一般社団法人 地域創造

平成22年度「都市行政文化懇話会」終了報告

都市行政文化懇話会報告
~全国から21市長が集い、文化・芸術による地域づくりをテーマに懇談

 文化・芸術による地域づくりに高い関心をお持ちの市長の皆様をお迎えした平成22年度 「都市行政文化懇話会」が10月18日に地域創造会議室で催されました。
  講師としてご協力いただいたのは、「ベネッセアートサイト直島」を立ち上げ、「越後妻有アートトリエンナーレ」「瀬戸内国際芸術祭」の総合プロデューサーでもある福武總一郎氏(株式会社ベネッセホールディングス取締役会長)、懇話会には2度目の登場となる創造都市研究の第一人者である佐々木雅幸氏(大阪市立大学都市研究プラザ所長)、地域のさまざまな課題をアートで解決する取り組みを行っているNPO法人プラス・アーツ理事長の永田宏和氏です。
  福武氏は、自らの実践を踏まえ、「企業経営とアート」をテーマに、直島の再生と瀬戸内国際芸術祭の事例について話されました。40歳で東京から故郷の岡山に戻り、180度物事の見方が変わったという福武氏は、「人間は自然の中で生かされている動物であり、東京には人間というキーワードがない」と、東京を反面教師とした地域づくりを決意。福武学術文化振興財団、福武教育文化振興財団、直島福武美術館財団、文化・芸術による福武地域振興財団を企業の株主にすることで、企業の利益の一部を活用してこうした地域づくりに20年にわたって取り組んできたと言います。
  「日本は個性と魅力のある地域の集合体になるべきだ。私は世界の人から絶対に注目される場所をつくるぞというつもりでやってきた。人口3,300人の直島に現在では年間40万人の観光客が訪れ、その2割が海外から。国際観光振興機構による“日本が世界に誇る4つの場所”にも選ばれた。東京はあるものを壊してないものをつくるが、あるものを積み上げて活かしていく地域づくりでなければダメだと思っている」という実践者の言葉はとても重いものでした。
  佐々木氏は、1930年代に米国が世界大恐慌から立ち直るために行ったニューディール政策で芸術家を雇用して社会の活力を回復しようとした取り組みから話をスタート。英国におけるアーツカウンシルの成り立ち、近年注目されているアートによる都市再生の事例、また、クリエイティブ・クラス(創造階級)が社会の駆動力になるというリチャード・フロリダの「創造階級論」など、創造都市についての理解を深める基礎知識をわかりやすく解説されました。
  NPO法人プラス・アーツの企画で「イザ!カエルキャラバン!」と題したアートを活用した防災訓練プロジェクトを全国で展開している永田氏は、その具体的な取り組みについて紹介されました。アーティストの藤浩志さんとのコラボレーションで出来上がったこのプロジェクトは、阪神・淡路大震災10周年記念でその災害体験を次世代の子どもたちに伝える方法を模索する中で立ち上がってきたもの。
  「神戸の被災者167人から収集した体験談から教訓や技を抽出し、アートの力、デザインの力を活用して子どもたちに伝えていくことを考えた」とのことで、「ゲーム感覚で楽しみながら防災を学べる」「たくさんの人が集まる」「ファミリーで参加できる」防災訓練として2005年~09年に13都道府県で60回以上実施されたそうです。「『+arts』で地域の課題を具体的に解決できる」という永田氏の取り組みに、市長の皆様も大変関心をもたれていらっしゃいました。
  このほか、公共ホール音楽活性化支援事業協力アーティストの礒絵里子さん(ヴァイオリン)と、笹久保伸さん(クラシックギター)のコンサートも行われるなど、和やかな懇話会となりました。

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左:福武總一郎氏の講演
右:恒例のミニコンサートでは、礒絵里子さん(左)と笹久保伸さんが素晴らしい演奏を披露

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