一般社団法人 地域創造

平成22年度「邦楽地域活性化事業」(熊本)終了報告

 地域創造では、都道府県の中核ホールと共同で、研修会や域内市町村でのアウトリーチ、コンサートなどの事業を実施することで、都道府県に、邦楽の特色を活かしたアウトリーチの手法および事業展開のノウハウを蓄積することを目指す「邦楽地域活性化事業」を実施しています。
  平成21年度に開催した島根県でのモデル事業の実施を経て、今年度は、財団法人熊本県立劇場をパートナーとして実施しました。
  (財)熊本県立劇場は、地域創造のクラシックによる活性化事業、アウトリーチ・フォーラム事業の参加をきっかけに、その後も継続して独自にアウトリーチ事業を継続するなど、地域交流プログラムに積極的な取り組みを進めています。今年度は、(財)熊本県立劇場・プロデューサーの本田恵介さんが、事業を統括するディレクターを務め、新たに邦楽分野のノウハウ獲得にも積極的に取り組みました。
  この事業では、密度の濃い研修会を実施しました。熊本県立劇場を会場に、3泊4日の日程で、演奏家全員と各都市を担当するコーディネーターが一堂に会し「手法開発研修会」を行いました。それぞれ担当する市ごとにチームに分かれ、地域交流プログラムで訪れる小学校でのアウトリーチの内容を作り上げる作業を行いました。
  小学校でのアウトリーチと、ホールでのワークショップやコンサートからなる地域交流プログラムでは、3組9名の邦楽演奏家が、「手法開発研修会」で熟成させたアウトリーチプログラムを携え、熊本県内の3市(荒尾市、宇城市、人吉市)に赴きました。
  二十五絃箏を駆使する若手演奏家の佐藤亜美さん、木村麻耶さん、町田光さんのチームは荒尾市を、宮城道雄の魅力を伝える澤村祐司さん、利根英法さん、見澤太基さんのチームは宇城市を、上方(京都・大阪)の地歌の魅力を伝える菊央雄司さん、伊藤志野さん、小林静純さんのチームは人吉市を担当し、それぞれのチームが、自身の特色を生かし、邦楽器が奏でる音の魅力を伝えました。
  各市のホールが趣向を凝らしたのが「ホールプログラム」です。荒尾市ではコンサート、宇城市と人吉市ではワークショップを実施しました。最終日に荒尾総合文化センターでコンサートを開催した荒尾市では、演奏家・佐藤さんたちが得意とする二十五絃箏の楽曲を中心に、地元ゆかりの炭坑節や、荒尾市で育った詩人・海達公子の詩にメロディーを乗せた作品を、荒尾の子どもたちの合唱に、二十五絃箏が伴奏するコラボレーションも実現しました。コンサートには前日まで実施した小学校でのアウトリーチで箏に関心を持った児童たちも数多く来場していました。
  1月15日には、事業のフィナーレを飾るガラコンサートを熊本県立劇場で開催しました。各3チームによる演奏の後、最後に演奏家全員による合同曲『日本の魂~九人の邦楽器奏者のための序・破・急~』を演奏しました。この曲は熊本県立劇場が、今回のコンサートのために、新たに熊本市の作曲家・光永浩一郎さんに委嘱した作品です。また、地域交流プログラムを担当した各市のホールから職員らがガラコンサートのステージスタッフとして参加し、熊本県立劇場を中核としたネットワーク形成が実現したコンサートになりました。
  ディレクターの本田さんは、「県内各市のホールとの連携により、邦楽という難しい分野での地域交流プログラムとガラコンサートを実現できたことは、関係した全員にとって自信になると思う。事業をとおして得たノウハウを活かすためにも、邦楽に関する事業を継続していきたい」と感想を述べていました。
  地域創造では今回の成果を踏まえ、平成23年度は埼玉県で事業を実施する予定です。邦楽事業に関心がある各団体はぜひご注目いただき、今後の事業参加をご検討ください。

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写真:各市の市町村ホールプログラムより
(左上:荒尾市のコンサート/右上:宇城市のワークショップ/左下:人吉市のワークショップ)

●平成22年度邦楽地域活性化事業
[主催]熊本県、財団法人熊本県立劇場
[共催]財団法人地域創造
[地域交流プログラム実施団体]荒尾市、人吉市、宇城市
[実施日程]2010年8月~2011年1月
[ディレクター]本田恵介(熊本県立劇場プロデューサー)
[コーディネーター]児玉真(いわき芸術文化交流館アリオスチーフプロデューサー、地域創造プロデューサー)、谷垣内和子(社団法人日本芸能実演家団体協議会 芸能文化振興部)、山﨑篤典(島根県立いわみ芸術劇場名誉館長)、米澤浩(邦楽演奏家、NPO法人日本音楽集団])
[アドバイザー]杵屋五司郎(邦楽演奏家)
[演奏家]荒尾市担当:佐藤亜美、木村麻耶、町田光/宇城市担当:澤村祐司、利根英法、見澤太基/人吉市担当:菊央雄司、伊藤志野、小林静純

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