平成28年度市町村立美術館活性化事業「ポール・デルヴォー版画展.幻想のヴィーナスたち.」が、全国3地域で開催されました。17回目となる今回の共同巡回展では、姫路市立美術館の協力のもと、所蔵作品約60点の展示が実現しました。
ポール・デルヴォー(1897.1994)は、ベルギーを代表するシュルレアリスムの画家です。古代神殿や駅舎を舞台に、つぶらな瞳の女性たちが、まどろみ、さまよい歩く、まるで白昼夢のような世界は、観るものの心の奥底に強く焼き付く不思議な魅力をもっています。姫路市立美術館はベルギーの近代美術を作品収集の柱としていますが、なかでもデルヴォーは最大のコレクションで、生涯に制作した版画の大半を網羅する約130点を所有しています。今回は、そのなかから厳選した作品を通して、彼の夢幻の世界を各地の多くの方々に楽しんでいただくとともに、日本とベルギーの外交樹立から150年を数える記念の年に、ベルギー文化への関心を一層高めることに繋がったのではないでしょうか。
本事業では、地域創造の提示した企画案を、開催各館の学芸員がアドバイザーの助言のもと、学芸会議等で議論を重ねながら具体化していきます。今回は開催3館が協力し、それぞれの得意分野を生かしてアイデアを出し合い、単館開催では得難い充実した内容とすることができました。また、会場掲出パネルやバナーをはじめ、展覧会の魅力を伝える広報印刷物や図録にも力を入れ、デザイナーを立ててトータルにデザインされたクオリティの高いものを実現。ポスターやチラシを各館異なるデザインにしたほか、図録を三方金などの凝った製本にするなど、展覧会に対する担当学芸員の意気込みが感じられました。
さらに、この事業の特徴のひとつが、企画内容に即した地域交流プログラムを実施することです。3館共通では、記念講演会やギャラリートークのほか、黄・赤・青の版の掛け合わせによる刷りと、1枚の紙を折って64ページのノートをつくる「印刷博物館によるカラー印刷&製本体験!」、デルヴォーと同じくベルギー出身で同時代に生きた作家メーテルリンクの名作『青い鳥』を文学座俳優が朗読する会を催しました。単独事業として、大垣市スイトピアセンター アートギャラリーでは、「簡単!リトグラフ体験」を実施し、アルミホイルやコーラなどの身近な日用品を使って、理解しづらい版画技法の原理を実際の制作を通して楽しみながら理解するワークショップを行い、好評を博しました。
なお、平成31年度の共同巡回展の参加館募集開始は、今年6月末を予定しています。地域創造レターおよび当ウェブサイトをご確認の上、奮ってご参加ください。
●平成28年度市町村立美術館活性化事業「ポール・デルヴォー版画展~幻想のヴィーナスたち~」
[主催]第17回共同巡回展実行委員会ほか
[特別協力]姫路市立美術館
[会場]大垣市スイトピアセンター アートギャラリー(岐阜県大垣市/2016年9月10日~10月16日)、市川市芳澤ガーデンギャラリー(千葉県市川市/10月22日~11月27日)、田原市博物館(愛知県田原市/12月3日~2017年1月22日)
[助成](一財)地域創造
●公立美術館活性化事業に関する問い合わせ
総務部 吉崎・三浦
Tel. 03-5573-4053