一般社団法人 地域創造

平成23・24年度「公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業」

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写真
左上:アウトリーチ研修の様子(マルシェ弦楽四重奏団)
左下:アウトリーチ研修の様子(アンサンブル・ミクスト)
右上:手法開発研修会モデルアウトリーチの様子(伊藤麻衣子、木場大輔、麻植理恵子)
右下:手法開発研修会モデルアウトリーチの様子(朝香麻美子、佐々木千香能、小間夕起子)

 地域創造では、クラシック音楽、邦楽、ダンス、演劇の領域で地域の公共ホールを活性化する事業を実施しています。秋から今年度の事業が本格的にスタート。今回はその中から平成23・24年度「公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業」鹿児島セッションと平成24年度邦楽地域活性化事業の模様についてご紹介します。

 

●パートナーは鹿児島県文化振興財団

 アウトリーチ・フォーラム事業は、都道府県が主体となり、クラシック音楽の魅力に触れるアウトリーチ手法の開発と、地域への普及および県内ネットワーク形成を目指すものです。21年度からは研修の充実を目指し、2カ年プログラムに拡大しました。

 平成23・24年度「鹿児島セッション」では、宝山ホールを指定管理者として運営する公益財団法人鹿児島県文化振興財団が主体となって事業全体をコーディネートします。研修中心の初年度に対し、2年目となる今年度はフォーラム・アーティストによる実践的なアウトリーチ・プログラムの手法開発研修と県内市町村ホールでの公演&アウトリーチ、最後を締めくくる宝山ホールでのガラコンサートが実施されます。

 この事業の柱となっている手法開発のための滞在研修が、9月20日から25日まで鹿児島市内で行われました。鹿児島セッションのアーティストはマルシェ弦楽四重奏団と木管五重奏のアンサンブル・ミクストです。宝山ホールで丸4日にわたってコーディネーターとともにプログラム開発を行い、地元の協力を得て、坂元台小学校、小山田小学校、東桜島小学校でアウトリーチの試演が行われました。

 マルシェ弦楽四重奏団のプログラムは、ラヴェルの弦楽四重奏曲だけで「第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという4つの楽器でひとつの音楽をどうやってつくっているか」を子どもたちに伝える果敢なものでした。パート演奏、2つの楽器、4つの楽器演奏の聞き比べや、子どもたちの「猫が跳ねているみたい」「モンゴルの人が踊っているみたい」といったパート演奏のイメージを踏まえた合奏など、楽曲分析にまで踏み込んだプログラムとなっていました。

 また、音楽の楽しさをテーマにしたアンサンブル・ミクストは、サウンド・オブ・ミュージックに始まり、楽器の説明やリズム体験も織り交ぜながら、軽妙なトークで木管五重奏の醍醐味を子どもたちに伝えていました。

 学校での実地研修後、2組のアーティスト同士で意見交換も行われました。「子どもたちの意見で演奏が変わるという経験が新鮮だった」「音楽の深い世界を楽しむ方法は誰も教えてくれない。そういう大人の楽しみ方も教えられたらと思った」「言葉にすることでもっと伝えられることがあると感じた」などなど、真剣なやりとりが2時間以上にわたって続きました。

 

●バラエティに富んだ邦楽演奏グループが誕生

 邦楽地域活性化事業は、都道府県、政令指定都市が主体となり、邦楽の魅力にふれるアウトリーチ手法の開発を目的とした研修会と、3カ所での地域交流プログラムを実施し、ガラコンサートで締めくくる単年度プログラムです。今年度は、政令指定都市の千葉市で、指定管理者として千葉市美浜文化ホールなどを運営するアートプレックスちば事業体が主体となって事業全体をコーディネートします。

 こちらも9月25日から28日までアウトリーチ手法開発のための滞在研修が行われました。今回の最大のポイントは、この事業のために組まれた邦楽演奏家グループ3組が、バラエティに富んだ楽器編成で参加していることです。「さまざまな三味線音楽の魅力を紹介したい」という山田流箏曲の中香里率いる三味線チーム、「和楽器の響きを身体で感じてほしい」という生田流箏曲の伊藤麻衣子率いる箏・胡弓チーム、「日本語を歌う」をテーマにした山田流箏曲の朝香麻美子率いる箏チームが、それぞれ企画性豊かなプログラムづくりに挑戦。最終日には、花見川第二中学校で3組によるアウトリーチが行われました。

 歌舞伎で長唄奏者が演奏する勇壮な“大薩摩”から始まり、現代曲の『二種の三絃のためのソナタ』、端唄、俗曲など、三味線音楽の多様な音世界をたっぷり聴かせた中チーム。モニターをうまく活用しながら解説を行い、十七絃箏を考案した宮城道雄の『瀬音』や胡弓とのアンサンブルによる現代曲など新旧の構成で魅せた伊藤チーム。山田流の名曲『臼の声』を題材に、模造紙に歌詞を書いて箏曲の伝統的な歌い方や言葉遊びの魅力を存分に伝えた朝香チーム。いずれも邦楽の息吹にふれる新鮮なプログラムでした。

 今回の事業のディレクターを務める千葉市美浜文化ホールの太田茂孝館長は、「邦楽を学ぶいい機会だと思って応募した。私自身、いまひとつ邦楽の知識が浅く、研修でつくり上げたプログラムに自信はあったが不安もあった。しかし、中学生の反応が驚くほど良かった。このノウハウをこれからの事業にもぜひ活かしていきたい」と話していました。

 なお、アウトリーチ・フォーラムの地域での事業は12月5日から、邦楽地域活性化事業は10月30日から始まります。興味があるホールの方はぜひ現場に足を運んでいただければと思います。詳細は各担当までお問い合わせください。

 

●平成23・24年度「公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業」鹿児島セッション

◎研修プログラム
・全体研修会(6月5日/宝山ホール(鹿児島県文化センター))
・アウトリーチ研修(9月20日~25日/宝山ホール(鹿児島県文化センター))

◎市町村公演(日程/コンサート会場)
・中種子町(12月5日~8日/種子島こり~な)
・長島町(12月12日~15日/長島町開発総合センター)
・徳之島町(2013年1月16日~19日/徳之島町文化会館)
・鹿屋市(2013年2月6日~9日/鹿屋市文化会館)

◎総括公演プログラム
2013年3月2日(宝山ホール(鹿児島県文化センター))
[演奏家]
鹿屋市・徳之島町担当:マルシェ弦楽四重奏団(藤代優意・内藤歌子[Vn]、福田道子[Va]、伊藤七生[Vc])
長島町・中種子町担当:アンサンブル・ミクスト(梶川真歩[Fl]、小花恭佳[Ob]、尾上昌弘[Cl]、中田小弥香[Fg]、嵯峨郁恵[Hr])
[主催](公財)鹿児島県文化振興財団
[共催](財)地域創造

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