地域創造では、文化・芸術による地域づくりへの理解を深めていただくため、全国の市町村長を対象とする「市町村長特別セミナー」を実施しています。
今年は、10月29日、30日の2日間にわたり、滋賀県大津市にある全国市町村国際文化研修所(JIAM)との共催で「地域経営塾」が開催されました。その1日目に、文化・芸術によるまちづくりに関する講義とおんかつ支援登録アーティストによるミニコンサートを実施しました。
講義は「アートで地域社会の縁結び」と題し、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授の熊倉純子氏が登壇。熊倉氏は、アートプロジェクトが地域社会にどのような影響、効果をもたらすのかをさまざまな事例とともに解説しました。
大型芸術祭として全国的にも有名な「瀬戸内国際芸術祭」と「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の事例では、開催当初はなかなか地域住民の理解が得られなかったものの、徐々に地域住民の協力を得られるようになったというエピソードが紹介されました。近年では、地域住民が自発的に地域のものを利用してアート作品を創作・展示するようになったり、プロのアーティストの作品に地域住民が参画したりと、芸術祭が地域住民の「創造意欲」を掻き立てる契機となり、アートが地域の連携や協働を推進するプラットフォームの役割を果たしていると熊倉氏は言います。
また、準備段階から地域住民とアーティストがアートプロジェクトを一緒につくり、それぞれが当事者意識をもって取り組んでいる事例として東京都足立区の「まちなかアートプロジェクト」が紹介されました。熊倉氏は地域住民が当事者意識をもって表現を行うことを「共創的表現活動」と位置付けており、理論の面からもアートプロジェクトについて解説しました。アートと地域社会の繋がりについて、豊富な事例と理論の両面から理解を深められる講義となりました。
講義に続いて、地域創造おんかつ支援登録アーティストの廣田美穂さん(ソプラノ)、浅野菜生子さん(ピアノ)によるミニコンサートが行われました。廣田さんは豊富なバリエーションの曲目を歌唱するとともに、おんかつのアウトリーチで子どもたちに向けてその曲を歌う際、どのようなことを伝えたいと思って演奏しているか等を紹介。新型コロナウイルス感染症感染拡大予防のため、参加者に近付くことはできなかったものの、音楽やアウトリーチに対する廣田さんの熱い思いや、楽曲に込められたメッセージが伝わってくるミニコンサートとなりました。
●「市町村長特別セミナー」に関する問い合わせ
芸術環境部 潁川・佐藤
Tel. 03-5573-4185