日本各地で脈々と受け継がれている地域伝統芸能や古典芸能を紹介する「地域伝統芸能まつり」が、2月23日、24日にNHKホールで開催されました。13回目の今年は「鎮(しずめ)」をテーマに、10の地域伝統芸能と2つの古典芸能が集い、約4,700人の観客を魅了しました。
1日目、全演目のトップバッターを務めたのは北海道小樽市の「松前神楽」です。洗練された囃子に、弓矢を用いたり馬術の様子を表現した舞は、優雅さと勇壮さで観客を魅了。獅子舞も登場し、客席の子どもを巻き込んだ、猿田彦とのユーモラスなやりとりに会場は笑いに包まれ、和やかな幕開けとなりました。
静岡県浜松市の「遠州大念仏」は、初盆を迎えた家の庭先で唱えられる賑やかな念仏を披露。独自の節回しの歌詞や鉦の音に乗せて、太鼓が勇ましく踊るように打ち鳴らされる様子は幻想的で、霊や遺族への祈りを込めた息の合った踊りや太鼓の響きに、会場全体が独特の雰囲気に包まれました。
千葉県香取市からは「佐原囃子」が登場。神楽囃子に歌舞伎や浄瑠璃などの影響も受けた独特の囃子が、情緒豊かに響き渡ると、今度は軽快な曲で若者と子どもたちが踊りを披露。親子の演舞や「小さい頃から囃子が耳に馴染んでいた」との若手継承者のコメントは、地域の伝統芸能が連綿と守り伝えられてきた所以を再認識する一幕となりました。
2日目は最初に香川県綾川町の「綾南の親子獅子舞」が登場。親獅子と子獅子が互いの情愛を見事に表現した演舞で、特に子獅子を熱演した女子中学生2人には大きな拍手が送られました。親獅子の演者や保存会会長も子獅子の経験者であり、伝統が次世代へ受け継がれていく一端を垣間見ることができました。
福島県南相馬市からは「村上の田植踊」を披露。農夫と馬が田を耕す様子をユーモアたっぷりに演じた後は、民謡風の歌に合わせ、女性たちが四つ竹や鈴を打ちながら真摯に舞いました。「これほどまで復活できるとは思わなかった」─東日本大震災から続く困難な状況のなか、流失した踊りの用具や衣装を復元し、この日の上演を迎えた演者たちに敬意を込めた惜しみない拍手が送られました。
地域伝統芸能まつりのもうひとつの柱、古典芸能は、1日目に狂言『止動方角』が登場。癖のある馬を鎮める呪文で、主人と太郎冠者が愉快かつ爽快なやりとりを繰り広げました。2日目には梅原猛さんの新作、スーパー能『世阿弥』が短縮版で上演されました。世阿弥親子の情愛や芸術と政治などが現代語でわかりやすく描かれ、荘厳な能の舞台とともに、古典芸能の新たな魅力に会場中が酔いしれました。
2日間の大トリを飾ったのは、奈良県御所市の「御所の献灯行事」です。勇壮な太鼓のリズムに乗って、小学生が小ぶりのススキ提灯を額や腕に乗せる技を披露。続いて若手継承者による、高さ5メートル・重さ約10キロのススキ提灯の投げ合いや振り回しなどのダイナミックな演技に、何度も拍手が湧き起こりました。
最後はこの日の出演団体が賑やかに再登場。個性豊かな地域の伝統芸能を存分に披露した演者たちに盛大な拍手が送られました。
●第13回地域伝統芸能まつり
[会期]2013年2月23日(土)、24日(日)
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、財団法人地域創造
[実行委員]梅原猛、大石利雄、梶田信一郎、鎌田東二、香山充弘、三枝成彰、下重暁子、新山賢治、鈴木健二、山折哲雄、山本容子(50音順、敬称略)
[後援]総務省、文化庁、観光庁、NHK
◎出演団体等
・1日目:「松前神楽」(北海道小樽市)、「伏木一宮の獅子舞」(富山県高岡市)、「遠州大念仏」(静岡県浜松市)、古典芸能・狂言『止動方角』(山本東次郎ほか)、「佐原囃子」(千葉県香取市)、「知立の山車文楽」(愛知県知立市)
・2日目:「綾南の親子獅子舞」(香川県綾川町)、「村上の田植踊」(福島県南相馬市)、「鶴崎踊」(大分県大分市)、「南沢神楽(南部神楽)」(岩手県一関市)、古典芸能・新作能 スーパー能『世阿弥』【短縮版】(作:梅原猛、出演:梅若玄祥、片山九郎右衛門ほか)、「御所の献灯行事」(奈良県御所市)