一般社団法人 地域創造

愛知県刈谷市 刈谷市総合文化センター 刈谷市制65周年記念事業 市民劇『はるかにつながる空の下』

 2015年12月20日、刈谷駅に隣接した刈谷市総合文化センター・大ホールで市制65周年記念事業の市民劇『はるかにつながる空の下』が上演された。刈谷の町を舞台に、地元の電気メーカーに勤めるOLが刈谷市制65周年の記念イベント実行委員会に参加して新たな一歩を踏み出すという、歌あり、生演奏あり、バレエ教室の子どもたちの踊りありの市民劇だ。出演した約45人の市民は客席を埋めた沢山の観客から温かい拍手を浴びていた。

 同公演の企画・制作にあたったのは「文化工房かりや」。これまでも自主事業の一翼を担ってきた市民グループだ。市教育委員会生涯学習部文化振興課の西川瑛輔主査は、「同館は2010年に誕生しましたが、開館記念事業の音楽劇『万燈の輝く夜に』にスタッフとして意欲的に関わっている市民ボランティアの皆さんに今後も活躍していただきたいと思い、翌年からホールの文化ボランティアを募集することにしました。10年度から指定管理者のKCSN共同事業体(*1)による運営に移行したので、応募してきた約40人の市民で「文化工房かりや」を結成してもらい、同館の育成事業として予算を付け、市民による年1回の公演プロデュースを活動目標にして研修なども行いました」と話す。

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市民劇『はるかにつながる空の下』
写真提供:刈谷市総合文化センター

 結成10カ月後には文化工房で隣市在住のセミプロのタップダンサーを招いてタップダンス公演を実施する。初回は制作の真似事をやるので精一杯だったというが、次年度の名古屋芸大と連携したミュージカル公演ではコーラスやダンスの場面に市民を起用。13年度には初めて企画から取り組んだ市民公募による脚本の朗読劇、14年度には地元の刈谷東高校の先生に脚本・演出を依頼した市民創作劇公演と、メンバーの発案による企画を実現しながら力を蓄えていった。
  そして、結成5年目。これまでの経験を活かしてプロデュースしたのが、脚本・演出、音楽、振付にプロを招いた今回の市民劇だった。会場もこれまでの小ホールから大ホールに移し、昨年から刈谷のまちを知るためのワークショップやフィールドワークを実施。公演を告知する音楽イベントや、フィールドワークで撮影したまちの写真の展示など関連イベントも行った。
  現在、文化工房のメンバーは34人(約3分の2が女性)。その活動は公演の企画・制作にとどまらず、情報誌の編集、エントランスの無料イベント、FM番組制作にまで大きく広がっている(*2)。代表を務める磯部洋子さんは、「年1回の公演だけでは物足りないと、12年から2カ月に1回、市内の演奏団体などが出演するホールのエントランスを使った“アールマルシェ(芸術市場)”を始めました。FM部会も地元FMで広報したいね、という話から生まれました。私たちのルールは、言い出した人がアクションを起こすこと(笑)。部会も自然発生的に立ち上がってきました」と言う。
  西川主査は、「文化工房かりやが出来るまで、刈谷には市民が劇場に関われるような場がありませんでした。施設には小さな専用ルームしかありませんし、予算規模も小さなものですが、そういう思いをもった人の受け皿が出来た結果、想像していた以上に活発な活動が生まれた。私たちの仕事は、メンバーが活動しやすくなるよう指定管理者とともに支援することだと思っています」と話す。
  磯部代表は、「私たちに求められているのは市民目線ということ。市民目線で考えて、例えば、アウトリーチの訪問先を増やすなどこれからもいろいろ実現していければと思います。個人的には、センター内にある生涯学習施設なども使って親子でコーラスやダンスなどに参加できる講座も企画してみたい」と意欲を覗かせていた。
  となると、アウトリーチ部会や生涯学習部会などが生まれてくるのかもしれない。活動をやらなくなれば部会は廃止し、言い出しっぺがいれば部会が生まれ活動が生まれる。そういう市民の身の丈に合ったフットワークの軽さが文化工房が活性化している秘訣なのかもしれない。

(ライター・田中健夫)

 

●刈谷市制65周年記念事業
市民劇『はるかにつながる空の下』
[脚本・演出]川村ミチル(劇団そらのゆめ)
[主催]文化工房かりや、刈谷市、刈谷市教育委員会、刈谷市総合文化センター
[会期]2015年12月20日
[会場]刈谷市総合文化センター

●刈谷市総合文化センター
旧市民会館の建て替え施設として2010年4月にオープン。市民ホール(大ホール1,541席、小ホール282席、リハーサル室2室、楽屋9室)と中央生涯学習センターからなる複合施設。年に6本程度の観賞型自主公演を行うとともに、文化工房かりやを活用した事業や若手演奏家を起用したアトリウムコンサートなどを育成事業として実施。なお、センター内には文化工房かりやのための部屋もある。

*1 KCSN共同事業体概要
(株)共立を中心とした4社の共同事業体。共立が事業企画と舞台の管理運営、(株)コングレ中部支社が受付や生涯学習講座運営、サンエイ(株)が建物維持管理、(株)西三河エリアワンが地元密着イベントの実施などを担う。

*2 文化工房かりやの部会文化工房かりやでは、①事業企画部会(舞台公演の企画・実施)、②運営部会(各会議の進行・記録、他館との交流)、③広報部会(ブログ、情報誌、公演チラシの作成)、④フロント部会(会館自主事業時の会場案内や受付)、⑤アールマルシェ部会(エントランスを使った無料イベントを企画運営)、⑥FM番組制作部会(コミュニティFM用の広報番組制作)を置く。

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