一般社団法人 地域創造

平成28年度「リージョナルシアター事業」報告

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写真
1:有門正太郎さんによる遊びを考えるワークショップ(春日井市)
2:ごまのはえさんによるコミュニティセンターでのワークショップ(大野城市)
3:田上豊さんによる屋外でのワークショップ発表の様子(川根本町)
4:福田修志さんによる小学校でのワークショップ(尼崎市)

地域創造では、演劇の表現者(演出家)を公共ホールに派遣し、小学校へのアウトリーチや演劇の手法を使ったワークショップ(以下、WS)を実施する「リージョナルシアター事業」を実施しています。今年度は、静岡県川根本町(川根本町文化会館)、愛知県春日井市(文化フォーラム春日井/春日井市民会館)、兵庫県尼崎市(あましんアルカイックホール)、福岡県大野城市(大野城まどかぴあ)、熊本県長洲町(ながす未来館)の5地域で開催します。今回は、すでに終了した4地域の模様についてご紹介します。

 

●カフェに集う高齢者に着目~大野城まどかぴあ
 2016年に20周年を迎えた大野城まどかぴあは、大小ホール・図書館・生涯学習センター・男女平等推進センター等を有する多目的複合施設です。ホールでは、地域の演劇人と連携した事業やプロデュース公演を手がけてきましたが、「多様な市民が行き交う施設として、これまでアプローチしていない対象に向けた取り組みを考えたい」(ホール担当者・飯田愛弓さん)と、リージョナルシアター事業に参加しました。
  派遣アーティストは、音楽や舞台美術・衣裳などのビジュアルを生かした演劇づくりで定評のあるニットキャップシアターを主宰するごまのはえさんです。アーティストと相談しながら、小学校へのアウトリーチのほか、市役所職員や高齢者など多様な対象に向けたアクティビティが行われました。
  なかでもユニークだったのが、コミュニティセンター(公民館)で毎月1回開催されているカフェに集う“高齢者仲間”を対象にしたWSです。リージョナルシアター事業では現地下見などを含めて3回のアーティスト派遣が行われますが(事業の流れ図参照)、1回目からアーティストと担当職員がカフェに参加して交流し、3回目の派遣でWSを行いました。ごまさんは、「カフェの空間と時間を壊すようなことはしたくない」と、始まりと終わりの時間を設定せず、日常の時間の流れの中に溶け込むWSになるよう工夫しました。
  WSの内容は、物語に合わせて民族楽器を使って音づくりをするという、誰もが参加しやすいものです。最初は、東南アジアやアフリカの珍しい楽器を手に取りコーヒーを飲みながら団欒していた高齢者の方々が、自然に「この楽器はどうやって演奏するの?」と質問。いつしか“雨”“踏み切り”“花火”といったお題に対して、いくつものテーブルで音づくりのWSが始まっていました。「ホールのロビーなどでもこうした試みをやってみたい」と飯田さん。今回のWSは、ホールが新たな取り組みを始めるきっかけになったのではないでしょうか。

 

●関係者の理解を深める取り組みも重要
 文化フォーラム春日井/春日井市民会館に派遣されたのは、北九州を拠点に活躍する俳優で演出家の有門正太郎さんです。リージョナルシアター事業の実施が夏休み期間に重なったことから、ホールを会場にしたアクティビティが行われました。子どもたちが創意工夫しながら遊びを考えるプログラムや、不思議な形を探しながらホール施設を探検することで非日常的な風景を発見するプログラムなど、演劇表現のベースにある人と一緒に想像力を使って遊ぶWSが展開されました。
  SLが走る大井川鐵道で有名な人口7千人余りの川根本町に派遣されたのは、教育現場でのWSや参加型演劇を積極的に行っている田上豊さんです。その経験を生かし、高校生や一般を対象とした3つの公募型WSに加え、学校教員向けの研修も行われました。アウトリーチを継続するには受け入れ先の教員の理解が不可欠ですし、演劇WSは教員のコミュニケーションスキルの向上や人の見方に対する想像力を広げることにも繋がります。「今後も教員研修に演劇を取り入れることを提案したい」と担当職員の服部了士さん。
  あましんアルカイックホールでは、長崎を拠点にしたF’s Companyを主宰する福田修志さんが、高校演劇部や合唱団を対象に演劇的手法を用いたコミュニケーションWSを行いました。また、小学校へのアウトリーチでは、教育委員会、行政等の担当者を招き、演劇WSを学校教育の現場で活用している現場を視察していただきました。「外の方々だけではなく、ホール職員にとっても演劇WSの魅力と意義を知る素晴らしい体験になった」とホール担当職員の山田勝夫さん。演劇の可能性を関係者にインリーチする良い機会になったのではないでしょうか。

 リージョナルシアター事業は、地域のニーズを踏まえ、派遣アーティストの想像力・発想力・人間力という演劇のもつ力を活用し、地域コミュニティの繋がりを活性化していく事業です。2月には、本年度最後となる事業が、富士見市文化会館キラリ☆ふじみ芸術監督でもある演出家の多田淳之介さんによって熊本県長洲町で実施される予定です。子どもたちを対象にホールを日常的な“遊び場”として機能させるプログラムが企画されていますので、お近くの方はぜひお立ち寄りください。
  なお、平成30年度の参加団体募集につきましては、後日詳細をお知らせいたします。多くの応募を心よりお待ちしております。

 

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●平成28年度リージョナルシアター事業
◎参加館
・川根本町文化会館(静岡県川根本町)
2016年7月2日、3日/10月1日~3日/10月7日~11日
・文化フォーラム春日井/春日井市民会館(愛知県春日井市)
7月14日、15日/8月9日~14日
・あましんアルカイックホール(兵庫県尼崎市)
6月15日、16日/10月5日~8日/11月28日~12月1日
・大野城まどかぴあ(福岡県大野城市)
5月9日、10日/6月7日~10日/11月8日~11日
・ながす未来館(熊本県長洲町)
9月1日、2日/2017年2月4日~7日/2月25日~28日
◎派遣アーティスト
・多田淳之介(演出家・俳優/東京デスロック主宰)
・田上豊(劇作家・演出家/田上パル主宰)
・有門正太郎(演出家・俳優/有門正太郎プレゼンツ代表)
・福田修志(劇作家・演出家/F's Comp any代表)
・ごまのはえ(劇作家・演出家・俳優/ニットキャップシアター代表)
*アドバイザー
・内藤裕敬(劇作家・演出家/南河内万歳一座座長)
・岩崎正裕(劇作家・演出家/劇団太陽族主宰)

 

●リージョナルシアター事業に関する問い合わせ
芸術環境部 戸舘・小林
Tel. 03-5573-4124

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