平成25年度公共ホール音楽活性化事業全体研修会
2013年4月15日~17日
平成25年度公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)の参加団体、コーディネーター、登録アーティストが一堂に会する全体研修会が、4月15日から17日まで地域創造会議室と津田ホールを会場に開催されました。
この研修会では、今年度おんかつを実施する18ホールの職員が登録アーティスト7組による公開プレゼンテーションを聴き、招聘する演奏家を選考するとともに、多角的な研修を受けて、実際に行うコンサートやアウトリーチ等の地域交流プログラムについて検討を行いました。時間をオーバーするほど活発な交流が行われ、充実した研修となりました。
●平成25年度「公共ホール音楽活性化事業」全体研修会スケジュール
●アーティストとのキャッチボールが重要
おんかつの目的のひとつが、経験の少ない市町村のホール職員がアーティストと話し合いながら企画をつくる機会を提供することです。講義では、おんかつ実務についての説明から、コンサートや地域交流プログラムを企画制作するための基礎知識、アーティストとの協働やアウトリーチ先との調整について学ぶ事例研究、国内外の最新動向紹介まで丁寧なフォローが行われました。
事例では、当初のプランからアーティストとの話し合いにより企画内容が大きく展開していった行田市産業文化会館と鈴鹿市文化会館の取り組みが紹介されました。行田市には海野幹雄さん(チェロ)が派遣され、保育園児がイメージした色でサン=サーンスの『白鳥』の絵を完成させるアウトリーチなどが行われました。当初は「担当者の思いはあっても内容が決まらず、時間をかけて考え、アクティビティ先とやりとりするなかで内容が整理されていきました」とコーディネーターの山本若子さん。
鈴鹿市は、担当者が人を元気づける力に惚れ込んだという乗松恵美さん(ソプラノ)を招聘。その思いを受けたアーティストが、さまざまなアイデアを提案し、担当者が調整して地元のコーラス隊の出演により字幕付で『蝶々夫人』ダイジェスト版の上演を実現しました。乗松さんは「双方に強い思いがあったのと、できないことはできない、と担当者がハッキリ言える人だったから、これだけ満足度の高い公演ができたのだと思います」と振り返っていました。
青森市文化会館職員としておんかつを担当した経験のあるコーディネーターの田澤拓朗さんは、「地域のことを一番よく知っている立場から、音楽の価値を地域にどのように提示するかをアーティストと一緒に考えていくのが事業担当者の役割で、そのためには、主体性をもって行動することや伝えようとする姿勢が大切」とアドバイスしていました。
●2年目のプレゼンテーション
平成24・25年度登録アーティストによる公開プレゼンテーションは、2年目ということもあり、初年度に派遣された地域のエピソードなどを交えた親しみのある演奏会となりました。
トップバッターの松本蘭さん(ヴァイオリン)は、レクチャーコンサートのような楽曲説明を中心に構成。地域創造の登録アーティストに挑戦するため2011年に結成された亀井良信さん(クラリネット)と鈴木慎崇さん(ピアノ)による実力派のデュオ・レゾネは、「しゃべることが苦手でしたが、言葉にすることで子どもたちとの距離が近くなるのを実感しました」とコメント。アウトリーチでは一楽章のみ演奏しているというプーランクの『ソナタ』全楽章の演奏を披露しました。
「難しい曲ですが、色をイメージしてもらったら“黒”と答えてくれた子がいてゾクッとしました。実はこの楽譜には“モノトーン”という言葉がたくさん書いてあるんです」というエピソードには、子どもたちと亀井さんの音楽を通じた交流がよく表れていました。
兵庫芸術文化センター管弦楽団に所属している北島佳奈さん(ヴァイオリン)のプレゼンテーションは、アウトリーチへの思いと具体的なプログラムイメージが伝わる気持ちのこもったものでした。
4歳の時に自分が使っていた子ども用ヴァイオリンで『きらきら星』を演奏した北島さんは、「これまで使ったヴァイオリン一台、一台に音楽を通じた人との出会いがあり、それが私を支えてきました。おんかつでその思いはますます強くなりました」と自己紹介。アウトリーチの実例として、曲調の異なる4曲をバックに谷川俊太郎の詩『生きる』を朗読しました。
「同じ詩でも音楽があるのとないのとではイメージするシーンが変わる。ネガティブに聞こえたり、吹っ切れて聞こえたりする」といった子どもたちの感想を紹介しながら、音楽は気持ちや思いとリンクしていて、つらい子どもたちを励ますこともできると会場に語りかけていました。
このほか、子どもたちにとって身近な楽器である鍵盤ハーモニカの演奏からスタートした新居由佳梨さん(ピアニスト)は、大船渡でのおんかつ体験を交えて「水」「風」「光」をテーマに演奏。スペインをテーマにした泊真美子さん(ピアノ)、国別比較をした奥田なな子さん(チェロ)、テクニックで迫った松尾俊介さん(ギター)と、それぞれに持ち味を出した演奏が続きました。
●平成24・25年度公共ホール音楽活性
化事業登録アーティスト
・新居由佳梨(ピアノ)
・泊真美子(ピアノ)
・北島佳奈(ヴァイオリン)
・松本蘭(ヴァイオリン)
・奥田なな子(チェロ)
・松尾俊介(ギター)
・デュオ・レゾネ(クラリネット:亀井良信&ピアノ:鈴木慎崇)
●平成25年度公共ホール音楽活性化事業実施ホール(18カ所)
北海道大空町(大空町教育文化会館)、岩手県一戸町(一戸町コミュニティセンター)、千葉県栄町(ふれあいプラザさかえ)、東京都中野区(なかのZERO)、福井県福井市(福井市文化会館)、長野県上田市(上田文化会館)、岐阜県大垣市(大垣市スイトピアセンター)、愛知県尾張旭市(尾張旭市文化会館)、三重県亀山市(亀山市文化会館)、兵庫県多可町(多可町文化会館)、和歌山県橋本市(橋本市産業文化会館)、和歌山県紀の川市(紀の川市粉河ふるさとセンター)、岡山県倉敷市(児島市民交流センター)、広島県大崎上島町(大崎上島文化センター)、愛媛県今治市(今治市中央公民館)、宮崎県小林市(小林市文化会館)、鹿児島県龍郷町(龍郷町体育文化センター)、沖縄県沖縄市(沖縄市民小劇場あしびなー)
●公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ
芸術環境部 仲田・水上
Tel. 03-5573-4069
onkatsu@jafra.or.jp