月25日、26日に東京芸術劇場を会場に実施しました。全国からの参加が困難であることを踏まえ、シンポジウム、担当課長会議は開催を見送り。また、公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)について学ぶ「おんかつセミナー」はオンラインとし、例年行っている「公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)」の登録アーティスト・プレゼンテーションは10月27日に、としま区民センターで分散開催することとしました。PCR検査など感染症対策にご協力をいただくとともに、開催にご尽力いただきました皆様に心よりお礼申し上げます。

 

※地域創造フェスティバル
地域創造の事業紹介を目的に年1回開催しているフェスティバル。音楽、ダンスのアーティストによる多彩な実演(プレゼンテーション)、シンポジウム、セミナーなどを実施するとともに、財団事業の説明会を開催。アーティスト、全国のホール関係者、専門家が一堂に集い、交流する貴重なプラットフォームとなっている。会期中に都道府県・政令指定都市文化行政担当課長会議を同時開催(今年度はコロナ禍によりプログラムを変更)。

オンラインでグループ・ディスカッション

 おんかつセミナーは、おんかつを実施してきた、あるいはこれから検討したいという地方公共団体やホール担当者と、おんかつコーディネーターをオンラインで繋いで実施しました。全体説明の後、「アウトリーチ事業の継続」「アウトリーチの活用」「広報」「地域間連携」「コンサートのコンセプト」の5つのテーマに分かれてグループ・ディスカッション。各グループにコーディネーターが参加し、議論をファシリテートしました。
 日本クラシック音楽事業協会事務局長の丹羽徹さんがファシリテーターを務めたグループでは、「地域間連携」をテーマに2時間にわたり意見交換。まず、丹羽さんが「音楽事業を地域のためになるようにするには継続して取り組むことが重要。そのための地域間連携について考えたい」と問題提起。参加した掛川市文化財団の宇野芽久美さんは、「子どもたちが気軽に音楽にふれられるように、音楽活動等支援事業として地元アーティストによるアウトリーチを実施している。合併した旧町間の一体感をどう醸成するかという課題があり、このグループに参加した」、また、三芳町文化会館の三田村宗剛さんは、「都心から近く、近隣の市にも文化ホールがある。自治体の壁を越えて沿線のホール同士で連携したいが、担当者の異動などもあり、なかなか継続できない」など現状を共有。丹羽さんは、「地域間連携といっても課題や取り組みは全く異なる。連携するためには相手が何を考えているかなどのリサーチが重要で、それを踏まえて提案するプロデュース力が求められる」と議論を促していました。

 オンラインミーティングでは、同じ施設から複数の職員が参加できるメリットもあり、職員同士がお互いの認識を知り合う機会にもなっていました。

地域創造の事業を体験ワークショップで紹介

 これは、公共ホール邦楽活性化事業、リージョナルシアター事業、公共ホール現代ダンス活性化事業で行われているアウトリーチなどの雰囲気を知ってもらうもので、参加者全員が3つのワークショップを体験しました。
 邦楽活性化事業は、令和元年度に市町村から応募できるプログラムとしてリニューアル。今回は、吉澤延隆さん(箏)と川村葵山さん(尺八)が高松市で実施したプログラムの一部を行いました。箏の弦を叩くなど特徴的な奏法を使う現代曲や尺八の古典曲を披露したほか、参加者にボディパーカッションで『春の海』に参加してもらう体験を通じ、邦楽もリズムに乗って聴くことができるということを伝えました。
 リージョナルシアター事業は、演劇の手法を使い、地域の課題などにアプローチするワークショップを展開しています。今回は事業アドバイザーの岩崎正裕さん(劇作家・演出家)と、派遣アーティストの有門正太郎さん(演出家・俳優)がファシリテートしました。「演劇の本質的な要素は“遊び”。ワークショップでは遊びを通じて参加者の間で分かち合いが生まれるようなコミュニケーションを探る」と岩崎さん。有門さんは想像力を使って部屋の中からいろいろな「形」を探し、さまざまなものに見立てる遊びを提案。参加者は単純なルールからどんどんイメージが広がり、それをみんなで分かち合うことの楽しさを実感していました。
 ダン活事業は3カ年かけて現代ダンスのさまざまな魅力を感じることのできるプログラムで、今回はセレノグラフィカ(隅地茉歩、阿比留修一)のワークショップを体験。「身体は誰もが持っていて触れるもの。遊びながら自分の身体に気づき、自分を大切にすること、自分と同じように他人を大切にすることを伝えたい」という隅地さん。関西人ならではの軽妙なトークを交え、短いワークを重ねて、1曲を踊り切る体験をしました。阿比留さんは、「朝起きるところからすでに動いている。身体を動かさないで生きている人はいない。その動くことがダンスであり、生きていることそのものがダンス。みなさんの人生の中にダンスを感じてもらえたら嬉しい」と締め括っていました。

おんかつ支援アーティスト37組が参加

 今回は、演奏エリアをアクリル板で囲い、客席を離し、演奏家も参加者もマスクを着用し、インターバルの度にアルコール消毒を行い、演奏しながら登場したり、楽器体験を行うといった交流型の取り組みは行わないなど、異例の対応となりました。
 中川賢一さんは、コロナ禍の催しで使うようになったというヘッドセットと携帯用スピーカーを持参。名作絵本『はらぺこあおむし』を投影しながら、演奏をバックに鵜木絵里さんが朗読するという贅沢なアウトリーチプログラムを披露。今年、磯絵里子さんとのいとこデュオ「デュオ・プリマ」が20周年を迎えるという神谷未穂さん。イメージが膨らむという武満徹の『海へ』をアウトリーチの定番曲にしている高知出身のフレンドリーな二人組、泉真由さんと松田弦さん。田村緑さんを加えた6手30指での演奏にチャレンジしたデュエットウかなえ&ゆかり。自由に感じることを体験してほしいと暗闇で能をモチーフにした「舞」を演奏した田中拓也さん。2歳になる息子のぬいぐるみをたくさん持参してそのキャラクターに合わせて弾き比べをした松本蘭さん。圧倒的な歌唱力で感動の『翼をください』を熱唱した村上敏明さん。民族楽器とマッチするというバルトークを瀧村依里さんとコラボレーションしたDual KOTO×KOTO。いつものパレードを封印し、賑やかに明るく全身を使って今だから尚さら心に滲みる音楽の楽しさを伝えてくれたBLACK BOTTOM BRAS BANDなどなど。久々に仲間と演奏できる喜びに溢れたプレゼンテーションが続きました。

 

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左:おんかつ支援プレゼンテーション(中野翔太さん)

右:地域創造事業 ワークショップ体験&レクチャー(セレノグラフィカ)

地域創造フェスティバル2021 プログラム概要

【1日目(5月25日)】
◎おんかつセミナー(オンライン)
[ファシリテーター]おんかつコーディネーター
「アウトリーチ事業の継続」(赤木舞)、「アウトリーチの活用」(山本若子)、「広報」(小澤櫻作)、「地域間連携」(丹羽徹)、「コンサートのコンセプト」(仕田佳経)
◎おんかつ支援プレゼンテーション(東京芸術劇場リハーサルルーム)
[ピアノ]中川賢一
[弦楽器]神谷未穂・松本蘭(ヴァイオリン)、加藤文枝(チェロ)
[管楽器]森岡有裕子(フルート)、田中拓也(サクソフォン)、喜名雅(テューバ)
[声楽]ヴィタリ・ユシュマノフ(バリトン)
[打楽器]塚越慎子(マリンバ)、野尻小矢佳(パーカッション&ボイス)
[その他]松尾俊介(クラシック・ギター)、江崎浩司(リコーダー)、福島青衣子(ハープ)、山本奈央(オカリナ)
[アンサンブル]デュエットゥかなえ&ゆかり(ピアノデュオ)、泉真由×松田弦(フルート&クラシックギター)、アーバンサクソフォンカルテット(サクソフォン四重奏)、Buzz Five(金管五重奏)


【2日目(5月26日)】
◎地域創造事業 ワークショップ体験&レクチャー(東京芸術劇場シンフォニースペース)
[ファシリテーター]公共ホール邦楽活性化事業:吉澤延隆、川村葵山/リージョナルシアター事業:岩崎正裕、有門正太郎/公共ホール現代ダンス活性化事業:セレノグラフィカ(隅地茉歩、阿比留修一)
◎おんかつ支援プレゼンテーション(東京芸術劇場リハーサルルーム)
[ピアノ]新居由佳梨、今野尚美、酒井有彩、中野翔太
[弦楽器]坂口昌優・瀧村依里・早稲田桜
子(ヴァイオリン)、奥田なな子(チェロ)
[管楽器]荒川洋(フルート)、田村真寛(サ
クソフォン)、加藤直明(トロンボーン)
[声楽]糸賀修平・村上敏明(テノール)
[打楽器]大熊理津子・浜まゆみ(マリンバ)
[アンサンブル]Dual KOTO×KOTO(箏デュオ)、ピアノトリオ・ミュゼ(ピアノトリオ)、Quatuor B(サクソフォン四重奏)、BLACK BOTTOM BRASS BAND(ブラスバンド)

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