一般社団法人 地域創造

平成25年度「邦楽地域活性化事業」報告

 
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 写真左上、左下、右上:手法開発研修会モデルアウトリーチの様子
左上:小松島市チーム
(左から)山形光さん、岡村慎太郎さん、黒田静鏡さん
左下:海陽町チーム
(左から)平田紀子さん、横山佳世子さん、鎌田美穂子さん
右上:吉野川市チーム
(左から)光原大樹さん、日吉章吾さん、田嶋謙一さん
右下:箏の楽器体験の様子。モデルアウトリーチ終了後、全チームの演奏家が参加し、徳島市不動小学校で行われた

 

 邦楽地域活性化事業は、都道府県・政令指定都市(もしくは設置したホール)が主催し、市町村ホールと連携して地域において邦楽の魅力にふれる機会を提供する事業です。邦楽演奏家がアンサンブルを組み、現地のホール担当者と共に学校関係者と情報交換しながらアウトリーチの手法を開発する研修会と、市町村ホールと連携した地域交流プログラムのほか、県立ホール主催のコンサートを実施します。今年度はあわぎんホール(徳島県郷土文化会館)を運営する公益財団法人徳島県文化振興財団と徳島県が主催し、海陽町の阿波海南文化村海南文化館、小松島市ミリカホール、吉野川市鴨島公民館の参加により事業が行われています(下記参照)。
  9月22日から25日まで滞在型の手法開発研修会が行われ、最終日、3組の邦楽演奏家グループが不動小学校を訪れ、4・5・6年生を対象にアウトリーチの実践を行いました。今回はその模様を中心にご紹介します。

 

●邦楽の世界を身近に感じるアウトリーチ
 邦楽地域活性化事業は、平成21年度にモデル事業としてスタートし、今回を含めてこれまで15組の邦楽演奏家グループが参加しました。参加する演奏家とホール、学校関係者は、事前の全体研修会でアウトリーチの意義について講義を受けるとともに、OB演奏家の実演を見学します。今回は、平成24年度事業に参加した朝香麻美子さん(山田流箏曲)のチームのアウトリーチを見学し、現地下見を実施した後、3泊4日の手法開発研修会に臨みました。
  参加したのは、横山佳世子さんをリーダーとする箏3人の海陽町チーム(鎌田美穂子さん、平田紀子さん)、岡村慎太郎さん(三味線)をリーダーとする小松島市チーム(黒田静鏡さん(尺八)、山形光さん(箏))、日吉章吾さん(箏)をリーダーとする吉野川市チーム(田嶋謙一さん(尺八)、光原大樹さん(箏))です。
  海陽町チームでは、人生の先輩として子どもたちと向き合い、それぞれの演奏家が小学生の頃の発表会の写真を映しながら、箏との出会いについて話すところからスタート。大阪出身の横山さんは、関西弁で「箏を始めたのは5年生のとき。先生が一緒にお箏を弾いてくれると自分が上手くなったような気がしてお箏が好きになりました。人前で話すのが苦手だったけど、お箏を続けていることで、自分に自信がもてるようになった」と語りかけていました。川の風景を音で表しているという宮城道雄作曲『瀬音』、二十五絃箏による伊福部昭作曲『琵琶行』、沢井忠夫作曲の箏と十七絃の三重奏『音、きらゝ』と、さまざまな箏の音色を堪能できる選曲でした。
  小松島市チームでは、まず黒田さんが子どもたちにあまり馴染みのない尺八について、「風の音、鹿の鳴き声、鳥の声など五線譜では表せない音を表現することができます」と実演を交えてわかりやすく紹介。その後、生徒たちは地歌の『えび』を歌うことに挑戦。クライマックスの地歌『菊の露』では、歌詞の意味をわかりやすく解説し、三曲合奏(箏、三味線、尺八)を披露しました。
  吉野川市チームはいきなり田嶋さんの尺八とともに、有名な宮城道雄作曲の『春の海』を演奏。四季をテーマにした選曲の中で「秋」を題材に選んだ『下り葉』では、田嶋さんが「虚無僧がお経を尺八で吹いたのが『古典本曲』と呼ばれる曲です。その中の一曲が『下り葉』です」と語りかけ、王道で真っ向から子どもたちに向き合い、竹から生まれる不思議な音の迫力で魅了。夏の『線香花火』、冬の『水の変態』という宮城道雄の代表曲に加え、ラストは紋付袴姿の男性3人による、池上眞吾作曲『Elsalvador』の力強い演奏で締めくくりました。
  研修会に参加した阿波海南文化村海南文化館の森﨑忠憲さんは、「手法開発の合宿を拝見して、演奏家がどれほど努力してアウトリーチの内容を開発しているのかがよくわかりました。町に帰ったら学校の生徒たちに、この一生懸命さを伝えられればと思いました」と話していました。
  また、短い時間でしたが、今回は箏の楽器体験も行われました。徳島県文化振興財団の岩朝利治さんは、「我々も文化庁の芸術家派遣事業の採択を受けて、クラシック、声楽、能狂言、浄瑠璃などいろいろなアーティストを学校に派遣しています。昨年は72校で実施しましたが、内容は実演家に任せていました。今回、コーディネーターがどのようにしてアーティストとアウトリーチのプログラムをつくり上げているのかを間近に見ることができ、何が大切か、どこに注目しなければいけないのかがよくわかりました。今回の楽器体験は、地元の邦楽関係団体や個人が協力して準備してくださいましたが、こうした地元の方々に協力いただき、今後も邦楽の事業を考えていきたいと思います」と話していました。
  12月1日には、あわぎんホールで3組が出演するガラコンサートが開催されます。邦楽事業に興味のある近隣ホールの方はぜひご来場ください。

 

●邦楽地域活性化事業
都道府県・政令指定都市(もしくは設置した公立ホール)が主催し、市町村ホールと連携して実施する事業(地域創造共催)。邦楽演奏家と専門家を派遣し、親しみやすい邦楽アウトリーチの手法を開発する研修を行うとともに、学校へのアウトリーチ、ワークショップ、コンサートにより地域において邦楽の魅力にふれる機会を提供する。

●平成25年度邦楽地域活性化事業
◎主催
徳島県、公益財団法人徳島県文化振興財団
◎共催
財団法人地域創造
◎ディレクター
岩朝利治(公益財団法人徳島県文化振興財団次長兼事業課長)
◎コーディネーター
・チーフコーディネーター
児玉真(いわき芸術文化交流館アリオス チーフ プログラム オフィサー、地域創造プロデューサー)
・担当コーディネーター
谷垣内和子(公益社団法人日本芸能実演家団体協議会実演芸術振興部企画制作課長)、吉田真由美(公益財団法人日本伝統文化振興財団理事・事務局長)、米澤浩(尺八演奏家、NPO法人日本音楽集団)
・アドバイザー
山﨑篤典(音楽・舞台プロデューサー)
◎研修プログラム
・全体研修会
[日程]2013年8月8日
[会場]あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)
・手法開発研修会
[日程]9月22日~25日
[会場]あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)
◎地域交流プログラム
・海陽町
[演奏家]横山佳世子(箏)、鎌田美穂子(箏)、平田紀子(箏)
[日程]10月10日~12日
[主会場]阿波海南文化村海南文化館
・小松島市
[演奏家]岡村慎太郎(三味線)、黒田静鏡(尺八)、山形光(箏)
[日程]10月17日~19日
[主会場]小松島市ミリカホール
・吉野川市
[演奏家]日吉章吾(箏)、田嶋謙一(尺八)、光原大樹(箏)
[日程]10月31日~11月2日
[主会場]吉野川市鴨島公民館
◎総括公演プログラム
・ガラ・コンサート
[日程]12月1日
[会場]あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)

●邦楽地域活性化事業に関する問い合わせ
総務部 久保
Tel. 03-5573-4056

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