一般社団法人 地域創造

地域創造フェスティバル2015報告

地域創造フェスティバル2015報告
2015年8月4日~6日

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写真
左上:共通シンポジウム「文化・芸術を育む運営のあり方を考える─指定管理者制度の効果的な導入─」
右上:ダン活セミナー「ダン活のススメ~ダンスと幸せのメカニズム~」(講義する前野隆司さん)
左下:おんかつ支援プレゼンテーション(高見信行さん[トランペット])
右下:おんかつ支援プレゼンテーション(Dual KOTO×KOTO[箏デュオ])

 8月4日から6日まで、東京芸術劇場を会場に「地域創造フェスティバル2015」が開催されました。このフェスは、おんかつ支援アーティストによるプレゼンテーションやセミナーなどにより地域創造の事業を広く紹介するとともに、ネットワークづくりの場となることを目的としています。また、平成28年度のダン活参加館を対象にした全体研修会と都道府県・政令市課長会議も同時開催され、アーティスト、コーディネーター、自治体職員、公立ホール職員などの活発な交流が行われました。

 

●指定管理者制度を総括する
 幕開けで行われたのが、指定管理者制度をテーマにした共通シンポジウムです。公立ホールのコンサルティングなどに携わっている空間創造研究所代表の草加叔也さんによる基調講演では、管理委託制度の劣化から指定管理者制度が生まれた経緯や、「地方自治法244条2」に全982文字で記された制度の内容について確認するところからスタート。「公おおやけの施設の設置の目的を効果的に達成するため」に制度を導入するはずが、経費の縮減が目的とされている現状に対し、平成22年には総務省から「懸念」が示され、25年には文部科学省が「劇場、音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針」の中でその適切な運用について定めたことなど、原典を引用した丁寧な解説が行われました。
  草加さんは、「『劇場、音楽堂等の活性化に関する法律』第1条には『心豊かな国民生活及び活力ある地域社会の実現並びに国際社会の調和ある発展に寄与することを目的とする』と定められている。その目的に立ち返った議論が必要だ」と問題提起されました。
  それを受けたシンポジウムでは、現場で指揮を執る松井憲太郎さん(富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ館長)、大久保充代さん(八尾市文化会館プリズムホール館長)、真田弘彦さん(りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館事業企画部部長)が登壇。松井さんは、「文化芸術振興基本法」の前文を引用し、「文化芸術は『人々の心のつながりや相互に理解し尊重し合う土壌を提供し、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するもの』であり、『文化芸術活動を行う者の自主性を尊重』するとしている。そのためには運営者と行政が水平なパートナーシップを構築するとともに、市民との関係構築をしていくことが重要だ」を提示。
  公募で指定管理者に選定された公益財団法人八尾市文化振興事業団の大久保さんは、体質改善が行われて実績が向上したが制度運用上のリスクが指定管理者側にあると指摘し、具体例を上げて紹介。また、真田さんからは公益財団法人新潟市芸術文化振興財団が非公募指定になっている点について、選定委員会を設けて外部委員による厳しい中間評価を実施することにより市民への説明責任を果たしているという報告がありました。短い時間ながら指定管理者制度を総括した内容で、今後の参考になったのではないでしょうか。

 

●幸福学からの「ダン活のススメ」
 ダン活全体研修会の一環として、公開によるダン活セミナーも開催されました。講師は『幸せのメカニズム』の著者である幸福学研究の第一人者で、黒沢美香さんが指導する踊る大学教授陣「ミカヅキ会議」のダンサー、前野隆司さん(慶應義塾大学大学院教授)です。ロボット研究者だった前野さんは、「幸せの要因がわかれば、ロボットを設計するように幸せを追求できるのではないか」と幸福学を志したそうです。
  もの、金、地位のような「地位財」は得ると嬉しいが幸せ度は長続きせず、健康、自由、愛情のような「非地位財」は幸せ度の持続性が高いという基本から始まり、アンケート調査で明らかになった幸せの4要因「自己実現と成長」「つながりと感謝」「前向きと楽観」「独立とマイペース」について紹介。また、美しいものなど創造に携わっている人の幸せ度は高いという傾向も紹介し、人と比べないで、人と繋がって創造するコンテンポラリーダンスに携わっている人は幸せ度が高いと分析されていました。
  講義の後、ダン活の事例としてひたちなか市文化会館(派遣アーティスト:赤丸急上昇)と高知市文化プラザかるぽーと(同:田村一行)の取り組みが紹介されました。かるぽーとの担当者の筒井亮太さんは、「踊ってなくても踊りになる、動いてなくても踊りになる、道具を使わなくても体験できる。これがコンテンポラリーダンスの特性だと思う。芸術文化に親しみのない人にその楽しみを伝えるきっかけづくりをするにはコンテンポラリーダンスが一番向いている」と話していました。

 

●アーティストの多彩なプレゼン
 今年も59組ものアーティストが各20分のプレゼンテーションを行いました。照明を消してチェロ独奏の傑作と言われる黛敏郎作曲『文楽』を演奏した奥田なな子さん、被災地での演奏のために中川賢一さんが編曲した力強い『アメイジング・グレイス』を演奏した神谷未穂さん(ヴァイオリン)、『くるみ割り人形』の男女のステップ(パ・ド・ドゥ)のために作曲された題名のない曲を披露した田村緑さん(ピアノ)、エルガー『朝の歌』など仕上げたばかりの新曲でプレゼンテーションした礒絵里子さん(ヴァイオリン)等、ベテランらしい選曲でアピールしていました。また、平成28年度ダン活登録アーティスト6組によるデモンストレーションも行われるなど、多彩なアーティストと出会える3日間となりました。

 

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平成27・28年度ダン活登録アーティストプレゼンテーション。
左:田畑真希さん(写真左から3人目)、右:田村一行さん

地域創造フェスティバル2015 プログラム

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