アウトリーチ・フォーラム事業は、都道府県参加のもと、地域におけるクラシック音楽のアウトリーチによる事業展開の普及を目指し、平成16年度にスタートしました。21年度からは、それまでの単年度プログラムから2カ年プログラムに拡大し、より充実したネットワークづくりやノウハウの蓄積に取り組んでいます。
平成22・23年度は財団法人滋賀県文化振興事業団をパートナーとして、研修事業と滋賀県内6地域での市町村公演事業を実施しました。
この事業の最大の特徴は、都道府県が主体となって事業全体のコーディネートを行い、実際にアウトリーチ事業を行う市町村立ホールと新進アーティストに対する研修プログラムを実施し、スキルアップを図るところにあります。
滋賀セッションに参加したアーティストは、いずれもこの事業のために結成されたピアノトリオ「プリマ・ヴェーラ」、弦楽四重奏「カルテットひかり」、金管五重奏「Brass Quintet “5 Bells”」の3組です。4月下旬に草津市のしが県民芸術創造館で実施したアウトリーチ研修では、今回の事業に参加したアーティスト、コーディネーター、県、市町村の担当者が一堂に会し、市町村公演事業で行うアウトリーチのプログラムづくりを行いました。また、通し稽古や実際に学校へのアウトリーチも行い、その内容についてスタッフやアーティスト間で活発な議論が展開されました。アーティストからは、「人に何かを伝えるということがこんなにも難しいことだとは思っていなかった。演奏家としての自分を見つめ直す大変有意義な研修であった」との声が多数聞かれました。
アウトリーチ研修を経て、さらにプログラムに磨きをかけた3組は、5月から7月にかけて、それぞれ滋賀県内の2地域で、アウトリーチとコンサートを組み合わせた市町村公演事業を行いました。アンサンブルの醍醐味と音楽を通して子どもたちに夢をもつことの大切さを伝えたプリマ・ヴェーラ。さまざまな手法で楽曲や子どものイマジネーションにアプローチしたカルテットひかり。アイデア溢れる楽器紹介と華やかな演奏を全面に出したBrassQuintet “5 Bells”。いずれもアンサンブルの特徴を存分に生かしたプログラムを展開しました。
そして7月30日、この滋賀セッションの集大成として、しが県民芸術創造館を会場にガラコンサートを実施しました。これまで滋賀県内1,500人以上の子どもたちに音楽の楽しさや素晴らしさを伝えてきた3組のアーティストが再度集結。演奏に加えて各地での活動報告も行い、地域に根差した特色あるコンサートとなりました。
今回の滋賀セッションを担当した滋賀県文化振興事業団の西前悠さんは、「研修などを通じてアーティストの皆さんの音楽に対するひたむきな姿勢を間近に見ることができたのは大変貴重な機会だった。今回の事業でさまざまな方と出会い、改めて音楽のもつ広がりや可能性を肌で感じることができた」と感想を述べていました。今回の事業をきっかけに、さらなるアウトリーチ手法の発展と普及が期待されます。
なお、今年度は滋賀県と同様に、和歌山県でも本事業の2カ年目のプログラムを実施中です。10月から和歌山県下6市町（橋本市、新宮市、紀の川市、紀美野町、有田川町、上富田町）で市町村公演事業を実施し、来年1月28日に田辺市の紀南文化会館にて総括のガラコンサートを開催する予定です。
中：弦楽四重奏「カルテットひかり」
下：金管五重奏「Brass Quintet “5 Bells”」
●平成22・23年度「公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業」滋賀セッション
［主催］（財）滋賀県文化振興事業団
［共催］（財）地域創造
［市町村公演事業実施団体］
甲賀市（旧土山町、旧信楽町）、高島市、東近江市、日野町、愛荘町
［実施日程］
2010年10月4日～2011年7月30日
［チーフコーディネーター］
児玉真（いわき芸術文化交流館アリオスチーフプロデューサー、地域創造プロデューサー）
［コーディネーター］
赤木舞（昭和音楽大学音楽学部専任講師）、花田和加子（ヴァイオリニスト）、本田恵介（（財）熊本県立劇場事務局次長兼企画事業課長）
［アシスタントコーディネーター］
佐藤さやか（調布市せんがわ劇場）、島田和音（昭和音楽大学研究員）、角井智絵（（株）日本国際音楽企画 宝塚エジュケーションクラブ講師）
［演奏家］
・東近江市、高島市担当
プリマ・ヴェーラ
（川村伸子［Vn］、高橋麻理子［Vc］、志鷹美紗［Pf］）
・甲賀市（旧土山町）、日野町担当
カルテットひかり
（栗山奈津［Vn］、佐藤友香［Vn］、中田美穂［Va］、足立成礼［Vc］）
・甲賀市（旧信楽町）、愛荘町担当
Brass Quintet “5 Bells”
（大山啓介［Tp］、吉田綾子［Tp］、堀秀樹［Hr］、新山久志［Tb］、今川英悟［Tu］）
●公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業に関する問い合わせ
芸術環境部 水口
Tel. 03-5573-4185