公立美術館活性化事業における4事業5種類のプログラムについて、平成30・31年度に実施される事業の参加館を募集します。
募集締切:平成29年11月30日(木)
[Ⅰ]平成30年度準備・31年度開催「市町村立美術館活性化事業」
この事業は、地域創造が提示する、公立美術館の所蔵品を活用した共同巡回展を、市区町村の設置する美術館が共同で実施するものです。今回、平成31年度開催の共同巡回展として、「府中市美術館所蔵 ゆかいな創作版画展」(仮称)の参加館を募集します。
描いたイメージを自分で版に彫り、自分で紙に摺(す)った木版画作品が創作版画と呼ばれます。これは1904(明治37)年、雑誌『明星』に掲載された山本鼎《漁師》に始まったとされます。明治末から美術雑誌『白樺』などで西洋近代版画が凄まじい勢いで紹介されて、いよいよ版画熱が高まりました。絵師、彫師、摺師の分業による精緻な伝統的浮世絵系木版画も新版画と呼ばれ、創作版画はこれと競争しながら、さまざまな作品が多くの画家たちによってつくられてきました。
府中市美術館は、広範な創作版画運動のうち、特に“ゆかいな”創作版画作品に着目し、収集を行い、これまで4回にわたって展覧会を開催してきました。主な収蔵作家としては、川上澄生、恩地孝四郎、谷中安規、前川千帆、関野準一郎、浅野竹二などです。版画自体が複数枚作品であり、比較的安価な大衆的美術であることや、版画特有のイメージの簡素化とデフォルメの強調によってより親しみやすい作品である上に、学校美術での実技、木版画年賀状の普及などによって、創作版画は卑近とも言えるほど、最も身近な美術作品となっています。
ただし、優れた創作版画は決して趣味的ではなく、イメージを純化させ、文学的世界に共通し、詩画集の挿絵に本領の一端を覗かせ独特の表現世界を形成しています。多岐にわたる創作版画のうち、着想の豊かさ、柔らかさ、力強さに妙味を発揮する自由なイメージ世界である「ゆかいな創作版画」作品たちが含む「おかしみ」こそ、日本近代美術のひとつの大切な縦軸とも考えられます。この展覧会をきっかけに、地域の創作版画家の作品も追加することで、地元作家の顕彰の場としていただき、さらにその作品によって地域に憩いと笑いが生まれることが期待されます。
この事業では、参加館による実行委員会を結成し、平成31年度に巡回展を開催するほか、準備年度事業として、平成30年度から学芸担当者会議等を行い、アドバイザーの助言のもと、企画の具体化や調査研究、制作実務を分担して進めます。
地域創造は、準備年度・開催年度の2か年にわたる助成に加え、アドバイザーの派遣や制作実務に対する助言等により、事業の実施をサポートします。
◎[Ⅰ]「市町村立美術館活性化事業」参加申し込み方法
参加を希望する市町村立美術館が、直接地域創造に申し込みます(各美術館の設置者である地方公共団体の長の副申が必要です)。なお、参加決定後に共同巡回展実行委員会を設立していただきます。また、事業の参加に当たっては、準備年度に開催される実行委員会・学芸担当者会議への出席にかかる経費等についての予算措置が必要です。
◎創作版画の「おかしみ」 府中市美術館 学芸係長 志賀秀孝
浅野竹二さんの全国の名所絵を含む創作版画を120点ほど所蔵しています。この素晴らしい作家は関西ではよく知られていても、関東では未紹介でいわば無名でした。まだまだ優れた作家が全国におられるのではないでしょうか。
美術作品に描くべきものとは、通常は「美しいもの」と言えますが、ところが下図の《食卓の猫》ではどうでしょう。人間の食卓上に四つ足で上がり、まんまと魚を一匹頂戴し、しめしめと振り返ると、なんとそこには現場の目撃者となった我々(鑑賞者)と目が合って気まずい、といった様子がよくわかります。私たちがこの猫に声をかけるとしたらどうでしょうか?「泥棒猫!」と怒るのか、「お前、今、ものすごくびっくりしているでしょう。右と左の目がずれちゃってるよ」と笑うのか。2つの人格のどちらを選ぶのか、人間に潜む二面性を作家は鋭く問いかけているような気もします。
このように、創作版画には、見るものが勝手なセリフを自由につけることができます。この自由気ままな感性遊びこそ、鑑賞の基本であるべきではないでしょうか。
[Ⅱ-①]平成30年度準備・31年度開催「公立美術館共同巡回展開催助成事業(2か年プログラム)」
[Ⅱ-②]平成30年度開催「公立美術館共同巡回展開催助成事業(単年度プログラム)
3館以上の公立美術館が共同で自主的に企画する、公立美術館の所蔵品を活用した共同巡回展に対し助成します。
「2か年プログラム」は、平成30年度に企画の具体化や調査研究、出品交渉やカタログ編集等の準備作業を行い、平成31年度に巡回展を開催する事業を対象とし、準備年度150万円、開催年度2,000万円を上限に助成します(なお、開催年度助成金については、決定額の50%までの前金払い請求が可能です)
「単年度プログラム」は、平成30年度に開催される共同巡回展について、A.作品借用・展示関連経費への助成と、B.カタログ作成経費への助成のどちらかをご選択いただき、A.については500万円、B.については300万円を上限に助成します。
◎[Ⅱ-①]「公立美術館共同巡回展開催助成事業(2か年プログラム)」申請方法
・準備年度:各参加館が申請します。申請書類一式を代表となる館が取りまとめ、直接地域創造へ提出してください(各美術館の設置者である地方公共団体の長の副申が必要です)。なお、助成決定後に実行委員会を設立していただきます。
・開催年度:準備年度に助成決定を受けた共同巡回展実行委員会より申請します。
◎[Ⅱ-②]「公立美術館共同巡回展開催助成事業(単年度プログラム)」申請方法
各参加館が申請します。申請書類一式を代表となる館が取りまとめ、直接地域創造へ提出してください(各美術館の設置者である地方公共団体の長の副申が必要です)。なお、助成決定後に実行委員会を設立していただきます。
[Ⅲ]平成30年度実施「公立美術館共同巡回展企画支援事業」
2館以上の公立美術館による、「公立美術館共同巡回展開催助成事業」の申請に向けた、企画内容の検討や調査研究等の取り組みを支援します。地域創造は学芸担当者会議の開催や調査活動のための経費に対し、100万円を上限に助成するほか、アドバイザーの派遣、会議室の提供、他の参加館募集の告知等による支援も行います。
[Ⅳ]平成30年度実施「公立美術館共同地域交流プログラム助成事業」
2館以上の公立美術館が共同で企画する、公立美術館の所蔵品を活用した地域交流プログラムの実施に対し、100万円を上限に助成します。参加館や他の公立美術館のコレクションを活用した展覧会(異なる展覧会も可)に関連し、各館の展示内容やテーマ(作家、素材、技法、様式、モチーフなど)をもとに自主的に企画・実施される地域交流プログラムが対象です。
◎[Ⅲ]「公立美術館共同巡回展企画支援事業」および[Ⅳ]「公立美術館共同地域交流プログラム助成事業」申請方法
各参加館が申請します。申請書類一式を代表となる館が取りまとめ、直接地域創造へ提出してください(指定管理者制度を導入している施設の場合に限り、設置者である地方公共団体の長の副申が必要です)。なお、実行委員会の設立は必要ありません。
●「公立美術館活性化事業」に関する問い合わせ
総務部 高野
Tel. 03-5573-4143
●各事業の詳細については、実施要綱をご確認ください。各実施要綱および申請書類は、当財団のウェブサイト
http://www.jafra.or.jp
→「様式箱」よりダウンロードできます。