日本各地で脈々と受け継がれている地域伝統芸能や古典芸能を紹介する「地域伝統芸能まつり」が、2月25日(土)、26日(日)にNHKホールで開催されました。12回目となる今年は「縁(えん)」をテーマに全国から10の地域伝統芸能と2つの古典芸能が集い、約4,600人の観客を魅了しました。
1日目、全演目のトップバッターを務めたのは岐阜県揖斐川町の「谷汲踊」です。竹と切り紙で出来た彩り豊かな「シナイ」を背負い、太鼓を打ち鳴らしながら一糸乱れぬ動きで豪快に舞い踊る、オープニングにふさわしい華やかな舞台が繰り広げられました。
福島県新地町からは、お囃子も舞もすべて十代の少年が演じる「福田十二神楽」が登場。小学生の頃から7年間務めあげた神楽師たちが、集大成となる舞台を見事に演じきりました。彼らは次世代への継承にも意欲をみせ、震災復興に対しても「少しでも役立てることをしていきたい」と頼もしい言葉を残していました。
岩手県田野畑村の「菅窪鹿踊・剣舞」では、鹿踊を舞った演者が早変わりで剣舞も演じ、色鮮やかな衣装と軽やかな動きで観客を魅了。若手継承者の「まつりを通して応援してもらえることが励み。一生懸命踊ることで地元に勇気を与えたい」という力強いコメントに、会場から拍手がわき起こりました。
2日目には、島根県津和野町から「鷺舞」が登場。鉦や太鼓、唄に合わせて雄雌一対の白鷺が羽を広げて舞います。檜で出来た羽は15キロもの重さにもかかわらず、それを感じさせない優雅で風情に満ちた舞い姿に、会場中が酔いしれました。
また、宮城県石巻市からは「雄勝法印神楽」が出演しました。川に橋を架けようと何度も挑戦する様子はユーモアたっぷり。最後には神のお告げをもとに見事に橋が架かる、楽しく魅力的な舞となりました。演技のなかで、全国からの震災復興支援に対する感謝の言葉や、復興への決意が述べられる一幕もありました。
地域伝統芸能まつりのもうひとつの柱、古典芸能では、1日目に狂言『舟渡聟』が登場し、不思議な縁でつながった舅と聟のやりとりに会場が笑顔に包まれました。また、2日目の半能『融』では、被災者の追悼の意が込められた白装束でじっくり舞う優美な舞台が披露されました。
2日間の大トリを飾ったのは、群馬県沼田市の「沼田祇園囃子 おぎょん」です。子どもたちが演奏するお囃子のなか、まずは男性約50人による神社みこしが威勢良く登場。続いて女性約50人に担がれた巨大で真っ赤な天狗みこしが登場し、2つのみこしがステージいっぱいに広がると、盛り上がりは最高潮に達しました。
会場がまつりの熱気に満ち溢れるなか、最後はこの日の出演団体が舞台に再登場し、皆でみこしを担ぎ上げました。客席からは盛大な拍手が送られ、会場全体がひとつとなって、まさにテーマの「縁(えん)」さながらの雰囲気に。全国各地で受け継がれている伝統芸能は、土地と土地を結び、人の心をつないで地域を支えているということを再認識させてくれるような、感動的なフィナーレとなりました。
●第12回地域伝統芸能まつり
[会期]2012年2月25日(土)、26日(日)
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、財団法人地域創造
[実行委員]梅原猛、岡本保、鎌田東二、香山充弘、三枝成彰、下重暁子、新山賢治、鈴木健二、林省吾、山折哲雄、山本容子(50音順、敬称略)
[後援]総務省、文化庁、観光庁、NHK
◎出演団体等
・ 1日目
「谷汲踊」(岐阜県揖斐川町)
「福田十二神楽」(福島県新地町)
「三重の獅子舞」(佐賀県佐賀市)
「菅窪鹿踊・剣舞」(岩手県田野畑村)古典芸能・狂言『舟渡聟』(野村万作ほか)
「加賀獅子舞」(石川県金沢市)
・ 2日目
「小園臼太鼓踊」(宮崎県門川町)
「鷺舞」(島根県津和野町)
「小國神社 十二段舞楽」(静岡県森町)古典芸能・半能『融』(梅若玄祥ほか)
「雄勝法印神楽」(宮城県石巻市)
「沼田祇園囃子 おぎょん」(群馬県沼田市)