今回は「地域の公立文化施設実態調査」のうち、「美術館」について主な結果を紹介する。なお、今回調査の対象となった「美術館」638施設のうち、施設側から有効回答があったのは608施設となっている。
施設概況
608施設の内訳を設置主体別に見ると、都道府県が84施設で全体の13.8%、政令市が40施設で6.6%、市区町村が483施設で79.5%、広域行政が1施設で0.2%となっている。平成19年調査との比較では、都道府県、市区町村が減少する一方、政令市は34施設から40施設へと増加した。管理運営形態別に見ると、指定管理が212施設(35.0%)、直営が394施設(65.0%)で、直営が全体の3分の2近くを占めている。平成19年度調査と比較すると、指定管理が31.6%から35.0%となり、若干比率を高めている。また、指定管理の中では、92施設(全体の15.2%)が公募、120施設(19.8%)が非公募で非公募の割合が高くなっている[表1]。
近年増えている夜間延長については、都道府県、政令市の施設が高い割合で実施し、全体の19.5%が平均20時まで開館していた[表2]。
施設の運営状況(スタッフ数・館長・教育普及担当)
美術館のスタッフの平均合計人数は8.3人で、その内訳は、学芸員が2.6人、学芸員以外の事業系スタッフが2.0人だった。設置主体別で見ると、施設規模の大きい都道府県が平均合計が20.2人と多く、次いで政令市の13.9人、市区町村の5.7人だった。平成19年度調査の平均合計9.1人と比較すると全体にスタッフ数が減少していることが明らかとなった[表3]。
館長の52.6%が非常勤であり、行政職が39.0%で最も多く、学芸専門職19.4%、教育職6.6%、研究職3.1%を大きく引き離した[表4]。また、教育普及担当者は、「専門セクションがある」「専門の担当者がいる」を合わせて全体の13.3%だった。設置主体別に見ると、都道府県が39.3%、政令市が35.9%であるのに対し、市区町村は6.9%と極めて低かった[表5]。
自主事業の実施
平成25年度の自主事業の実施率は全体の95.4%で、その内、「常設展と企画展の両方を実施」が69.0%、「企画展のみ実施」が20.8%、「常設展のみ実施」が5.5%だった[図1]。
企画展の形態を見ると、「美術館の自主企画」が87.3%、「収蔵品を活用した企画展(常設展とは別)」が59.3%だった[表6]。企画展の実施件数は、年間平均5.3件、総開催日数は平均195.9日、総入場者数は平均33,019.8人で、総入場者数が最も多かったのは政令市施設の112,164.2人だった[表7]。企画展のテーマは、「地域の文化・産業・伝統をテーマにした」が51.1%と最も高く、次いで「子ども(親子)を対象とした普及型」が37.1%だった[表8]。
展覧会以外の自主事業で実施率が最も高いのは「ギャラリートーク」の75.8%で、次いで「ワークショップ」(63.6%)、「講演会」(61.6%)、「学校向け団体鑑賞」(55.8%)となっている。また、「他ジャンルのイベント(音楽)」(44.6%)や「出前授業・ワークショップ」(学芸員が42.6%、アーティストが28.1%)も高い割合で実施されていた。また、「地域と関わって展開するアートプロジェクト」も14.7%実施されていた[図2]。
収蔵品の情報管理と公開
収蔵品の情報管理状況を見ると、全体の25%が「紙媒体のみ」で、「一部を電子媒体で管理」(53.9%)、「電子媒体で管理」(21.1%)を合わせると75.0%が電子媒体を活用していた。特に都道府県で「電子媒体で管理」している施設が44.6%と高い割合になっている[表9]。
収蔵品のWebでの情報公開状況を見ると、設置主体別で大きな差があり、都道府県施設がテキスト情報を「Webで全作品を公開」(10.3%)、「一部公開」(60.3%)、画像情報を「Webで全作品を公開」(1.5%)、「一部公開」(74.2%)と最も進んでいることが明らかになった[表10]
表1 美術館の概況(設置主体調査結果)
表2 夜間延長
表3 スタッフ数
表4 館長の雇用形態[%]
表5 教育普及担当者[%]
図1 自主事業(展覧会)の実施状況 [有効回答数:542]
表6 企画展の形態[複数回答][%]
表7 企画展の実施状況
表8 企画展のテーマ[複数回答][%]
図2 展覧会以外の自主事業の実施状況 [複数回答][ 有効回答数:484]]
表9 収蔵品の管理方法[%]
表10 収蔵品のテキスト情報のWeb公開状況[%]
●平成26年度「地域の公立文化施設実態調査」調査概要
◎調査対象
公立文化施設のうち、「ホール(専用ホール、その他ホール)」、「美術館」、「練習場・創作工房」およびそれらを含む「複合施設」と、施設の設置団体にあたる地方公共団体。
◎調査時期
平成26年9月~11月
◎調査方法
全国の地方公共団体の文化振興ご担当者に、当該団体が設置主体となっている調査対象施設を記入する「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」、「施設調査票」を配布。当該団体において「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」の記入および「施設調査票」の各施設への配布と取りまとめをしていただいた。
なお、今回は一般財団法人地域創造の独自調査として行い、前回の調査(平成19年度)とは配付・回収方法が異なる。
◎調査回収数
・館からの施設調査票の有効回収数
3,416館 延べ3,772施設
・地方公共団体票の有効回収数
1,623(都道府県47、政令市20、市区町村1,556、広域行政2)
*「地域の公立文化施設実態調査」報告書は、地域創造ウェブサイトに掲載しており、閲覧・ダウンロードが可能です。
https://www.jafra.or.jp/library/report/26/index.html
●調査研究に関する問い合わせ
芸術環境部 宇野・角南
Tel. 03-5573-4066