一般社団法人 地域創造

地域創造設立20周年特別企画 地域創造の事業の歩み(研修交流事業)

相互に学びあいながら繋がりを育んだステージラボ

地域創造の事業の歩み(研修交流事業)

 一般財団法人地域創造は、「文化・芸術の振興による創造性豊かな地域づくり」を支援することを目的に1994(平成6)年9月に設立され、今年で20周年を迎えます。この間、時代や地域のニーズを踏まえ、多彩な事業を実施してきました。20周年を機にその主な取り組みについて振り返ります。

 

 現在の地域創造の事業には、地域の人材育成に取り組む「研修交流事業」、公立文化施設等の活性化を支援する「公共ホール等活性化支援事業」、ふるさとの誇りである伝統芸能の保存・継承・発展を支援する「地域伝統芸能等保存事業」、地域の文化・芸術環境づくりに役立つ情報発信・調査研究を行う「情報交流・調査研究等事業」の4部門があります(平成16年度の10周年を機に拡充、平成23年度に事業再編)。この中で設立当初から最も力を入れて取り組んできたのが研修交流事業です。

ステージラボの成り立ちと変遷

 1980年代から90年代にかけて、地域ではホール・劇場を中心とした公立文化施設の整備が急速に進みました。そうした公立ホール・劇場の事業担当者等を対象として企画されたのが「ステージラボ」という名称の研修交流事業です。大人数で講義を受ける講座ではなく、少人数のゼミ形式により講師と参加者の双方向のコミュニケーションを重視した実践的な研修を行うという意味で「ラボ(実験室)」と命名されました。
  特徴は、①受講生が実践的な研修を選択できるよう複数コース編成を行っていること、②1コース20人程度の少人数・短期集中・体験型の研修を行っていること、③現場経験の豊富な実務家にコーディネーターを委嘱してカリキュラムを作成していること、④実演家による芸術体験ワークショップが充実していること、⑤ネットワークづくりを図っていること、⑥先進的な取り組みを行っている公立文化施設を会場として交流を図っていることです。
  地域創造の設立と同時にスタートし、以来、年2回開講しています(基本各3コース。開催実績一覧参照)。コース編成は、初心者を対象にしたホール運営の基礎を学ぶコースと、音楽・演劇・ダンスといった事業の企画力向上を目指すコースに加え、ホールマネージャー・コース(幹部職員向け)、文化政策企画コース(自治体職員向け)、ホール計画コース(準備室職員向け)、市民ギャラリーの活性化をテーマにした美術コースなどニーズに応じたコースを随時開講してきました。平成25年度まででラボ修了生は延べ2,647人を数えます。また、ステージラボ修了生のフォローアップとして、1年かけて主体的な研究を行い事業を企画・実施する「マスターコース」(平成14~22年度)を開講しました。
  ステージラボを皮切りに、地域創造では新たな対象やジャンルに向けた研修を企画・実施し、改編を経て現在にいたっています。これまで開講した研修には、実際の舞台づくりに参加しながら舞台・照明・音響などの舞台技術の基礎を学ぶ「ステージクラフト」(平成9~20年度)、地方公共団体の首長および幹部職員などを対象に公立文化施設や文化・芸術による地域づくりについての理解を深めていただくアートアプローチセミナー(平成11年度~市町村長向け、平成16年度~文化振興担当幹部向け。平成20年度に市町村長セミナー、文化政策幹部セミナーに改編)、先進的な取り組みを行っている公立美術館を会場に地域交流プログラムについて実践的に学ぶ「アートミュージアムラボ」(平成14年度にステージラボから美術コースを独立)、都道府県・政令指定都市の文化振興担当課長との意見交換とネットワークづくりを行う「都道府県・政令指定都市文化行政担当課長会議」(平成15~19年度は全国を6ブロックに分けたブロック会議として各地で実施。平成20年度から全国会議として実施)、創造的な地域づくりを標榜する市町村長と有識者が意見交換する「都市行政文化懇話会」(平成19年度~。平成25年度から市町村長セミナーに改編)、演劇の地域交流プログラムの手法を学ぶ「リージョナルシアター事業」(平成20年度~)、「公立ホール・劇場 マネージャーコース」(平成21年度からステージラボとは分離して東京で実施)があります。

 

●ステージラボ開催実績一覧

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20年にわたりステージラボを担当してきた津村卓プロデューサーのコメント

 地域創造が設立された当時は、ハード(施設)の整備が先行し、ソフト(運営や事業)が立ち後れていました。自主事業に力を入れていた公立ホールもありましたが、その情報を共有できる場はありませんでした。直営ホールの職員には異動による初心者もいましたが、自主事業ができる力をつけるような研修機会がほとんどありませんでした。情報を提供し、実務家・実演家・ホール仲間と出会える場を提供し、“交流を図ってノウハウや経験を共有化していくこと”がステージラボの大きなミッションでした。“研修交流事業”という名称にはそうした思いが込められています。
  ステージラボのカリキュラムは固定化することなく、その時々に必要とされている内容をコーディネーターと共に考えています。初期は、ワークショップで音楽や演劇といった表現を理解してもらい、コンサートや公演のつくり方、企画のつくり方、ホールの運営方法を実践的に学ぶものでした。公立文化施設に関わる制度や環境が大きく変わると、例えば指定管理者制度について考えるゼミを行うなど、カリキュラムに反映させていきました。今日では、公立文化施設の役割が広がったことから、コミュニティと積極的に関わるアウトリーチ手法を学び、文化・芸術にはどのような力があり社会に対して何ができるのかを考え、地域の課題に向き合うホール事業のあり方を議論する場になっています。
  ステージラボを継続してきた結果、実務家・実演家・修了生の間にさまざまな繋がりが生まれ、ホール職員の顔が見えるようになってきました。刺激を受けた修了生が、各地でアウトリーチ事業やネットワーク事業を立ち上げたのは大きな成果です。また、館長やプロデューサーとして活躍している修了生もいます。一方、コーディネーターや講師の側も、それまで個人の経験として蓄積してきたことを人に伝える立場となり、大きく成長しました。背中を見て学べという業界だったものが、プログラム化して伝えるようになったのは大きな変化だと思います。
  今では「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」第13条に「人材(制作者、技術者、経営者、実演家等)の養成及び確保等」とあるように、人材育成への機運が高まり、玉石混淆とはいえ研修機会が急増しています。一方、公立文化施設を巡る予算は削減の一途をたどり、人材を活かしきれない現実もあります。さまざまな課題はありますが、地域創造、コーディネーター、講師、受講生が互いに学びあいながら、文化・芸術の力を活かした地域づくりの課題に向き合う場としてステージラボを運営していくことがミッションだと考えています。

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北九州芸術劇場館長兼チーフプロデューサー、
地域創造プロデューサー

研修交流事業

平成23年度に事業再編が行われ、現在、研修交流事業として実施されているのは次の7事業。

  • ステージラボ(平成6年度~。平成21年度から「公立ホール・劇場 マネージャーコース」を分離開催)
  • 市町村長セミナー(平成11年度にスタートした「アートアプローチセミナー・市町村長向け」を平成20年度に改編)
  • アートミュージアムラボ(平成14年度~。平成22年度から分離開催)
  • 文化政策幹部セミナー(平成16年度にスタートした「アートアプローチセミナー・文化振興担当幹部向け」を平成20年度に改編)
  • 都道府県・政令指定都市文化行政担当課長会議(平成20年度~)
  • リージョナルシアター事業(平成20年度~)

※平成23年度に事業再編。カッコ内は開始年度。開始年度の早い順に掲載。
※研修交流事業として行われ、終了した事業には、ステージクラフト(平成9~20年度)、ステージラボ・マスターコース(平成14~22年度)、ブロックラボ(平成15~19年度)がある。

 

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