日本各地で脈々と受け継がれている地域伝統芸能や古典芸能を紹介している「地域伝統芸能まつり」が、2月26日(土)、27日(日)の両日、東京・渋谷のNHKホールで開催されました。11回目を迎える今年は「荒ぶる(すさぶる)」をテーマに、全国から11の勇壮な地域伝統芸能と4つの古典芸能が集い、約5,000人の観客を魅了しました。
2日間のオープニングを飾ったのは、広島県北広島町からの登場となる「芸北神楽」です。広島県は“神楽の宝庫”と言われ、芸北地方だけで神楽を伝承している団体は200余りもあるそうです。そんな中から、有田子ども神楽団の子どもたちによる「悪狐退治」と有田神楽団による「八岐大蛇」のダイナミックで幻想的な迫力ある舞台が披露されました。
出演後のインタビューでは、子どもたちが普段の練習について、どの子も「楽しい」と笑顔でコメントするなど、伝統が次世代に受け継がれていく一端を見た思いがしました。
また、岩手県陸前高田市からは、長さ20メートル、45度の角度で立て掛けられた梯子の上で虎が舞う「根岬梯子虎舞」が登場しました。今回はホールの都合上9メートルほどの練習用の梯子を使用しましたが、舞台の上限いっぱいの高さでの迫真の演技に、誰もが手に汗握るハラハラドキドキの連続で会場からは何度も拍手が沸き起こりました。
2日目は、長野県中野市から「日和山神社の鬼獅子」が出演しました。この「地域伝統芸能まつり」では全国各地の獅子舞を数多くご紹介してきましたが、この「日和山神社の鬼獅子」は獅子と鬼が競演するという大変珍しい演目です。静かに堂々と舞う獅子と身体を赤や黒で塗りたくり大声をあげたりとび跳ねたりする鬼との、対象的な両者の対決を熱演し、観客を魅了しました。
地域伝統芸能まつりのもうひとつの柱が古典芸能です。今回は、狂言『萩大名』、能『紅葉狩 鬼揃』、狂言『六地蔵』、半能『石橋 大獅子』と4つの演目が演じられました。狂言の面白さと壮麗な能の世界を堪能できたのではないでしょうか。
2日間の大トリを飾ったのは、鹿児島県曽於市の「弥五郎どん祭り」です。勇壮な大隅弥五郎太鼓の演奏に続いて、いよいよ弥五郎どんの登場と思いきや、子どもたちに引かれて登場した小さな弥五郎どんの姿に思わず笑みがこぼれます。その後、太鼓と鐘のリズム、会場からの手拍子に乗って登場した一丈6尺(4.85メートル)の大きな弥五郎どんの堂々とした姿が会場を圧倒。まつりの本番さながらの熱気に包まれる中、この日の出演団体が舞台上に再登場し、この日に披露された素晴らしい芸能とそれを保存・継承してこられた保存会の方々への敬意と今後への期待が合い交じった盛大な拍手が会場から惜しみなく送られ、感動のフィナーレとなりました。
●第11回地域伝統芸能まつり
[会期]2011年2月26日(土)、27日(日)
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、財団法人地域創造
[実行委員]梅原猛、岡本保、鎌田東二、香山充弘、黒木隆男、三枝成彰、下重暁子、鈴木健二、林省吾、山折哲雄、山本容子(50音順、敬称略)
[後援]総務省、文化庁、観光庁、NHK
◎出演団体等
・第1日:「芸北神楽」(広島県北広島町)、「新城の囃子曲持」(神奈川県川崎市)、「根岬梯子虎舞」(岩手県陸前高田市)、古典芸能・狂言『萩大名』(茂山千五郎ほか)、古典芸能・能『紅葉狩 鬼揃』(梅若玄祥ほか)、「牛深ハイヤ踊り」(熊本県天草市)、「表佐太鼓踊り」(岐阜県垂井町)
・第2日:「朝倉の梯子獅子」(愛知県知多市)、「下平井の鳳凰の舞」(東京都日の出町)、「日和山神社鬼獅子」(長野県中野市)、「根子番楽」(秋田県北秋田市)、「伊勢大神楽」(三重県桑名市)、古典芸能・狂言『六地蔵』(山本東次郎ほか)、古典芸能・半能『石橋 大獅子』(観世清和・三郎太)、「弥五郎どん祭り」(鹿児島県曽於市)