第15回地域伝統芸能まつり
今年のテーマは「咲う(わらう)」
地域創造では、地域の重要な資源である地域伝統芸能の保存・活用・継承を支援しています。なかでも、全国の地域伝統芸能と古典芸能が一堂に会し、NHKホールで日頃の成果を披露する「地域伝統芸能まつり」は、継承者の励みとなる取り組みとして高く評価されています。第15回となる今年は、2月21日(土)、22日(日)に開催し、「咲う(わらう)」をテーマに全国10の地域伝統芸能と2つの古典芸能をご紹介します。
プログラムの詳細は下記のとおりです。
これまでも「地域伝統芸能まつり」では、東日本大震災で伝統芸能の宝庫である東北地方が大きな被害を受けたことから、被災地の芸能を取り上げてきました。今年は岩手県から、紫波町の「山屋の田植踊」が登場します。頭に冠った花笠を激しく回転する「笠振り」の妙技を含め、1年の稲作過程を歌と踊りで演じます。
総称「おててこ舞」として親しまれている「根知山寺の延年」(新潟県糸魚川市)や2日目のオープニングを飾る「明神ばやし」(福井県越前町)では、子どもたちが登場し、可愛らしく微笑ましい姿を披露します。「咲う」のテーマにふさわしく、笑顔の花を咲かせてくれる演目です。
また、第1回以来14年ぶりの出演となる東京都23区からは、荒川区の「素盞雄神社の天王祭」が登場します。2本のみの担ぎ棒を左右に激しく振るエネルギッシュで迫力ある神輿が、祭りのクライマックスを盛り上げます。
このほかにも、北海道からは唄・笛・太鼓・三味線などで囃子をとりながら餅をつく「江差餅つき囃子」(江差町)、沖縄からは「狂言」と冠されるような滑稽なセリフ回しが見どころとなる「京太郎」(読谷村)など全国各地のさまざまな演目をご覧いただけます。
古典芸能では、狂言『鬼瓦』と能『三笑』(短縮版)を取り上げます。『鬼瓦』は夫婦の情愛が感じられる佳作です。テーマに沿った楽しい演目を山本東次郎ほかがお届けします。また、梅若玄祥ほかが演じる『三笑』は、能の中で唯一笑いの型がある珍しい演目です。
この機会に、地域の貴重な資源である全国の民俗芸能にふれ、理解を深めていただければと思います。
第15回地域伝統芸能まつり
プログラム紹介(予定)
*演目は変更される場合もありますのでご了承ください。
●北海道江差町
江差餅つき囃子(えさしもちつきばやし)[2月21日]
江戸時代、江差には北陸地方や東北地方から多くの人たちが移り住んできました。それらの人たちは江差に商家を構え、北前船による本州との交易によって財を成しました。それら商家では、年末に数俵分の餅をついたと記録に遺されています。江差餅つき囃子は、その餅つきの様子を現在に伝えています。唄・笛・太鼓・三味線などで囃子を取りながら大勢のつき手で餅をつくさまは、新たな年を迎える喜びを表現しているとも言えるでしょう。唄の歌詞には家の弥栄を意味する内容があり、現在では結婚式などの祝賀においても披露されます。
●大分県豊後大野市
御嶽神楽(おんだけかぐら)[2月21日]
宝徳元(1449)年、御嶽神社が創建された際に発祥したと言われる神楽です。近年、その実力と信条が高く評価され、国の重要無形民俗文化財の指定を受けています。その際の調査研究事業により、江戸後期、藩命による廃絶の危機があり、当時の御嶽神社神主加藤長古の努力により、現在ある形の大野系岩戸神楽の原型が生み出され、現在まで伝わっていることが明らかにされました。無形の民俗文化財としてその出自の明らかなことや、学術的な裏打ちが取れていることでも貴重な芸能であり、豊後大野市のシンボルとして、さらには大分県を代表する芸能として認識されています。
●広島県福山市
蔵王のはねおどり(ざおうのはねおどり)[2月21日]
福山市内の広い範囲で伝えられている「はねおどり(胴鉦)」の一種です。地元蔵王山の八大龍王社で、かつては雨乞いなどで踊られていたことが始まりとされていますが、現在は蔵王八幡神社の秋季例大祭および前夜祭で踊られています。名前のとおり、跳ね上がるような動きが特徴です。かかとを浮かせ、腰を落とし、跳ねるように足を動かし、豪快に舞います。古記録から、江戸時代後期(19世紀前半)には、蔵王町周辺で同種の踊りが踊られていたことが明らかで、隊形や所作も江戸時代後期の形態をよく留めています。
●新潟県糸魚川市
根知山寺の延年(ねちやまでらのえんねん)[2月21日]
根知山寺の延年は、糸魚川市根知地区の山寺集落に伝承されている新潟県内で唯一の延年芸能です。舞や神楽など10演目から成り、その中でも有名な「おててこ舞」が、一般に祭の総称として親しまれています。その歌詞の中に、室町小唄の言葉遣いが残っていることから、500年以上前に伝わったものとされています。「延年」という名称は、「遐令延年(かれいえんねん)」に由来します。「遐令」は長寿のことを意味し、芸能によって心を和らげ長寿を祈念する行事として、戦時中も途絶えずに今日まで連綿と受け継がれてきた民俗芸能です。
●愛知県豊明市
大脇の梯子獅子(おおわきのはしごじし)[2月21日]
豊明市の名物行事として知られる獅子舞で、その起原は今から400余年前に、則武之庄大秋村(現名古屋市中村区大秋町)から伝わった五穀豊穣を祈る神事とされています。しかし、梯子獅子の実態が明確になるのは、宝暦年間(1751~64)からで、大脇村の庄屋相羽養元が大いに奨励したため盛んになりました。さらに文久年間(1861~64)には、軽業である一本竹と吊し竹が加わり、現在に伝わる形態となります。51段ある梯子を昇って、高さ12メートルという櫓の上で繰り広げられる華麗で勇壮な獅子舞は、全国的に見ても珍しい豊明市の秋の風物詩でもあります。
●福井県越前町
明神ばやし(みょうじんばやし)[2月22日]
「オイ!出て来いやぁ!」の掛け声とともに、元気よく子どもたちが飛び出し演奏を始める「明神ばやし」。劔神社に奉納される太鼓で、寛文3(1663)年の再興記録があることから、かなり古くから行われていたと思われ、地元では「台ずる」とも呼ばれ親しまれています。旧織田町では豊年が3カ年続いたとき、「お渡り式」という大祭を行いました。この期間中、神輿や獅子舞などの行列が村内を練り歩き、その先頭と後尾の屋台の上で、大人組、子ども組が交互に台ずるを打ったといいます。現在の明神ばやしは、このお渡り式から切り離され、公演するようになったものです。
●山形県遊佐町
杉沢比山(すぎさわひやま)[2月22日]
杉沢に鎮座する熊野神社の祭礼を中心に演じられる、山伏神楽系の一種です。熊野神社が鳥海山で修行する山伏の宿坊として栄えた鎌倉時代から伝わっていると言われています。地域の住民が連綿と受け継ぎ、衣装、面、小道具なども、その時代時代に修復、新調しながら、ほぼオリジナルの形を継承しているといいます。熊野神社の境内にかけられた三方吹き抜けの舞台で演じられ、大太鼓、笛、銅拍子を囃子に、謡につれて舞われます。能楽大成前のさまざまな芸能の要素を含んでいるとされ、芸能史上極めて注目すべきものの一つと言われています。
●沖縄県読谷村
京太郎(ちょんだらー)[2月22日]
長浜の狂言「京太郎(チョンダラー)」は大正12(1923)年、昭和3(1928)年頃に演じられ、昭和53(1978)年に、およそ50年ぶりに復活上演されました。京太郎は、明治期に那覇の芝居から習ったものと言われていますが、その伝承時期や経路は不明です。長浜の狂言「京太郎」の特徴は、往時の京太郎芸を彷彿とさせる小道具や採り物が、次から次へと登場することです。大きな見どころは、「狂言」と冠されるような滑稽なセリフ回しです。京太郎は、沖縄のそれぞれの地区で表現方法が違いますが、読谷村の長浜には、劇化された京太郎芸が伝承されています。
●岩手県紫波町
山屋の田植踊(やまやのたうえおどり)[2月22日]
始まりがいつの頃かは明確ではないものの、奥州藤原氏が平泉において盛んであった頃、里人たちにより田楽、田舞などが踊られ、それがこの地において幾多の変遷を経て、現在の山屋の田植踊として伝承されたと言われています。岩手県中部地方に見られる座敷田植えの特徴を色濃く伝えており、初春の豊作を祈願する予祝行事が風流化された、極めて多彩な芸内容をもった田植踊りです。前口上に始まり、「三番叟」から1年の稲作過程を、歌と踊りで順々に演じます。演目も多彩で衣装も大変艶やかですが、なかでも「笠振り」の妙技は圧巻です。
●東京都荒川区
素盞雄神社の天王祭(すさのおじんじゃのてんのうさい) [2月22日]
素盞雄神社は、荒川区南千住、日光街道に面し、千住大橋の近くにあります。千住の天王さまと呼ばれ、創建は平安時代延暦14(795)年。天王祭は毎年6月に行われ、3年に一度の本祭には大・中・小(子供神輿)3基の御本社神輿(宮神輿)の渡御があります。通常の担ぎ棒は数本を井桁型に組みますが、素盞雄神社では棒2本のみで担ぎ、屋根の鳳凰が地面につくほど神輿を左右に激しく振って担ぎます。千貫神輿と言われる大神輿は長さ四間半(8.1メートル)の担ぎ棒2本で担ぎ、大神輿を先頭に中・小と3基揃った「二天棒の神輿振り」は圧巻で、都内でも屈指の勇壮な歴史的祭礼です。
古 典 芸 能 |
●狂言『鬼瓦(おにがわら)』(大蔵流)[2月21日] 訴訟が終わり、故郷に帰ることになった大名と太郎冠者。都の名残にと因幡堂の薬師如来に参詣します。ふと屋根を見ると、鬼瓦があります。それを見て大名はしばらく会っていない奥方を思い出し、懐かしさに泣き出してしまいます。太郎冠者にすぐに会えると慰められ、二人は大笑いをして締めくくります。狂言独特の「笑い留」で終わる演目で、涙から笑いへという展開も和やかに夫婦の情愛が感じられる佳作です。 [出演]山本東次郎 ほか |
---|---|
●能『三笑(さんしょう)』(観世流)[2月22日] 古の中国、廬山に隠棲して仏道修行している慧遠禅師のもとに、詩人の陶淵明と道士の陸修静が訪れます。三人は雄大な景色を眺め、酒を酌み交わし、舞に興じるうち、夜が白々と明けてきます。やがて別れの時、見送りに出た慧遠禅師は自らに課していた禁足の地を踏み出てしまったことに気付き、三人で笑いあいます。能の中で唯一、手を打合せる笑いの型のある演目です。「虎渓三笑図」として多く絵画に描かれた能を、今回は、三人舞の場面からの短縮版でお送りします。 [出演]梅若玄祥 ほか |
●第15回地域伝統芸能まつり
[日程]平成27年2月21日(土)、22日(日)
[開演]午後2時30分(両日とも)
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、一般財団法人地域創造
[後援]総務省、文化庁、観光庁、NHK
●観覧申し込み方法
観覧は無料です。はがき、またはインターネットでご応募ください。携帯電話からもお申し込みいただけます。詳細は「地域伝統芸能まつり」公式サイトにてご確認ください。
http://www.jafra.or.jp/matsuri/
◎応募締切
平成27年1月31日(土)必着
※応募多数の場合は抽選とさせていただきます。当選の発表はご本人に直接通知いたします。
●「地域伝統芸能まつり」に関する問い合わせ
総務部 中澤
Tel. 03-5573-4057