一般社団法人 地域創造

地域創造フェスティバル2010報告

地域創造フェスティバル2010報告
2010年8月3日~5日

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写真
左上:調査研究結果報告シンポジウム 新[アウトリーチのすすめ]
右上:邦楽デモンストレーション(箏:山野安珠美・市川慎・小池摩美)
左下:ダン活プレゼンテーション(上村なおか&笠井瑞丈)
右下:おんかつプレゼンテーション(ヴァイオリン:小野明子、クラシックギター:益田正洋)

 8月3日から5日までの3日間、東京芸術劇場を会場に地域創造フェスティバルが開催されました。今年で3回目となるこの催しは、地域創造の事業を広く紹介するとともに、公共ホール、自治体職員の方々の今後の事業のアイデア探しやネットワークづくり、情報交換の場となることを目的としています。今回から現代ダンス活性化事業の登録アーティストによるプレゼンテーション、演劇セミナー、情報交流コーナーなどプログラムも拡充され、また連日にわたって交流会が開催されるなど、地域創造の事業の柱のひとつとなってきました。連日の猛暑にもかかわらず、全国から350人以上の方にご来場いただき、関係者の皆様には心からお礼申し上げます。

●これからのアウトリーチのあり方を探る
 オープニングプログラムとして、当財団が平成20・21年度の2カ年にわたって実施した調査研究事業『新[アウトリーチのすすめ]』に関する調査結果を報告するシンポジウムが開かれました。調査を担当したニッセイ基礎研究所の大澤寅雄さんが、地域創造の事業だけで304団体延べ1,200回行われるほどに広がったアウトリーチについて、実施先の学校の先生および参加した児童を対象に実施したアンケート結果を中心に報告。続いて研究会委員で調査も担当した同研究所芸術文化プロジェクト室長・吉本光宏さんの司会により、委員の大月ヒロ子さん、熊倉純子さん、堤泰彦さんと児玉真/津村卓・地域創造プロデューサーが、報告書では伝えきれなかった点について語り合いました。各地に広まったアウトリーチについて改めて問題提起をするとともに、アウトリーチができるアーティストの開拓や育成、コーディネーターの役割と重要性についてなど、活発な議論が交わされました。
  また、調査研究を受けて、「教育との連携」「福祉との連携」をテーマにしたシンポジウムが5日にも開催されました。福祉分野で数々のワークショップを実施している体奏家・新井英夫さん、障がいのある人たちと社会を繋ぐ活動を展開するエイブル・アート・ジャパン事務局長の太田好泰さん、教育学の立場からワークショップ・デザイナーの育成に尽力している青山学院大学教授の苅宿俊文さん、津村プロデューサーが、それぞれの立場から取り組みや考え方を披露。なかでも教育学的見地からアーティストによる芸術のアウトリーチが「コミュニティ形成(仲間づくり)の教育」に大きな役割を果たせるとした苅宿さんの言葉は、シンポジウムの参加者を大いに勇気づけていました。

●今年スタートのプログラム
 今年から本格的にスタートした公共ホール現代ダンス活性化支援事業登録アーティストによるプレゼンテーションは、2日間にわたり、2つの小ホールを会場に行われました。16人(組)のダンサーが30分の持ち時間でパフォーマンスとワークショップを行い、参加者は鑑賞とワークショップ体験を満喫しました。「それぞれのアーティストによって表現も手法も違う。それを凝縮して体験できてよかった」という感想があちこちで聞かれました。
  また、公共ホール演劇ネットワーク事業(以下、演ネット)の関連セミナーでは、演ネットで学校でのアウトリーチを行った南河内万歳一座代表で劇作家・演出家の内藤裕敬さんによる音楽を使ったイメージ遊びのワークショップ(50分)と、苅宿さん、群馬大学教授の茂木一司さんをパネリストに招いた教育学的見地からのワークショップの分析が行われました。
  昨年から、島根県で実施したモデル事業を皮切りに本格的にスタートした邦楽地域活性化事業(都道府県等が主体となり、地域創造が派遣するコーディネーターと共に邦楽演奏家の選定や研修会などを実施し、域内市町村のホールと学校での地域交流プログラム、県のホールでのガラコンサートを実施)についての紹介も行われました。セミナーでは、児玉プロデューサーが、「ワークショップへの期待はクラシック音楽よりも強い。楽器に触るワークショップは地域のホールで行い、間近に演奏する姿を学校へのアウトリーチで見せ、県立ホールでガラコンサートを開催するという3段階の構成を考えた」と事業の組み立て方を説明。モデル事業のコーディネーターを務めた日本音楽集団の米澤浩さんは、「アウトリーチとは何か、学校演奏会とは何が違うのか、実演家が把握し、もっと浸透させていくことが必要。また、しきたりなどわかりにくい邦楽の世界だが、ガラコンサートを実施したことでホールスタッフのワークショップにもなったことが大きな成果だった」と語りました。セミナーの後はモデル事業OBアーティストによるデモ演奏も行われ、邦楽事業の可能性をアピールしました。

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※今回から交流にも力を入れ、アーティスト、ホール職員等が出会う連日の交流会に加え、「情報交流コーナー」として、

演劇の自主事業を活発に行っている全国15の劇場が出展した公共ホール紹介ブースのほか、

さまざまな分野の公演情報を入手できるコーナーや打ち合わせコーナーも設置。

●44組のアーティストがプレゼンテーション
 おんかつ関係のプログラムも充実していました。3日間を通してリハーサル室を会場に行われたおんかつ関連アーティスト44組によるプレゼンテーションでは、アーティストそれぞれが工夫を凝らした楽曲解説、迫力ある演奏が次々に披露されました。
  また、セミナーでは、基礎講座に加え「おんかつ事業の発展形をさぐる~応用プログラムの事例から」と題した応用講座が開催されました。応用講座では、ワークショップを重ねて地域の伝統芸能である神楽とクラシック音楽がコラボレーションしたオリジナル作品をつくり上げた大分県豊後大野市の『神楽オペラSHINWA~アマテラスとスサノオ』と、同じ小学校に3カ月間で4回のアウトリーチを行い、また、ホールでも子どもプロデューサー養成講座と題して連続ワークショップを行った福岡県直方市「田村緑と音楽であそぼう」シリーズ(→参照)を紹介。深化するおんかつ事業の可能性を提示しました。最終日のおんかつシンポジウムでは、地元自治体との連携に取り組んできた昭和音楽大学や東京音楽大学、神戸女学院大学の事例を基に、音楽分野における地域と大学の協働について熱心な意見交換が行われました。

●地域創造フェスティバル2010プログラム

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●「地域創造フェスティバル2010」に関する問い合わせ
芸術環境部 友田
Tel. 03-5573-4064

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