一般社団法人 地域創造

平成26年度 公共ホール音楽活性化事業全体研修会報告

平成26年度公共ホール音楽活性化事業全体研修会
2014年4月14日~16日

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写真
左上:平成26・27年度公共ホール音楽活性化事業登録アーティストによるプレゼンテーション。田村真寛さん(サクソフォン)
右上:廣田美穂さん(ソプラノ)
左下:セレノグラフィカによるダンスワークショップ
右下:グループディスカッション。おんかつコーディネーターと共に、アーティストや地域の対象者等をイメージしながら事業目的を整理し、具体的な企画内容を検討・発表する

 

 平成26年度公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)の参加団体やコーディネーター、登録アーティストが一堂に会する全体研修会が、4月14日から16日まで地域創造会議室と津田ホールを会場に開催されました。今回の研修会では、新規登録アーティスト7名による公開プレゼンテーションに加え、参加館の担当者に向けた「おんかつを知る」ためのレクチャーが行われました。

 

●平成26年度「公共ホール音楽活性化事業」全体研修会スケジュール
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●新規登録アーティストによる公開プレゼンテーション
 91組の応募者から選ばれた平成26・27年度新規登録アーティストは、コンクール優勝者などを含む実力派揃いで、聴き応えのあるプレゼンテーションになりました。登録アーティストは、音源選考で30名弱に絞られた候補者による生演奏のオーディションを経て選考されました。その後、2日間の集中研修により地域コミュニティへのアプローチなどを学び、アウトリーチ実地研修を経て、今回の舞台に臨みました。
  トップバッターの前田啓太さん(打楽器)のプレゼンテーションはこれまでになくユニークなものでした。「僕が目指す打楽器奏者像は、かっこいい(cool)打楽器奏者、演じる(act)打楽器奏者、純粋な(pure)打楽器奏者の3つです」とアピール。パントマイマーのように見えないボールを使ってキャッチボールしながらボディパーカッションで演奏するシーカールア作曲『これはボールではない』、朗読とのコラボレーション作品を発表している新進作曲家の加藤史崇による『蒲公英(たんぽぽ)と混凝土(コンクリート)』など打楽器の幅広い可能性を感じさせる若々しいパフォーマンスを披露しました。
  五感を使って音楽にふれてもらいたいという森岡有裕子さん(フルート)は、柵から出たいヤギをイメージしたオネゲルの『めやぎの踊り』と、自らの原点となっているフランスの音楽を演奏。
  息の強さや唇の調整だけで音程を変えるバロック・トランペットや世界最小のピッコロ・トランペットなど珍しい楽器を持参した髙見信行さん(トランペット)は、同じ曲の中で異なるトランペットを演奏し吹き比べるなど、楽器の魅力を全面に押し出した実力派の演奏でアピールしていました。また、田村真寛さん(サクソフォン)はホルンの曲をサクソフォンのためにアレンジしたシューマン作曲『アダージョとアレグロOp. 70』や、サンバからインスピレーションを得た『ブラジレイラ』などでサクソフォンの豊かな音を響かせていました。
  20歳から声楽を始めたという中井亮一さん(テノール)は、「歌のお兄さんではなく、オペラ歌手として子どもたちの前に立つとはどういうことかを見つめ直すことから始めました」と言い、物語性豊かなプログラムで構成。
  6歳からハンガリーに音楽留学していた金子三勇士さん(ピアノ)は、リスト2曲を演奏。「作曲家、ピアニスト、教育者、哲学者であり、チャリティやアウトリーチ活動にも力を入れていたリストのように活動していきたいと思っています」と言い、素晴らしい演奏で客席を魅了していました。
  イタリア留学中に日本語の表現の豊かさを再発見したという廣田美穂さん(ソプラノ)は叙情豊かな唱歌を歌いあげ、最後に歌劇『蝶々夫人』より“ある晴れた日に”を披露してプレゼンテーションを締めくくりました。

 

●参加者同士の交流を図る研修会
 おんかつの目的のひとつが、経験の少ない市町村のホール職員がアーティストと話し合いながら企画をつくる機会を提供することです。講義では、おんかつ実務で役立つ知識を基本的な考え方や実務面から学びました。
  近年の全体研修会で力を入れているのが参加館の担当者同士の交流を図るワークショップです。今回は、ダン活支援登録アーティストのセレノグラフィカによるワークショップが行われ、音楽とは違った身体表現による交流体験をしました。
  事例紹介では、担当者と演奏家それぞれの視点からの報告が行われました。
  新居由佳梨さん(ピアニスト)の演奏に心を打たれ、多くの人に新居さんの演奏を届けたいという、担当者・小川隆一さんの強い思いからスタートした福井市文化会館の事例では、小川さんの地域への粘り強い働きかけや会館スタッフ全員が事業内容を把握し積極的に活動していたなどのエピソードが紹介され、コーディネーターの田澤さんは、「おもてなしの心とチームワークが感動を生んだおんかつだった」と振り返っていました。
  ヴァイオリニストの北島佳奈さんは、派遣された6地域それぞれで自ら企画を提案したことを取り上げ、「短歌の朗読とともに雰囲気の異なる3つの音楽を聴くと、その言葉も曲に合わせて違った表情を見せるということを聴く人と読む人に体感してもらう」という狙いのもと、「短歌」と音楽のコラボレーションによる企画を実施した大空町での事例を紹介しました。
  また、サブコーディネーターの菊地俊孝さんは、ホール職員としておんかつを担当した経験から、事業担当者としての役割について講義を行い、おんかつに取り組む心構えや企画のポイントなどをアドバイスしました。
  グループ別の企画検討では、事前課題としてまとめた地域のセールスポイントや課題を踏まえ、コーディネーターのアドバイスを基に企画を考えました。
  このほか、参加者同士の情報交換も活発に行われ、充実した研修会となりました。

 

●平成26・27年度公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト
・金子三勇士(ピアノ)
・森岡有裕子(フルート)
・髙見信行(トランペット)
・田村真寛(サクソフォン)
・廣田美穂(ソプラノ)
・中井亮一(テノール)
・前田啓太(打楽器)

 

●平成26年度公共ホール音楽活性化事業実施ホール(13カ所)
・秋田県由利本荘市(文化交流館カダーレ)
・茨城県つくば市(カピオホール)
・福井県坂井市(みくに文化未来館)
・岐阜県揖斐川町(谷汲サンサンホール)
・愛知県安城市(安城市文化センター)
・滋賀県米原市(米原市民交流プラザ)
・大阪府大阪狭山市(大阪狭山市文化会館)
・和歌山県有田川町(きびドーム)
・岡山県真庭市(エスパスホール)
・岡山県和気町(学び館「サエスタ」)
・愛媛県新居浜市(新居浜市市民文化センター)
・福岡県太宰府市(プラム・カルコア大宰府中央公民館)
・鹿児島県長島町(長島町文化ホール)

 

●公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ
芸術環境部 當真・水上
Tel. 03-5573-4069
onkatsu*jafra.or.jp(*を@にかえてご利用ください)

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