平成20年度からスタートしたリージョナルシアター事業は今年で4年目を迎えます。これは、公共ホールの担当者とその地域で演劇活動をしている表現者が共同で地域交流プログラムをつくる事業で、プロの演出家等がアドバイザーとなり、プログラム内容を充実させるための助言を行います。
今年度の参加団体は、北九州芸術劇場と佐賀市文化会館の2団体。まず、6月14日に地域創造の会議室で行われた企画準備会議では、参加団体が各自のプログラムをプレゼンテーションし、その場でアドバイザーと協議、再検討したプログラム内容で、9月26日~30日に北九州芸術劇場で実施される研修に臨みました。
5日間の研修期間中、前半2日間はワークショップ(以下、WS)とセミナーです。初日は人形劇俳優の平常さんが新聞紙やほうきを使ったWSを行い、日常生活の中で身近にあるものが表現ツールになることを実感しました。
2日目に行った美術館・博物館の教育普及事業の専門家であるイデア代表の大月ヒロ子さんのWSは、子どもの時に遊んでいた風景を元にした絵をつくり、そこから言葉や文章を再構成していくものです。一人ひとりが子どもの頃に遊んでいた場所や風景を思い出し、その絵をグループ内で説明する姿は、とても誇らしく伝えたいという気持ちでいっぱいの様子。それぞれの話の中で印象に残る言葉や文章を色紙に書き出し、短冊のように切り離していきます。そしてグループ全体で色とりどりの短冊の中から選び出し、並び替えていくと、詩のような文章が出来上がります。幻想的なもの、ユーモアたっぷりなものと個性溢れる文章に、想像力と創造力が駆使されたことがうかがえます。
引き続いて、音楽活性化事業のOBアーティストでもあるブラックボトムブラスバンド(以下、BBBB)の皆さんが北九州市内の小学校へ出向いて4年生を対象にしたWSを行い、この事業の参加者に見学してもらいました。リズムに合わせて手拍子をして体の力が抜ければ抜けるほど、音の変化がわかります。音を通して子どもたちとコミュニケーションを取るBBBBの進行の上手さに参加者も目を凝らしていました。
いずれのWSも正解を探すものではなく、一人ひとりから出てきた表現に間違いはないというものです。WS終了後の振り返りセミナーでは、参加者から「初心者のための入り口がとても工夫されていて、導入部分が大切だと感じた」、講師からは「表現者が参加者に向き合うためには、表現者の人生観が見られているという意識をもつことでWSをやる側の責任を実感する」という意見がありました。
3、4日目はプログラムづくりで、5日目の最終日に発表を行います。普段の演劇活動を軸にプログラムづくりをしますが、その手法を色々な角度から見つめ直す客観性が必要になり、これが参加者にとって苦しい作業となります。そんな2日間を経て、最終日には2団体ともにプログラムの軸を明確に提案されていました。
WSを生み出す労力は、演劇作品を創作するのと同じくらいのエネルギーが要求されます。WSだからといってエネルギーが半減されるものではないということをホール側も再認識することができたと思います。これまでに参加した団体には、年間20回程度学校に出向いている方々もいます。この事業で生み出したプログラムがその地域に5年、10年と継続され、プログラム自体も成長することを期待しています。
●リージョナルシアター事業に関する問い合わせ
芸術環境部 堀木・佐藤・大垣
Tel. 03-5573-4073