一般社団法人 地域創造

仙台市青葉区 活動再開したせんだいメディアテーク

地域創造では、東日本大震災の被災地域を支援する取り組みとして、4月11日から財団のホームページで関連情報を発信してきた。公立文化施設の被災状況一覧を参照していただければと思うが、甚大な被害により再開の見込みが立っていないところがある一方で、活動を再開したところもでてきている。5月3日に部分開館を果たし、市民と共に震災に向き合う活動を立ち上げたせんだいメディアテーク(以下、メディアテーク)を訪ねた。

 

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オープンスクエアで行われた「とっておきの音楽祭」のコンサート
撮影:大河内禎

6月5日、ケヤキ並木が青々と茂る街中に限って言えば、震災の影響が目に付かないほど日曜日の風景を取り戻していた。この日、仙台では、障害のある人もない人も一緒に演奏する「とっておきの音楽祭」が開催され、街中30カ所で全国から集まった265団体が思い思いに音楽を楽しんでいた。夕方から始まった市役所前広場でのフィナーレでは、長崎県雲仙市が拠点の勤労障害者の和太鼓集団や、被災しながら釜石から駆けつけたアマチュア・バンド、「がんばれ宮城」「がんばれ東北」などの幟とともに復興ソング『青い大地に夢は始まる』を熱唱した小学生などが、音楽を原動力に、力強く、楽しく会場を沸かせていた。

定禅寺通に面したメディアテーク1階のオープンスクエアもこの音楽祭の会場になっており、10団体がクラシックの演奏をして賑わっていた。5階から7階はまだ閉鎖中で、7階にあった事務所とスタジオのメディア機材を2階に移し、活動が再開されていた。
  メディアテークは大規模災害時のボランティアセンターとして位置づけられていたが、当初は被害が軽微だった1階さえ利用できなかったという。しかし、「建物が壊れているからといって何もしなくていいのか。こういう時だからこそ地域に対して何ができるかが問われている。使用できそうなスペースをできるだけ早く補修して、メディアテークを市民が震災に向き合うための場にすることが最大の地域貢献になると考え、2本柱による事業計画をつくり、市民にメディアテークの必要性を訴えた。昨年10周年を迎えたのを機に、これからは市民と共にじっくり手づくりするような取り組みが重要だと考えていたところに今回の震災が発生した。今改めてその方向性が間違っていなかったことを実感している」と佐藤泰副館長は振り返る。
  その2本柱が、オープンスクエアを人が集い語り合いながら震災復興・地域社会・表現活動について考える場にする「考えるテーブル」であり、市民による震災の「前・そのとき・その後」の公的な記録の収集とアーカイブ化を支援する「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の立ち上げだった(下記データ欄参照)。
  5日は、考えるテーブルで支援しているアーティストのタノタイガによる石巻の瓦礫撤去ボランティアの送迎バスも運行され、学芸員と共に20人の参加者が現地に出かけていた。「8月にはその活動記録と地元の人たちからたくさんもらった船乗りの定番土産であるワニやアルマジロの剥製など想い出が詰まった“もらいもの展”をやる予定です」と学芸員の清水建人さん。
  清水さんをはじめ現場の学芸員たちからは、「アートという言葉ですませてきたものを、虚をはぎ取って一から考えていかないとメディアテークがある意味がない」「数字だけではなく、知恵が歌になって伝承されるような震災を文化として継承していくことが大切だと思う」「物語のような余白をもって伝えることも必要だと思う」「展覧会は見るもの、与えられるものではなく、メッセージを社会に具現化する装置としてあるものだということを市民に伝えたい」「過酷な経験をした人たちがだんだんと日常に戻りつつある現場で、静かにそのことを受け止めるような場をつくりたい」という震災と向き合おうとする決意の言葉が聞こえてきた。
  5月3日に立ち上がった「3がつ11にちをわすれないためにセンター」には、現在20人が登録して市民メディアとして活動を始めている。何十年もそこで暮らし、地域と関わり続ける人々による記録には職業メディアを超える力があるはずだ。センターの活動については、いつか改めてレポートできればと思う。

(坪池栄子)

 

●せんだいメディアテーク
美術や映像文化の活動拠点であり、市民、アーティスト、学生などすべての人々がさまざまなメディアを通じて自由に情報を使いこなせるように支援している文化施設。3月11日の本震により7階の吊り天井が一部崩落するなど被災。「当日は、自主事業の『卒業設計日本一決定戦』展を開催中だった。天井崩落のホコリでスプリンクラーが稼働するなど想定外の事態も発生したが、幸い被災者を出さずに済んだ。館内を手分けして捜索した後、70人の職員は停電を避けて翌朝集合を目指して夕方4時半に解散。翌日からは、2人の当番制を敷いて守衛室で訪問者の対応にあたった」(佐藤泰副館長)

 

●「考えるテーブル」
主なプログラムは、参加者とさまざまなテーマで語り合う「てつがくカフェ」、タノタイガによる瓦礫撤去ボランティア「タノンティア」の支援、アーティストの中崎透によるメディアづくりのワークショップ「制活支援編集室」、名取市の北釜で被災した写真家の志賀理江子による展覧会制作ワークショップ「コール・アンド・レスポンス」、「とっておきの音楽祭」などの市民文化活動との連携。

 

●「3がつ11にちをわすれないためにセンター」
震災を記録するための機材提供や技術的サポート、記録のアーカイブ化とインターネットでの公開(http://recorder311.smt.jp)、記者会見ブースの設置およびユーストリームでの配信などを行う。
※地域創造HPの震災関係情報アドレス
http://www.jafra.or.jp/j/guide/navi/data/higashinihon.html

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