●「市町村長特別セミナー」終了報告~全国の市町村長等55名が参加
地域創造では、全国の市町村長等を対象に、文化・芸術による地域づくりへの理解を深めていただくための「市町村長特別セミナー」を年2回実施しています。今年度2回目は、全国市町村国際文化研修所(国際文化アカデミー)との共催により、10月2日に哲学者の山折哲雄さん(地域創造顧問)による
講演とおんかつ支援登録アーティストによるミニコンサートが行われました。講演は、「咳をしても一人」(尾崎放哉)、「虚子一人銀河と共に西へ行く」(高浜虚子)といった俳句や、万葉集の歌「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」(柿本人麻呂)を引用しながら、1000年以上にわたって日本人を形づくってきた「ひとり」という言葉について考察する含蓄のある時間となりました。
その論考は、親鸞、福沢諭吉、宮沢賢治、お遍路、果ては被災地の復興運動にまで及びました。そして、戦後、我々が学習し、社会に取り入れてきたヨーロッパ近代社会のつくり出した「個人」という思想に対し、「大和言葉の“ひとり”との比較において解釈しなかったことを深く反省する時期にきている……人口減少、高齢化社会の進展、これは逆に考えると、ひとりの活動範囲が広がっていくということ。では、ひとりの人間の力を強化し、ひとりでいることの精神的エネルギーをどう展開していくのか。それは千年以上の伝統をもつ文学の“ひとり”に学ぶしかない」とされました。そして、そのライフスタイルとして、「自分が出かけなければ事は始まらない」「何もなければ自分でつくる」「身銭を切る」の3点を挙げて、締めくくられました。
ミニコンサートでは、おんかつ支援登録アーティストの奥田なな子さん(チェロ)、松尾俊介さん(クラシックギター)が登場。「チェロとギター、それぞれの響きと4+6合わせて10弦の響きを楽しんでください」と話し、通常はソプラノとチェロ8台で演奏されるエイトル・ヴィラ=ロボス作曲『ブラジル風バッハ 第5番よりアリア』、文楽の世界を西洋楽器のチェロで表現した黛敏郎作曲『文楽』など全7曲を披露しました。
左:山折哲雄氏講演/右:ミニコンサート