越後妻有アートトリエンナーレ「大地の芸術祭」の成功を機に、各地で地域をテーマにした現代アート系のフェスティバルやプロジェクトが数多く企画されるようになりましたが、今年の夏はその大小の取り組みが同時多発的に各地で行われ、世界的に見ても例のない状況となっています。
まず、リーディングプロジェクトの大地の芸術祭ですが、第4回が7月26日に開幕します(→参照)。新潟県が財政的に主導した10年プロジェクトとしての事業が2006年に終了し、新たに設立したNPO法人越後妻有里山協働機構と、十日町市、津南町を中心とした新生フェスティバルとして継続。約200点の新作が加わり(過去の常設作品を含め計約350点)、06年から力を入れてきた「空家・廃校プロジェクト」をさらに大きく発展させるのが最大の話題です。旧真田小を絵本作家の田島征三と鉢集落の人々が「絵本と木の実の美術館」として再生するのをはじめ、京都精華大学・東京芸術大学など大学と連携した旧枯木又小・旧仙田小、アーティストの川俣正が情報センターとして企画する旧清水小、世界的なアーティストのクリスチャン・ボルタンスキーが心臓音を集める新プロジェクトに着手する旧東川小など、地域内に残された廃校がすべて継続的な地域交流拠点として甦ります。ふるさと減税の活用やツアー企画、デザイナー・コンペによる地元産品の商品開発など、財政的な自立化に向けた取り組みも活発で、今年もその動向からは目が離せません。
新たな取り組みとしては、越後妻有の新展開ともいえる新潟市での「水と土の芸術祭」があり、80人を超えるアーティストが参加します(→参照)。また、大阪市では中心部を流れる川の回廊を生かした水辺のまちづくりを推進していますが、そのシンボル・イベントとして「水都大阪2009」(→参照)が開催されます。川に囲まれた中之島を主会場に、アートやパフォーマンスを見たり体験する催しが多数行われるほか、水上音楽、水上テラス、アート船など水辺の空間を楽しむ仕掛けが盛りだくさん。また、約2,000人の小学生が作成した行灯や、アーティストによる灯り作品で中之島を飾る「灯りプログラム」が見所となっています。
このほか、市民の主体的な参加によるアートフェスティバルを支援してきた「アサヒ・アート・フェスティバル」にも地域をテーマにした取り組みが多数参加(→参照)。例えば、桐生~足尾銅山~日光を繋ぐわたらせ渓谷鉄道沿線をフィールドにした「ワタラセアートプロジェクト」(→参照)、鹿児島甑島列島で1カ月の滞在制作を行う「KOSHIKI ART EXHIBITION」(展示:8月22日~30日)、また日吉ダムによって沈んだ天あま若わか村の灯りを一晩だけ甦らせる「天若湖アートプロジェクト」(8月8日、9日)などです。2010年には瀬戸内海の島々をめぐる大規模な国際芸術祭も企画されており、アートによる希望の地域づくりの壮大な実験に期待が高まります。
開催地を飯田から広島に移した「アフィニス夏の音楽祭」、会期を夏だけでなく春、秋、冬の4回に増やした「ダンス白州」、今年はシアター・オリンピックス利賀も同時開催する「SCOTサマー・シーズン」など、老舗のフェスティバルも多数催されますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。