一般社団法人 地域創造

平成24年度「公共ホール音楽活性化事業」全体研修会報告

2012年2月1日~3日

 平成24年度公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)の参加団体やコーディネーター、登録アーティストが一堂に会する全体研修会が、2月1日から3日まで地域創造会議室と渋谷区文化総合センター大和田さくらホールを会場に開催されました。今回の研修会では、99名の応募者の中から選ばれた新規登録アーティストが華のある演奏を披露するとともに、被災地からの参加館も交えて交流が行われ、改めてそれぞれが「なぜ、おんかつなのか」について考えたプログラムとなりました。

 

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左上:香南市での事例を平成22・23年登録アーティストの大石将紀さん(サクソフォン)とコーディネーターの花田和加子さんが紹介
右上:グループに分かれて行われた企画検討
左下:デュオ・レゾネ:亀井良信さん(クラリネット)と鈴木慎崇さん(ピアノ)
右下:チェロ・奥田なな子さんとギター・松尾俊介さんの共演

◎事業の目的を明確に

 研修会は、専門のファシリテーターを招いて、参加者同士の交流を図るコミュニケーション・ゲームから始まりました。続いて、おんかつについて理解を深める講義が行われ、事例としてホールの事業担当者の立場から東松山市民文化センターの菊地俊孝さんがピアノトリオ・ミュゼとの取り組みを、またアーティストの立場からサクソフォン奏者の大石将紀さんが香南市のいちふれあいセンターでの取り組みをそれぞれ紹介しました。

 「アウトリーチ先ありきで企画をつくるところが増えていますが、そうではなくて、なぜおんかつをやるのかという問題意識をもってコンセプトをつくり、アーティストやアウトリーチ先、企画を決めてほしいと思います。そういう意味で東松山市民文化センターの取り組みは担当者としてのコンセプトが非常に明解だったことが成功につながった事例だと思います」とコーディネーターの丹羽徹さん。

 菊地さんは、おんかつに参加した問題意識について「かつては市から財団への派遣職員が買い公演を行っている状況でしたが、指定管理者制度に移行して事業のあり方を見直していた時期におんかつと出合いました。それで市民と積極的に関わり、財団がどういう目的で文化センターを運営しているのかを市民に知ってもらうための事業としておんかつを位置づけ、企画を考えました」と話していました。

 そして、学校や高齢者施設へのアウトリーチとともに、市長に文化事業をアピールするための市長表敬訪問、自治会長の集まりであるハートピアまちづくり協議会を対象にしたインリーチのためのアクティビティ(舞台上舞台での演奏とアーティストとのお茶会)、コンサート来館者に対するロビーでのアウトリーチ写真展などを次々に実施。また、おんかつに参加したことにより、受け身だった運営スタッフの意識が変わるなど、財団内での事業への理解が進み、校長会や自治会の反応も良くなったという効果についても言及されていました。

 

◎新規登録アーティストの競演

 2日目に行われた新規登録アーティストによる公開プレゼンテーションは、現役のオーケストラ・メンバーを含む7組の登録アーティストが参加した華やかな演奏会となりました。おんかつ登録アーティストとなるには、第一次の音源選考で30名弱に絞られた演奏家による生演奏でのオーディションに合格する必要があります。外部審査員は秋山和慶さん(指揮者)、小川典子さん(ピアニスト)、宮田康子さん(東京コンサーツ)、村田亨さん(テレビマンユニオン)、望月京さん(作曲家)という錚々たる顔ぶれです。

 こうして選考された登録アーティストは2日間の集合研修で地域コミュニティへのアプローチの仕方などを学んだ後、地域の公共ホールでの1泊2日の実地研修を実施しています。今回は、岐阜県山県市の花咲ホールをはじめ4カ所のホールにご協力いただき、それぞれが計画したアクティビティをコーディネーターやホール職員と共にブラッシュアップし、地元の小学校で実践しました。

 こうして準備万端整えて臨んだプレゼンテーションは、さすがに落ち着いたパフォーマンスばかりで、アクティビティのダイジェストというより演奏家としての力を知ってほしいという自信に溢れたものとなりました。

 トップバッターとなったアウトリーチ・フォーラム事業に参加経験のある新居由佳梨さん(ピアニスト)は、ニューフェイスらしく自分が志すアクティビティの内容を丁寧に紹介。「音楽にはリズム、強弱、ハーモニーという重要な3つの要素があります。でもそれだけで完成ではなく、皆さんが音楽を聴いてイメージすることが大切です」と、『キラキラ星』を黄色、青などイメージを色に例えて弾き分けるなど、わかりやすく実演していました。

 この他、兵庫芸術文化センター管弦楽団に所属している北島佳奈さん(ヴァイオリン)と奥田なな子さん(チェロ)、自分が弦を押さえてサポートする二人羽織ギターで指先から音が出ている感じを味わって欲しいという松尾俊介さん(ギター)、クラリネットとピアノのために書かれた名曲を多くの人に聞いてもらいたいという個性溢れるデュオ・レゾネ、自作の楽曲『未来へ』で夢や希望を感じ取ってもらいたいと伝えた松本蘭さん(ヴァイオリン)、人と人を繋げる歌心を大切にしているという泊真美子さん(ピアノ)と、粒ぞろいの演奏が続きました。

●平成24年度「公共ホール音楽活性化事業」全体研修会スケジュール

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●平成24年度公共ホール音楽活性化事業実施ホール(12カ所)
岩手県大船渡市(大船渡市民文化会館)、岩手県久慈市(久慈市文化会館)、岩手県奥州市(前沢ふれあいセンター)、石川県津幡町(津幡町文化会館)、群馬県太田市(太田市藪塚本町文化ホール)、埼玉県川越市(川越市市民会館)、東京都東久留米市(東久留米市立生涯学習センター)、神奈川県小田原市(小田原市民会館)、愛知県豊川市(豊川市小坂井文化会館)、滋賀県高島市(高島市文化ホール)、兵庫県加東市(加東市やしろ国際学習塾)、沖縄県浦添市(浦添市てだこホール)

 

●平成24・25年度公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト
・新居由佳梨(ピアノ)
・泊真美子(ピアノ)
・北島佳奈(ヴァイオリン)
・松本蘭(ヴァイオリン)
・奥田なな子(チェロ)
・松尾俊介(ギター)
・デュオ・レゾネ(クラリネット:亀井良信&ピアノ:鈴木慎崇)

 

●公共ホール音楽活性化事業に関する問い合わせ
芸術環境部 水上
Tel. 03-5573-4064
onkatsu@jafra.or.jp

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