一般社団法人 地域創造

ステージラボ新潟セッション報告

ステージラボ新潟セッション報告
2014年7月1日~4日

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写真
左上:共通プログラム「1コイン・コンサート」(瀧村依里、鈴木慎嵩)
右上:自主事業Ⅰ(音楽)コース「マーケットに伝える」(講師:國井拓也)講義風景
左左下:自主事業Ⅱ(舞台芸術)コース「アーティスト・イン・レジデンス~クリエーション・プロセスを支える仕組み」(講師:日沼禎子)ワークショップ 風景
右下:ホール入門コース「アウトリーチの必要性と政令市版音活事業の組み立て」(加藤礼子、中村哲子)アウトリーチ・プログラム体験風景
撮影:雨田芳明

 会場は、2004年に次いでステージラボ2度目の開催となるりゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)です。同館は、ジュニアオーケストラや1コイン・コンサートの草分けであり、日本で唯一の劇場専属舞踊団Noismを有するなど、自主事業型ホールの旗手として知られています。今回はそうした蓄積を活かし、りゅーとぴあの職員の方々にもコーディネーターや講師として全面協力していただきました。

 

●りゅーとぴあのノウハウを伝授
 ホール入門コースのコーディネーターを務めたりゅーとぴあ事業課長の真田弘彦さんは、新潟市芸術文化振興財団職員として、ジュニアオーケストラの育成で知られる新潟市音楽文化会館とりゅーとぴあの開館準備を担った経験をもつ公立ホール職員の大先輩。今回は、文化庁の担当者から劇場法を学ぶ講座や住民参画による文化のまちづくりを推進する小美玉市の事例から公立ホールが立脚する基礎を学ぶとともに、新潟のノウハウを惜しみなく提供していただきました。
  Noism芸術監督の金森穣さんとの意見交換をはじめ、地元演奏家を活用したアウトリーチプログラムの体験と意見交換の機会も設けられました。登録演奏家の加藤礼子さん(ヴァイオリン)は、「学校で演奏したことはあっても子どもの興味を惹くことを考えたこともなかったので、りゅーとぴあのアーティスト研修会は衝撃でした。演奏家を通じて音楽に触れ合うのがアウトリーチだから、自分が一番出せる曲を取り入れたらとコーディネーターからアドバイスされ、このプログラムをつくりました」と話していました。
  ジュニアオーケストラ教室、合唱教室、邦楽合奏教室、演劇スタジオ・キッズコースという育成事業についても、団長を務める高校生や担当職員をパネラーにした意見交換が行われました。高校生たちは、「最初は自分がうまくなることが目標だったが、合奏を始めて構成員としての自覚がでてきた」「普通の学校とは違い、同じ目標をもつ強い絆で結ばれた関係が生まれた」「下手でも気持ちが込もっている方が人の心に届くことを学んだ」「りゅーとぴあは第二の家」など、思いが溢れたスピーチをしていました。
  音楽コースのコーディネーターを担当した事業課主査の榎本広樹さんも、小出郷文化会館で長年にわたりアウトリーチ事業を推進してきた経験をもつ先輩。今回は、Jリーグのアルビレックス新潟マーケティンググループの國井拓也さん、糀を使った新商品展開「古町糀製造所」で注目を集める葉葺正幸さんなどの刺激的な講義を交え、公立ホール職員としての悩みについて考えるカリキュラムとなりました。参加者からは「ホール職員として何をすべきなのか考える良い機会となった。学んだことを活かして、少しでも質の高い仕事をしたい」との声が上がっていました。
  また、共通プログラムでは、「りゅーとぴあ1コイン・コンサート2014」の鑑賞も行われました。出演したのは、おんかつ登録アーティストでもある瀧村依里さん(ヴァイオリン)と鈴木慎嵩さん(ピアノ)です。「超絶技巧と美音“ヴァイオリン”」と題し、約1000人の聴衆を前に1時間の演奏が行われました。りゅーとぴあでは12年間で72回の1コイン・コンサートを実施。受講生との意見交換では、企画者で担当者の中尾友彰さんから、「普段りゅーとぴあに来ていただけない主婦層をターゲットに、気軽で低価格なコンサートとして企画した。力があるのに演奏機会のない若手にたくさんのお客さんの前で演奏する機会をつくりたかった。自分の耳で将来性のあるアーティストを発掘して、チケット販売にわずらわされず、演奏家とも信頼関係が築けるこの企画は若い担当者にとってとても勉強になる」といった解説も行われました。

 

●舞台芸術へのアプローチ
 公益財団法人セゾン文化財団のプログラム・ディレクターとして国内外の舞台芸術を支援してきた久野敦子さんがコーディネーターを務めた自主事業Ⅱ(舞台芸術)コースは、国際的な観点を踏まえたカリキュラムとなりました。初日に行われたのが、セゾン文化財団常務理事として文化政策に多くの提言を行ってきた片山正夫さんによる講義です。公益財団法人化を踏まえ、公立ホールの現場でも「公共性」について問われることが増えています。講義では、経済学における「公共財=市場にまかせるとうまくいかないもの」からはじまり、準公共財と呼ばれている文化芸術についての論考が行われ、「文化芸術のイノベーション(革新)」を公共財として捉える考え方などが示されました。受講生は学生時代にもどったように熱心にメモを取っていました。
  また、元・国際芸術センター青森(ACAC)・キュレーターの日沼禎子さん(女子美術大学准教授)からは、海外のアーティストが日本に滞在し、伝統芸能の精神と技を学び、新たな作品を生み出した事例(ショーネッド・ヒューズ「Aomori Project」)のクリエーション・プロセスを丁寧に学びました。この他、京都ではじまった国際舞台芸術祭「Kyoto Experiment」の紹介や、2日間にわたる演劇制作ワークショップも行われ、幅広く舞台芸術について考える機会となりました。

 

新潟セッション プログラム表 ↓クリックすると拡大します。
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●コースコーディネーター
◎ホール入門コース
真田弘彦(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館事業課長)
◎自主事業Ⅰ(音楽)コース
榎本広樹(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館事業課主査)
◎自主事業Ⅱ(舞台芸術)コース
久野敦子(公益財団法人セゾン文化財団プログラム・ディレクター)

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