一般社団法人 地域創造

平成21年度「邦楽モデル事業」開催

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写真
左上:益田市ワークショップの様子(会場:ふれあいホールみと、アーティスト:山野安珠美・市川慎・小池摩美)
右上:雲南市ワークショップの様子(会場:雲南市古代鉄歌謡館、アーティスト:奥山益勢、佐久間景子、樋口千清代)
左下:津和野町アウトリーチの様子(会場:津和野町立津和野中学校、アーティスト:片岡リサ、岡村慎太郎、清野樹盟)
右下:ガラコンサート(いわみ芸術劇場)

地域創造では、これまで行ってきた伝統文化による地域づくりの支援や、公共ホール活性化事業での取り組みを踏まえ、邦楽による地域活性化のための事業を検討してきました。特に、平成14(2002)年度より小中学校において日本の伝統楽器の教育が取り入れられたこともあり、ホールと学校の連携を意識して検討を進め、平成21年度8月より、島根県立いわみ芸術劇場をパートナーとしてモデル事業を実施しました。


●県立ホールが主体となった邦楽モデル事業の枠組み

 邦楽にあまり馴染みのない公共ホールも多いことから、今回の邦楽モデル事業では県立ホールが主体となってコーディネートを行い、市町村ホール、演奏家、地域創造が派遣するコーディネーターが協働して、研修会や打ち合わせを行いながら事業を進める方式を取りました。
  主なプログラムは、邦楽アウトリーチの手法を開発する研修会、県立ホールのサポートにより県内市町村で実施する地域交流プログラム(学校アウトリーチと市町村ホールプログラム)、県立ホールでの演奏家全員が参加する総括的演奏会などです(下記データ欄「事業の流れ」参照)。
  特にいわみ芸術劇場の山﨑篤典館長がディレクターとなって現地事業を統括したことで、県立ホールの役割が明らかになり、地域の実情やニーズに沿った事業企画が実現しました。
  地域交流プログラムは益田市、雲南市、津和野町で実施しました。小学4年生から中学3年生まで9校12クラスでアウトリーチを行い、ホールプログラムとしては、ふれあいホールみと(益田市)、古代鉄歌謡館(雲南市)、日原山村開発センター(津和野町)でワークショップを実施しました。事前のヒアリングで学校からの邦楽器の体験に関するリクエストが多かったことを受け、学校と地域のホールの役割分担も意識しながら、学校アウトリーチは鑑賞に主眼を置いた内容とし、市町村ホールのプログラムは体験型ワークショップにしました。
  事業に参加した演奏家は、公共ホール音楽活性化事業の登録アーティストの経験もある筝曲の片岡リサさんをはじめとした9名で、3人1組のチームを組み、各チームが1市町村を担当しました(演奏家詳細は下記データ欄参照)。


●研修会の充実

 今回特に力を入れたのが研修会です。8月25日に関係者が一堂に会した「全体研修会」では、チーフコーディネーターを務めた児玉真さんから邦楽事業の趣旨やホールがアウトリーチを実施する意義と注意点などについてのレクチャーを受けました。続いて、片岡さんによる参加者を生徒に見立てたアウトリーチのデモンストレーションも行われ、参加者はアウトリーチの具体的なイメージをつかみました。
  また、今回挑戦したことのひとつに、「各学校の先生にもプログラムづくりに参加してもらいたい」という山﨑ディレクターの呼びかけのもと、先生たちに最初の全体研修会から事業に参加していただいたことがあります。これにより、演奏家と市町村ホールやアウトリーチ先の学校が現地打ち合わせを行う10月の「市町村個別研修会」ではより具体的な企画打ち合わせが行われ、先生たちの意見を取り入れたプログラムづくりが可能となりました。また、生徒への事前の関連学習を実施された学校も多く、大きな成果がありました。
  11月24日から26日まで実施された「手法開発研修会」では、コーディネーターと演奏家が地域のホールや学校の先生のニーズを踏まえたプログラムづくりを2泊3日の集中合宿で行いました。片岡さん(箏)、岡村慎太郎さん(三味線)、清野樹盟さん(尺八)による津和野中学校での先行アウトリーチを参考にしながら、益田市チームと雲南市チームのメンバーがプログラムの最後の詰めを行いました。「邦楽での共演者との練習は緩急や呼吸の合わせを確認するぐらいのことが多いので、2泊3日と聞いた時には驚いたが、やってみると納得。共演者とこんなに長い時間一緒に準備をしたことは初めてで、とても新鮮な体験だった」と雲南市チームの奥山益勢さん。現代邦楽を得意とする益田市チームと、古典を得意とする雲南市チームがお互いのランスルーを見学し、それぞれ自分たちのプログラムの特徴を再確認した場面もありました。


●子どもたちに邦楽の魅力を伝える鑑賞型アウトリーチ

 学校アウトリーチでは、演奏家が子どもたちの集中力を引き出すために、曲の情景やその曲への想いを語りかけながら演奏を行いました。『六段の調』や『鹿の遠音』などの古典曲から地歌、宮城道雄作品など幅広い内容の曲で邦楽の魅力を伝えた津和野町チーム、通常の十三弦箏に加えて低音を奏でる十七弦箏を用意し、沢井忠夫作品を中心に箏の響きと表現の多様さを伝えた益田市チーム、自分たちの所属する山田流筝曲の特徴である箏歌を出雲地方が題材となった古典曲で伝えた雲南市チームと、それぞれに特徴あるプログラムを展開しました。本物の邦楽にふれた子どもたちは、「テレビで聞いたりした音と違って驚いた」「お箏や三味線を弾きながら歌うのが凄いと思った」などの感想を述べていました。


●市町村ホールでの体験型ワークショップと県立ホールでのガラコンサート

 市町村ホールでのワークショップでは、箏を20面使っての体験プログラム(益田市)、箏歌の発声法の体験や、同じ歌詞が使われている出雲神楽の神歌と山田流筝曲の曲との比較(雲南市)、箏と尺八の体験プログラム(津和野町)が行われ、学校アウトリーチを体験した生徒をはじめ、幅広い年代層の参加者が邦楽を楽しく学びました。
  1月17日には、プログラムの最後を飾るガラコンサートがいわみ芸術劇場で開催され、チームごと3組の演奏の後、今回の公演のために作曲者の寺嶋陸也さんにより邦楽版にアレンジされた、グラントワ「いわみ合唱塾」の委嘱作品『星の美しい村』を、全演奏家9名が流派を越えて合奏しました。合唱パートは益田市ジュニア合唱団が担当し、事業の締めくくりにふさわしい共演となりました。
  地域創造では本年度の邦楽モデル事業の成果を踏まえ、平成22年度より邦楽事業を本格的に実施します。各団体の皆さまにおかれましては、今後事業へのご参加をぜひご検討ください。


図 邦楽モデル事業のフレーム
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●平成21年度「邦楽モデル事業」
[主催]島根県、財団法人島根県文化振興財団
[共催]財団法人地域創造
[地域交流プログラム実施団体]益田市、雲南市、津和野町
[実施日程]2009年8月25日~2010年1月17日
◎ディレクター
山﨑篤典(島根県芸術文化センター「グラントワ」いわみ芸術劇場 館長)
◎コーディネーター
児玉真(いわき芸術文化交流館アリオスチーフプロデューサー、地域創造 プロデューサー)、壹岐達朗(NPO法人舞台芸術21ネットワーク 代表、NPO法人和のメソッド 理事)、谷垣内和子(社団法人日本芸能実演家団体協議会 芸能文化振興部)、米澤浩(邦楽演奏家、NPO法人日本音楽集団運営委員長)
◎演奏家(カッコ内は今回の担当楽器)
益田市担当:山野安珠美、市川慎、小池摩美(以上箏)
雲南市担当:奥山益勢(箏)、佐久間景子(箏・三味線)、樋口千清代(箏)
津和野町担当:片岡リサ(箏)、岡村慎太郎(箏・三味線)、清野樹盟(尺八)

●邦楽モデル事業の流れ
【8月】
◎全体研修会・市町村ホール担当実務研修会(25日/いわみ芸術劇場)
*顔合わせ、事業説明、基礎講座、アウトリーチ体験、学校・市町村担当者と演奏家・コーディネーターの打ち合わせ
【10月】
◎市町村個別研修(益田市:19日/雲南市:21日/津和野町:28日)
*現地下見、学校現地打合せ、市町村プログラム内容確認
【11月】
◎地域交流プログラム手法開発研修会(24日~26日/いわみ芸術劇場)
*開講式、モデルアウトリーチ、グループディスカッション、手法開発ワークショップ、ランスルー、全体ミーティング、地域交流プログラム内容最終打合せ、交流会
【12月~1月】
◎地域交流プログラム
・アウトリーチプログラム(学校:各市町4クラス)
益田市:12月3日、1月15日/雲南市:12月3日、4日/津和野町:11月24日、1月12日、13日
・ホールプログラム(ワークショップ)
益田市:12月5日/雲南市:12月5日/津和野町:1月16日
◎総括的演奏会(ガラコンサート)(1月17日/いわみ芸術劇場)

●邦楽モデル事業に関する問い合わせ
総務部 布施
Tel. 03-5573-4143

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